2020年03月25日 桜花賞(GDJ)
優勝馬:アクアリーブル
プロフィール
- 生年月日
- 2017年03月13日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:14戦3勝
- 総収得賞金
- 76,315,000円
- 馬主
- (有) 新生ファーム
- 生産者
- 新生ファーム (門別)
- 調教師
- 佐藤 賢二
- 騎手
- 山本 聡哉
『グランダム・ジャパン2020』3歳シーズンの開幕戦「桜花賞(浦和)」は、圧倒的1番人気のレイチェルウーズ(船橋)を退けて3番人気アクアリーブル(船橋)が優勝。同馬は第6戦の「東京プリンセス賞(大井)」も制し、南関東牝馬二冠を達成。そして最終戦の「関東オークス(Jpn2)」で中央馬相手に2着と健闘し、第11代目のグランダム・ジャパン3歳女王に輝いた。
アクアリーブルの生まれ故郷は、日高町の新生ファーム。生産から育成までを一貫して行う総合牧場で、アクアリーブルのように自ら所有するオーナーブリーディングホースも多数いる。せりで販売した馬の中には、2018年の京成杯(G3)とセントライト記念(G2)を制し、皐月賞(G1)でも3着するなどクラシック戦線を沸かせたジェネラーレウーノなどがいて、近年は中央・地方問わず多くの活躍馬を送り出している。
「桜花賞のレース前はレイチェルウーズが圧倒的に強いと思われていましたからね。自分の競馬をして力を出し切ってほしいとだけ願っていました。二冠目の東京プリンセス賞は、距離延長はプラスに働くと思っていたものの、これまでに右回りコースで結果が出ていなかったので、その点が心配でした。ただ、佐藤(賢二)先生は相当自信を持って臨んだようです」と、同牧場の2代目社長・木村敬生さんは南関東牝馬二冠に臨んだ当時の心境を話してくれた。
その二冠目達成の快挙からわずか3日後の5月1日、佐藤賢二調教師が亡くなったという訃報が入る。「アクアリーブルをここまで育ててくださった佐藤(賢二)先生には、感謝してもしきれません。コロナの影響で桜花賞も東京プリンセス賞も現地へ行くことができず、先生と並んで口取り写真を撮れなかったのが、今となっては悔しくて仕方がないです。佐藤先生のためにも、引き継いでくれた米谷先生のためにも、三冠目の関東オークス(Jpn2)は頑張ってほしかった。2着に敗れはしましたが、中央の強い馬相手によく頑張ってくれたと思います」と愛馬の奮闘を褒め称えた。
アクアリーブルは、南関東牝馬二冠(東京プリンセス賞、関東オークス(Jpn2))を含む重賞7勝を挙げたアスカリーブルが母となって初めて生んだ仔である。同年にアスカリーブルは死亡してしまったため、アクアリーブルはその血を受け継ぐ唯一の産駒となってしまった。「アスカリーブルは先代社長である父が惚れ込み、引退後に繁殖牝馬として牧場に迎え入れました。その初年度にパイロを配合していることからしても、父は相当期待していたのだと思います」と話す。その年の暮れ、アクアリーブルの成長を誰よりも楽しみにしていた父・己生さんが交通事故で突然の他界。急きょ後を継いで2代目社長となった敬生さんは、「このアクアリーブルの活躍を父に見てほしかった。そして歓びを分かち合いたかったです」と残念がる。
その先代社長と苦楽を共にし、アクアリーブルの成長をつぶさに見てきたのが繁殖責任者の平野稔史さん。「生まれて間もない頃のアクアリーブルは気が強くてうるさい面もありましたが、頭の良い馬なので学習したことをどんどん取り入れながら成長していきました。馬を見に来た角川先生(ホッカイドウ競馬調教師)が『これは大物かもしれないぞ』と感心するほど、幼少期から雰囲気を持っている馬でした」と、アクアリーブルが牧場で過ごした時期を昨日のことのように振り返る。
「ここまでずっと使い詰めできたので、夏場は放牧に出して休ませたいと思っています。そしてこれからも無事に競走生活を送り、将来は牧場に戻ってその優秀な血をつないでいってほしいと願っています」と口を揃える木村さんと平野さん。アクアリーブルの祖母の名は、ステキナデアイという。新生ファームの先代社長に生命を吹き込まれ、導かれるように佐藤賢二調教師の元へ渡り、母アスカリーブルを応援していたファンに夢のような時間を運んできてくれたアクアリーブル。いろんな人との素敵な出会いが、彼女の身体には宿っている。