2018年02月11日 共同通信杯 G3
優勝馬:オウケンムーン
プロフィール
- 生年月日
- 2015年03月14日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:4戦3勝
- 総収得賞金
- 73,931,000円
- 馬主
- 福井 明
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 国枝 栄
- 騎手
- 北村 宏司
ノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長が、20歳の頃に初めて跨がったG1ホース。その馬は後に菊花賞(Jpn1)を勝ち、そして、今年の共同通信杯(G3)を制したオウケンムーンの父となる、オウケンブルースリだった。
「オウケンブルースリは体質が弱く、乗り始めてからしばらくは軽いメニューの運動しかできませんでした。それだけにどんどん良化していく姿や、デビューしてからの活躍など、本当に印象に残っています」
「オウケンブルースリがいたから、馬の世界にどんどんのめり込めました。」とも佐々木厩舎長は話す。3歳の4月にデビューを果たしたオウケンブルースリは、その184日後に行われた菊花賞(Jpn1)を優勝。これはデビューから菊花賞(Jpn1)制覇の最短記録ともなったが、同時に佐々木木厩舎長が所属していたR厩舎でも、育成馬では初めてのG1馬となった。
オウケンブルースリは現役引退後に、浦河・イーストスタッドで種牡馬入り。繋養初年度に23頭、オウケンムーンが産まれる前年には、母のムーンフェイズを含めて12頭の繁殖牝馬に配合を行っているが、年々種付け頭数を減らしていき、昨年は1頭しか配合が行われなかった。
「ノーザンファームから1頭だけ、オウケンブルースリを配合しにいったということは知っていました。繁殖スタッフから受胎したと聞いた時は嬉しかったですし、もし、牡馬が産まれたら自分の厩舎で育成させてもらえるとも決まっていたので、出産の日が待ち遠しかったです」
その佐々木厩舎長の願いが届いたかのように、ムーンフェイズは牡馬を出産。順調に成長を遂げ、1歳の夏にR厩舎へとやってくる。
「来るのを待ち焦がれていました。馬体の印象としては父よりもコンパクトではありましたが、バランスが良く、頭が高いながらも力強い走りは父を彷彿とさせました」
佐々木厩舎長は、育成馬にどのスタッフを騎乗させるかを決める際も、オウケンムーンの調教に関しては自らが率先して跨がった。
「乗り難しいところもありましたし、調教でも上手く乗れないこともありました。国枝先生もレースの後におっしゃっていましたが、こちらでも調教の動きは地味であり、それだけに競馬であれだけガラリと変わる馬は珍しいと思った程です」
2歳の8月にメイクデビュー新潟でデビューを果たしたオウケンムーンは、その一か月後に行われた2歳未勝利戦で初勝利をあげる。それはこの世代のR厩舎の育成馬では最初の勝ち上がりでもあり、そのことも含めて、佐々木厩舎長は安堵感を覚えた。
「乗り込み量も十分で、レースに使いながら良化していけばと思っていましたが、デビュー戦の内容を見て、1つは勝てるとの確信はありました。それだけに初勝利の強い内容だけでなく、2戦目も勝ってくれた時には驚きもありました」
6番人気での出走となった共同通信杯(G3)。コスモイグナーツが逃げて縦長となったレースを、オウケンムーンは折り合いもスムーズに最内で待機していく。最後の直線で先行馬を交わすように外側へ進路を向けると、そこから前との差を一歩ずつ詰めていき、残り100mで先頭に踊り出る。
「直線では久しぶりに叫びました。ゴールの瞬間はこの上なく嬉しかったですね。力が無いとあのレースはできないと思いますし、本当に強い姿を見せてくれました」
それでもレース後、国枝調教師からは「まだ迫力不足」との言葉も聞かれたように、上積みも十分に残しているオウケンムーン。それは育成時に佐々木厩舎長が感じた成長力とも一緒の感想であり、レース後には皐月賞(G1)へ直行するプランも決定した。
「今回は身体も減っていましたし、間隔を空けて馬体も成長させていけば、まだまだ良くなると思います。皐月賞(G1)、そして賞金面での出走も確定させた日本ダービー(G1)での走りも楽しみですが、距離の不安もありませんし、個人的には菊花賞(G1)で父との親子制覇を果たしてもらいたいです」
それが叶ったのなら、まさにドラマティックと言えそうだが、その前にオウケンムーンは、父が出走すら果たせなかった皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)でも、中央に7頭しかいない産駒のクラシック制覇という「ドラマ」を見せてくれるのかも知れない。