重賞ウィナーレポート

2013年03月31日 ダービー卿ChT G3

2013年03月31日 中山競馬場 曇 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:トウケイヘイロー

プロフィール

生年月日
2009年04月22日 04歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:13戦5勝
総収得賞金
267,589,000円
ゴールドヘイロー
母 (母父)
ダンスクィーン  by  ミルジヨージ(USA)
馬主
木村 信彦
生産者
中村 和夫 (浦河)
調教師
清水 久詞
騎手
松岡 正海

 昔、中村和夫さんに聞いたことがある。
 「種牡馬は、成功を待つものではなくて、成功させるもの」だと。

 アラブの名馬タガミホマレを現役時代にトレードで入手。種牡馬とすると、まだ年間40~50頭の種付けが当たり前だった1970年代に多頭数種付けを実践し、1973年には年間270頭という記録を打ち立てた。これは、今も残る軽種馬の年間最多種付頭数だ。ちなみに同馬の生涯種付頭数は2909頭。これもまた国内における軽種馬の最多種付記録だ。

 そしてミルジョージ。こちらは、量ではなくて質で勝負した。一般に言われているノーザンテーストの11年連続チャンピオンサイアーというのはJRAのみの集計によるもので、全国地方競馬の賞金を加算した全日本サイアーランキングではノーザンテースト全盛の1989年に、ロジータ、そしてイナリワンらの活躍でトップに君臨している。                              

 ダービー卿チャレンジトロフィー(G3)に優勝したトウケイヘイローは中村和夫さんの生産馬。父ゴールドヘイロー、母の父ミルジョージともに中村さんが手塩にかけた馬だ。トウケイヘイローの祖母にあたるハイネスポートを大手牧場から購入すると、積極的にミルジョージを配合。そうして生まれたのが母ダンスクィーンだった。この馬は、南関東で7戦1勝という成績だったが、繁殖牝馬として牧場に戻し、自身が所有する種牡馬を配合し続けた。思うように産駒をとれない時期もあったが、7番仔トウケイヘイローが大きな仕事をやってのけた。

 「やっと念願が叶いました」と声を弾ませたのは、現在、病気療養中の中村和夫さんの次女、時子さんだった。「ゴールドヘイローは、父(和夫さん)が絶対に種牡馬として成功すると、信じてやまなかった馬です。こうして結果を出して嬉しいです」と喜んでいる。

 この年、ゴールドヘイローの仔は60頭が血統登録されているが、うち約半数の26頭が中村さんの生産馬だった。

 「この年は外国種牡馬の仔なんかもいたものですから、どうしても目がそちらへいってしまって。正直言えば、さほど目立つ馬ではありませんでした。ただ、育成牧場に移動してからは、どんどん良くなっていくのが手に取るようにわかりました」。

 自信をもってトレーニングセールに上場したものの、値段が折り合わずに主取に。その後に懇意にしていた調教師の紹介で現在の馬主さんとの出会いがあり、トレーニングセールからわずか2か月半後にJRAで初勝利を記録する。くるみ賞をレコード勝ちし、4戦2勝で挑んだ朝日杯フューチュリティステークス(G1)はかかり気味に先頭に躍り出ようという瞬間もあったが4着。その後は堅実に走るものの勝ちきれないレースを続けていたが、骨折により休養。条件級からの再出発で重賞ウイナーの仲間入りを果たした。「大事に使ってくださっている馬主さんはじめ、調教師の先生や厩舎の方々など、この馬とこの馬に携わっているすべての方にありがとうの気持ちを伝えたい気持ちです。父も今回の勝利を我がことのように喜んでいます」と喜んでいる。

 「夢は、見るものじゃなくて叶えるものだよ」。中村和夫さんのそんな声が聞こえたような気がする。