重賞ウィナーレポート

2018年04月15日 皐月賞 G1

2018年04月15日 中山競馬場 曇 稍重 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:エポカドーロ

プロフィール

生年月日
2015年02月15日 03歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
276,364,000円
馬主
(株) ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン
生産者
田上 徹 (三石)
調教師
藤原 英昭
騎手
戸崎 圭太
  • レース翌日に行われた祝勝会
    レース翌日に行われた祝勝会
  • チカノヴァを購入した沖田哲夫さん、田上稔さん、久井秀人さん
    チカノヴァを購入した沖田哲夫さん、田上稔さん、久井秀人さん
  • 母ダイワパッションの当歳、セレクトセールに上場する
    母ダイワパッションの当歳、セレクトセールに上場する
  • 母ダイワパッションの1歳、ユニオンオーナーズクラブで募集予定
    母ダイワパッションの1歳、ユニオンオーナーズクラブで募集予定

 牡馬クラシック第一冠、皐月賞(G1)はエポカドーロが快勝。その名の由来「黄金時代」にふさわしく、まるで光の射すような走りで突き抜けた。

 本馬の生産は、新ひだか町三石の田上徹牧場。昭和23年創業の家族経営の牧場で、本桐神社の向かいに位置する。過去には朝日杯フューチュリティS(G1)の覇者マイネルレコルトをはじめ、重賞4勝をあげたジョウテンブレーヴ、桜花賞2着のミホクイーンなどを生産している。代表の田上徹さんは3代目で、現在、繁殖牝馬は8頭。

 田上徹さんはレース当日、現地・中山競馬場に駆けつけ、声援を送っていた。「馬体重は前走と同じでしたが、今回は体つきが変わり、藤原英昭厩舎の仕上げの巧みさを感じました。最高の結果となり、本当に嬉しかったです」と、笑みを広げた。前日まで馬の出産で睡眠時間が少なく、スーツに身を包んだ体は疲労でいっぱいだったという。しかし、待っていたのは、その疲れを吹き飛ばすかのような栄冠だった。

 徹さん夫人は、初めてJRA競馬場で応援が叶い、夫と子供と栄えある口取りに入ることができた。表彰台に立つ夫の姿を見て、誰よりも胸を熱くした。「パドックでは、すぐそばで藤原調教師や戸崎騎手がお話をされていましたし、競馬場内は大歓声でしたし…緊張しましたね。レースの時は、夢を見ているようでした」

 レース翌日、三石で行われた祝勝会では、出産・種付けの繁忙期ながら、大勢の地元生産者が集まり、エポカドーロの勝利を祝った。宴の冒頭では、三石軽種馬生産振興会の斉藤雅宣会長が、「今年の牝馬クラシックのように、大手の牧場の生産馬が出走馬を占める状況があって、小さな牧場は出走するのも大変だし、この先もう勝てないのではないかと不安が募りました。そうした中でエポカドーロが勝ってくれた。小さい牧場にとっては、自信を取り戻すようなレースでした」と、挨拶。地元から生まれたクラシックホース誕生に、会場は奮い立つように沸いた。

 同馬は、父オルフェーヴル、母ダイワパッション、母の父フォーティナイナーという血統。母系と牧場との縁は、3代母チカノヴァとの出会いにさかのぼる。

 1989年12月、イギリス、ニューマーケットのセールに牧場の前代表・田上稔さんが出かけ、チカノヴァを購入した。稔さんは、「牧場の基礎牝馬を求めて、当時、ノーザンダンサーやカーリアンの牝馬を狙っていました。ただ、海外から馬を導入するとなれば、相当な費用がかかりますから、小さな牧場だけでは難しかった。そこで、三石にいる友人の沖田哲夫さん、久井秀人さんと話し合いました。夜な夜な、居酒屋に集まって話し合って、3人で海外のセールに行くことにし、繁殖牝馬を共同購入しました」と、その経緯に触れてくれた。G1制覇のストーリーは、彼らの思い切った買い物が始まりだった。

 話は少し脱線するが、当時、ノーザンダンサー直子を求めるホースマンは多く、田上稔さんたちも、上場される馬をよくチェックしていた。帰国後、ノーザンダンサーの直子を早田牧場が購入していたことがわかった。「それが、のちのパシフィカスでした。チカノヴァと同じセールだったとはね(笑)」

 ビワハヤヒデ、ナリタブライアンを送り出す名牝とすれ違っていたことは、田上さんを驚かせた。悔しむことなかれ、田上さんには別の優駿の糸をつかむことになるのだが、その時はまだ知らない。

 チカノヴァの子は、共同購入した3人でシンジケートのような形態で所有し、それぞれ子をとることになった。田上さんの番で生まれたのが本馬の2代母サンルージュ。 「サンルージュの名前の“サン”は、“太陽”という意味と、“3”人でチカノヴァを購入したという意味を込めてついた名前なんです」(田上稔さん)というエピソードからは、3人で購入したチカノヴァにかける情熱を垣間見る。

 サンルージュはダイワパッションを生み、ダイワパッションはフィリーズレビュー(G2)、フェアリーS(G3)を優勝。繁殖牝馬として帰ってきて、エポカドーロ誕生へとつながる。

 時を経て、牧場の代表が田上徹さんに移った。馬の配合には、初年度の種牡馬を狙うのが、徹さんが考える戦略の一つだった。結果として、いきなり2頭のG1馬を送り出したオルフェーヴルにも、初年度から勝負をかけた。牧場時代のエポカドーロについては、「2月の早生まれでもあり、最初は小さくて薄い馬でした。セレクトセールの時は、馬に余力がありすぎて、うるさい面を見せてしまい、“うるさい馬”というイメージを与えたかもしれませんが、牧場ではすごく大人しい馬でした」(徹さん)

 セレクトセール上場となり、3,672万円でユニオンオーナーズCが落札した。1歳3月まで同牧場で過ごし、その後は辻牧場で中期育成、吉澤ステーブルで後期育成となった。BTCの調教施設利用馬によるクラシック制覇となり、BTCにも明るい話題を届けた。

 ダイワパッションは健在で、2歳には父ロードカナロアの牝馬、1歳には父キズナの牝馬(ユニオンオーナーズC募集予定)、当歳には父ドゥラメンテの牡馬が誕生している。父ドゥラメンテの牡馬は、セレクトセール上場馬に決まり、セールの目玉となるだろう。

 「エポカドーロの妹、弟も楽しみな馬ですよ。今年の当歳は、皐月賞(G1)の前日に生まれたので、今回のレースでも当歳のことが頭にありました。出来には手応えを感じているので、期待しています」(徹さん)

 間近に迫ったダービー(G1)。選ばれし18頭の中で唯一、二冠のチャンスを持っての出走だ。

 「ダービー(G1)は距離が延びますから、そのあたりがカギとなるかもしれません。オルフェーヴル譲りの闘争心、ダイワパッションの子らしい成長力を発揮して欲しいです。無事に走ってきて欲しいと思います」