重賞ウィナーレポート

2013年07月23日 ノースクイーンC(GDJ)

2013年07月23日 門別競馬場 曇 良 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クラキンコ

プロフィール

生年月日
2007年04月11日 06歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:32戦12勝
総収得賞金
34,208,000円
クラキングオー
母 (母父)
クラシャトル  by  ワカオライデン
馬主
倉見 利弘
生産者
倉見牧場 (門別)
調教師
堂山 芳則
騎手
宮崎 光行
  • クラキンコの母クラシャトル(22歳)
    クラキンコの母クラシャトル(22歳)
  • 倉見牧場では現在、繁殖牝馬5頭と功労馬3頭が過ごす
    倉見牧場では現在、繁殖牝馬5頭と功労馬3頭が過ごす
  • クラシャトルはこれまでに12頭の仔を誕生させてきた
    クラシャトルはこれまでに12頭の仔を誕生させてきた
  • 倉見牧場の放牧地
    倉見牧場の放牧地
  • クラキンコは山間の放牧地でのびのびと育った
    クラキンコは山間の放牧地でのびのびと育った
  • 倉見牧場の看板
    倉見牧場の看板

 『グランダム・ジャパン2013』古馬シーズンの第3戦「ノースクイーンC(門別)」を、2010年の道営三冠馬クラキンコが制した。ショウリダバンザイ、シャイニングサヤカとの激しい叩き合いを制し、1年2か月ぶりとなる久しぶりの勝利をグランダム・ジャパンの舞台で飾った。

 クラキンコの生まれ故郷は、日高町の倉見牧場。父クラキングオー、母クラシャトル共に同牧場生産・所有の北海優駿(ダービー)馬で、クラキンコがダービー馬となった年には、世界的にも珍しい“父母仔ダービー制覇”として大きな話題となった。あれから3年が経った今でも、その偉大な功績は少しも色あせていない。その他にも倉見牧場からは、クラフィンライデン、クラダイギンガ、クラソラユケなど、ホッカイドウ競馬デビューから全国の競馬場へ羽ばたいて活躍を見せた生産・所有馬が多数誕生している。現在、牧場には繁殖牝馬5頭と功労馬3頭がいて、ご家族でその世話に当たっている。

 「6歳となりましたが、今季も強いレースを見せてくれました。堂山芳則厩舎の皆さんや、宮崎光行騎手のおかげだと思います。毎年重賞を勝つことは難しいことですし、本当によく頑張ってくれています」と愛馬やスタッフを讃えるのは、クラキンコの生産者でオーナーでもある倉見利弘さん。若い頃はホッカイドウ競馬の厩務員として働き、現在は先代・倉見眞實さんの後継者として牧場を発展させ続けている。

 「クラキンコが門別で走ったレースは、すべて現地で見ています。仕事の合間にも行ける距離なので…」と話す倉見さん。倉見牧場から門別競馬場までは車で10分ほどの位置にあり、生産馬が出走するレースはほとんど現地で応援しているという。今回も娘さんと共に、馬主・生産者の両表彰台へと上った。

 クラキンコの牧場時代は、「利口な父と馬格のある母の良い面を受け継ぎ、牝馬にしては骨太で馬力がありました。同世代の牝馬の中ではではボスでしたね」と倉見さんは振り返る。山間の広い放牧地で、ストレスなく健やかに育ったそうだ。

 クラキンコの母クラシャトルは、現役時代に15勝を挙げた活躍馬。北海道・南関東・東海地区の厩舎を転々とし、6歳までに59戦を戦い抜いた。「シャトルはとにかく気性の荒い馬で、2歳の時にパドックで立ち上がっていたのを覚えています。ホッカイドウ競馬の古い厩務員さんなら皆知っているほど、うるさい馬でした」と苦笑する。

 クラシャトルは1997年に現役を引退。生まれ故郷の倉見牧場へ戻り、繁殖牝馬となってこれまでに12頭の仔を出産している。クラキンコはその9番仔に当たり、現在は12番仔の1歳牝馬が元気に放牧地を走り回っている。「年齢(22歳)的なものか、シャトルは2011年と今年は不受胎でした。このあたりで繁殖を引退させることも考えています。フサイチコンコルド(1歳馬の父)は、ホッカイドウ競馬でも産駒が良績を残しているので楽しみにしています」と、クラシャトル最後の産駒となるかもしれない妹にも期待を寄せる。また、クラキンコの半姉に当たるクラビッグレディ(父ブラックタイアフェアー)が里帰りし、クラシャトルの優秀な血を後世へつなぐべく繁殖生活を始めているそうだ。

 その血統を見続けてきた倉見さんは、クラキンコの祖母(クラシャトルの母)についての思い出も話してくれた。「祖母のクラネバダンサーも気性の激しい馬で、現役時代は岩見沢でレコードタイムを出したスピード馬でした。25歳の時に視力を失ってしまったのですが、30歳まで元気に生きてくれました。よほど心臓の強い馬だったんですね。キンコの血統は、生命力、精神力に長けているのだと思います」と、クラキンコがゴール前で見せる類稀な勝負強さを、その祖母から伝わる血統に見い出す。

 一方の父クラキングオーは、2002年の道営記念を制するなど重賞5勝を含む12勝を挙げ、ホッカイドウ競馬を代表する1頭として活躍していたが、6歳時のレース中に故障を発症。右前脚の靭帯全断裂という重症で、獣医師からは予後不良の決断を迫られたそうだ。「クラキングオーは、予後不良の危機を乗り越えて種牡馬になってくれました。クラシャトルとの種付けの時は、近所の方に手伝ってもらって、脚元を工夫しながら種付けしたんです」と当時を振り返る。残念ながらクラキングオーは2010年に死亡してしまったが、5年間の種牡馬生活で3頭の産駒を残すことができた。そのうちの2頭がクラシャトルとの交配から生まれた産駒(クラキンコ、クラグオー)で、共にホッカイドウ競馬を牽引する馬として活躍している。その事実は、まさにオーナーブリーダーの強い思いが成就した“奇跡”と言っても過言ではない。

 クラキンコは次走、『グランダム・ジャパン』古馬シーズンの第5戦「ビューチフル・ドリーマーC(水沢)」に出馬登録がある。「グランダム・ジャパンシリーズは、各地のオープン馬が対戦するのでレースが盛り上がりますね。先代は“ファンあっての競馬”とよく話していました。シリーズの更なる活性化を願っています」と倉見さん。これまでに遠征した名古屋や園田のダートグレード競走では結果がついてこなかったが、牝馬同士の地方交流戦ならば話は別。東北のファンの皆さまにも、倉見牧場が起こした奇跡の結晶、そしてホッカイドウ競馬が誇る三冠馬の走りを堪能してもらいたい。