重賞ウィナーレポート

2020年11月03日 JBCスプリント(中央交流) Jpn1

2020年11月03日 大井競馬場 曇 稍重 ダ 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サブノジュニア

プロフィール

生年月日
2014年03月15日 06歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:36戦12勝
総収得賞金
175,620,000円
サウスヴィグラス(USA)
母 (母父)
サブノイナズマ  by  カコイーシーズ(USA)
馬主
中川 三郎
生産者
藤沢牧場 (静内)
調教師
堀 千亜樹
騎手
矢野 貴之
  • 牧場の皆さん
    牧場の皆さん
  • サブノジュニアの半妹当歳
    サブノジュニアの半妹当歳
  • 育成拠点は海に近く、夏も涼しい
    育成拠点は海に近く、夏も涼しい
  • 牧場からの優勝記念品のチョコレート
    牧場からの優勝記念品のチョコレート
  • 牧場からの優勝記念品のワイン
    牧場からの優勝記念品のワイン

 国内ダート短距離戦線の最高峰、JBCスプリント(Jpn1)はサブノジュニアが快勝。中央・地方の一流馬たちを破り、頂点に立った。

 本馬の生産は新ひだか町の藤沢牧場。藤沢家の祖先は稲田家旧家臣(淡路島徳島藩の人たち)の一団からの移住で、資料によれば、大正14年には小売業(藤沢商店)を営んでいたり、東静内で旅館を営んでいたりという記録がある。牧場は昭和13年から創業し、過去にはヴァンクルタテヤマやグランリーオなど重賞勝ち馬を生産。今年はメイショウアイアンで北海道スプリントC(Jpn3)を制し、この馬もJBCスプリント(Jpn1)に出走していた。

 レースを振り返ったのは同牧場の藤沢亮輔さん。主催者から招待があり、現地で観戦していたという。

 「嬉しいのひと言ですね。前走の東京盃(Jpn2)で負けていましたが、着差はそれほどなかったので、Jpn1のここでもチャンスがあると思っていました。陣営も自信を持って送り込んでいましたね。4コーナーで前があいた時に勝利を意識しました。ゴールしたあとは自然と涙が出ましたね。オーナーとは長いお付き合いで、前々から“藤沢牧場の馬で大きいところを獲るんだ”という言葉をいただいていて、お互いの執念が実りました。馬に“ありがとう”と伝えたいです」(藤沢さん)

 藤沢さんへの祝福メッセージは、LINEやSNSなどレース翌日までずっと続いたという。同牧場はニコニコ動画の企画「リアルダービースタリオン」の協力牧場でもあり、藤沢さんは視聴者から“馬超”として有名。レース後に行われた生産者インタビューで流暢に答える姿に、拍手を送っていた人は多かったに違いない。

 北海道の牧場にはお花やお酒が届けられ、事務所を埋め尽くした。花に添えてある札を見れば、馬産地各地の牧場名が並んだ。

 「ディーマジェスティが皐月賞(G1)を勝った時に、同じ静内にある服部牧場の服部健太郎さんから、“こういうのは順番だから”と言葉をかけてもらったことを思い出しました。順番来るかなぁと思いながら、日々仕事に励んできましたが、実現できて嬉しいです」(藤沢さん)

 さらに、藤沢さんと親しい生産者の一人、浦河町の伏木田牧場の伏木田修さんのお話も紹介してみたい。藤沢さんはレース当日の午前中、伏木田さんから電話を受けた。

 「羽田空港に着いたら“いまどこにいるの?”と電話をいただきまして。“調教も良いし、サブノジュニアが勝つと思うから、競馬場に行けるならすぐに行ったほうがいいぞ”と。メイショウアイアンが北海道スプリントC(Jpn3)を勝ったときも、上位人気ではなかったのですが、伏木田さんから同じように電話があったんです。だから、サブノジュニアも勝つかもしれないなと思いながら、大井競馬場に向かいました」(藤沢さん)

 本馬は2014年の3月生まれ。牧場時代の本馬については、「体は大きかったですね。顔は母似で、父の産駒らしい独特な緩さがありました。特別目立った印象はなくて、もしクラスの同級生だったとしたら、この活躍ぶりは“まさかあいつが!”という感じ…かもですね」(藤沢さん)

 当時、人手が少ないときは、藤沢さんと母・雅子さんで、集牧などをしていたという。一度、牧柵を突き破って脱走したことがあったというが、大事には至らなかった。本馬は同牧場と同牧場・育成拠点エバグリーンセールスコンサインメントで1歳秋まで過ごし、その後は浦河町のカナイシスタッドで後期育成となった。

 現在、藤沢牧場には繁殖牝馬が約18頭いる。その中の一頭が本馬の母サブノイナズマ。来年16歳となる。

 「とても落ち着いている馬ですね。産駒はサブノジュニアのように晩成型が多いです。来春に向けてはパイロの子を受胎しています。2番子サブノハッピーが後継牝馬として帰ってきているので、孫世代も誕生しています。この母系は約30年前に父が導入しまして、代々重ねてきた結果、今回の勝利につながりました」(藤沢さん)

 本馬の兄弟には父ロージズインメイの半弟1歳、父ロージズインメイの半妹当歳がいる。サブノイナズマの配合はすべて、中川三郎オーナーが決めているという。

 「1歳の子はサブノジュニアと違ったタイプですね。ともに順調に育っています。当歳の子も大きく育ちそうですね。格好良い馬ですよ」(藤沢さん)

 チャンピオンホースが現れた一族となり、これからデビューする半弟、半妹の走りにも注目したい。

 本馬の次走予定はカペラステークス(G3)。地方屈指の実績馬によるJRA初参戦に注目が集まる。

 「大井でデビューして、大井の生え抜きでJpn1を勝つことができました。ほとんどのレースを大井で走ってきましたが、今は充実期だと思いますし、遠征でも好勝負して欲しいです」(藤沢さん)

 一方、近年の馬産地では、ダート短距離~マイルで実績のある馬は、種牡馬としてニーズが高い。JBCスプリント(Jpn1)の勝利で、本馬の種牡馬像を描いている生産者、馬主は増えているのではないだろうか。

 「ダートで一時代を築いたサウスヴィグラス産駒でもありますからね。JBCスプリント(Jpn1)を勝つことができ、先々は種牡馬になって欲しいし、その期待も大きいです」(藤沢さん)