重賞ウィナーレポート

2017年11月03日 JBCスプリント(中央交流) Jpn1

2017年11月03日 大井競馬場 晴 重 ダ 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ニシケンモノノフ

プロフィール

生年月日
2011年03月11日 06歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:37戦12勝
総収得賞金
324,184,000円
メイショウボーラー
母 (母父)
グリーンヒルコマチ  by  アフリート(CAN)
馬主
西森 鶴
生産者
八木 常郎 (新冠)
調教師
庄野 靖志
騎手
横山 典弘
  • レース後、万歳で喜ぶ牧場の皆さん
    レース後、万歳で喜ぶ牧場の皆さん
  • ニシケンモノノフが育った八木常郎牧場
    ニシケンモノノフが育った八木常郎牧場
  • 新冠町内に掲げられた優勝垂れ幕
    新冠町内に掲げられた優勝垂れ幕
  • 門別競馬場で2勝目の口取り写真、ここでも大勢の関係者が応援していた
    門別競馬場で2勝目の口取り写真、ここでも大勢の関係者が応援していた
  • 門別デビュー馬からのJpn1馬誕生となった
    門別デビュー馬からのJpn1馬誕生となった

 大井競馬場で行われたJBCスプリント(Jpn1)はニシケンモノノフが快勝。ダート短距離界の実力馬がついに頂点の座についた。

 本馬の生産者は新冠町の八木常郎さん。昭和40年から牧場を始め、古くは帝王賞や東京大賞典の勝ち馬アズマキング、三冠馬ミスターシービーを破ってサンケイ大阪杯(G2)を制したステートジャガー、近年では武蔵野S(G3)で豪快な追い込みを決めたワイドバッハを生産している。

 レース当日は、常郎さんが自宅で応援し、息子・明広さんが大井競馬場へ向かった。明広さんは、「ちょうどJBCレディスクラシック(Jpn1)が始まる前に到着しました。朝、牧場の仕事をしてから出かけたので、結構ギリギリでしたね。今回もパドックの外目をグイグイ歩いていたので、状態の良さを感じました。レースは、得意としている逃げる競馬を予想していましたが、インの3、4番手となって、少しポジションが後ろかなと思って見ていました。加えて内側は砂が深そうだったので、そのあたりも心配でした。直線に向いてからは“差せー”と叫んでいましたね。上位に迫ったのはわかりましたが、見ていた場所の角度から、一瞬負けたかなと思いました。大型ビジョンで横山典弘騎手のアップが映ったので、そこで勝利を実感しました」と、振り返った。牧場初のJpn1の表彰台の心境は“喜びのあまり、ボーっとしたような気持ち”だったという。

 「本当に嬉しかったですね。この馬は1600mだと長いし、もしJpn1を勝てるとしたらJBCスプリント(Jpn1)だと思っていました。年に一度しかないチャンスをものにできたのですから、運もあります。表彰式で反対側からスタンドを眺めて、改めてお客さんが多いなぁと思いました。口取りの時に馬場を歩いて、砂が適度に湿っていたので、この馬に軽い馬場が向いたと思いました」

 北海道では常郎さんのもとへ近隣の生産者が集まり、万歳で勝利を祝った。明広さんが帰宅したのはその晩22時頃。牧場の玄関では、数えきれないほどのお祝いの花が明広さんを待っていた。スマートフォンにはお祝いのメッセージや着信が、充電が減るほどに届いていたという。

 本馬は父メイショウボーラー、母グリーンヒルコマチ、母の父アフリートという血統。母の7番子として八木さんの牧場で誕生した。生年月日は2011年3月11日。あの東日本大震災の日に生まれた馬でもあった。

「地震の起きる数時間前、午前中の出産でした。あわただしい一日だったことを覚えています。毛色は母馬に似ましたが、メイショウボーラーの長所を受け継ぎましたね。お世話になっている松浦牧場の松浦宏之さんのアドバイスも受けながら、当歳6月~11月と、1歳3月~秋まで夜間放牧を始め、その効果もあって頑丈に育ちました。馬体は大きくて、気性は強いものがありました。放牧地ではスピードのある走りでしたし、2、3勝はできるだろうと期待していました。西森鶴オーナーとは長いお付き合いで、この馬は1歳2月頃に庭先取引で決まりました。1歳秋に宝寄山育成牧場に移動し、馴致となったのですが、デビュー前の段階で“動くよ”という話を聞いていました」

 デビューはホッカイドウ競馬で、秋には園田競馬場に遠征し、兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)を制覇した。「ホッカイドウ競馬在籍時は、亡くなった原孝明調教師の管理馬でした。今回のレースのあとには、庄野靖志調教師の父・昭彦さんが、原調教師のお話もされていたのが印象的です。門別競馬場でもよく鍛えられて、今年は北海道スプリントカップ(Jpn3)も勝てましたし、縁があります。一つ一つの勝利が、JBCにつながっていますね」

 さらにもう一人、今回の勝利には欠かせない人物が元JRA調教師の白井寿昭さんだという。「ニシケンモノノフの母系は、その4代母、センゾクチカラに“この血統は走るから、残した方が良い”という白井先生の言葉から始まっています。サンシャインボーイ、アフリート、メイショウボーラーの配合も、白井先生のアドバイスがあっての選択です。今回の勝利は先生のおかげでもあり、深く感謝しています」と、明広さんは感謝の気持ちをこみ上げる。

 ついにJpn1タイトルを獲得し、ダート界で目標とされる立場となった本馬。2歳からの息長い活躍は、父メイショウボーラーの現役時代とも重なる。今後はチャンピオンとしての底力を、若馬たちに見せつけて欲しい。

 「レース後、何度もリプレイを見ましたが、コパノリッキーをはじめとして強いメンバーが揃っていましたから、勝利の重みを感じています。逃げ戦法以外で結果を出したことも大きいですね。今後もケガをしないように、無事に走ってきて欲しいと思います。まだ先の話になりますが、ダート系種牡馬は需要が高まっていますし、種牡馬としても血を残せたらと思います」