2017年06月01日 北海優駿(DS2017)
優勝馬:ベンテンコゾウ
プロフィール
- 生年月日
- 2014年05月06日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:8戦7勝
- 総収得賞金
- 92,830,000円
- 母 (母父)
- スタートウショウ by スキャターザゴールド(CAN)
- 馬主
- 大久保 和夫
- 生産者
- 土田 和男 (三石)
- 調教師
- 菅原 勲
- 騎手
- 村上 忍
今年のホッカイドウ競馬クラシック戦線では、“大革命”と呼べる現象が起きている。
6月1日に門別競馬場で行われた『ダービーシリーズ2017』の第2戦「北海優駿(ダービー)」を、岩手から遠征してきたベンテンコゾウが1番人気に応えて快勝。北斗盃につづく二冠を達成し、クラキンコ以来6年ぶりとなるホッカイドウ競馬三冠に王手をかけた。地方全国交流競走となったのが2010年からとはいえ、他地区の馬が北海道のダービー馬となるのは45回の歴史の中で初めてのこと。オーナーをはじめとする関係者のチャレンジ魂と、完全アウエーの中で力を出し切れるベンテンコゾウの強靭な精神力には最大限の賛辞を贈りたい。
ベンテンコゾウの生まれ故郷は、新ひだか町三石の土田和男牧場。この地で競走馬の生産を始めてから約60年の歴史があり、過去には1997年のNHKマイルカップ(G1)で3着したショウナンナンバーや、同年のクローバー賞(札幌)に優勝したシャインポイントなどの活躍馬を生産。現在は2代目となる土田和男さんとお兄さんの2人で、自己所有馬2頭と預託馬4頭、そしてその仔たちを管理している。
「サウスヴィグラス産駒なので、2000mに距離が延びたのを心配したのですが、まったく問題なかったですね。雨が降って脚抜きの良い馬場になったのも、ベンテンコゾウには向いたのだと思います」と土田さんはレースを振り返る。当日は悪天候のなか門別競馬場へ駆けつけ、愛馬がダービー馬となる瞬間を見届けたそうだ。
ベンテンコゾウは、母スタートウショウの4番仔として2014年5月6日に産声をあげた。祖母はJRAの重賞を5勝した名牝ヌエボトウショウで、その血統表にはトウショウボーイやトウショウゴッドの名前も並ぶトウショウ牧場ゆかりの血統だ。スタートウショウを土田さんの牧場で繋養するようになった経緯について伺うと、「実は私たちの弟が美浦で調教師をしており、JRA在籍時のスタートウショウを管理していたんです。その縁もあって、現役引退後に繁殖牝馬として迎え入れることができました。まだ5歳と若かったですし、これだけの血統馬を導入できたのは本当にラッキーでしたね」と話す。
スタートウショウにサウスヴィグラスを交配した理由については、「2009年の船橋記念に勝ち、交流重賞の北海道スプリントカップ(Jpn3)でも3着したスパロービートという生産馬がいるのですが、その父もサウスヴィグラスでした。産駒がダートで安定した成績を収めていることもありますが、うちの牧場と相性が良いのが1番の決め手ですかね」と笑顔をみせる。
「ベンテンコゾウは従順で、手のかからない馬でした。同じサウスヴィグラス産駒の兄姉は少し臆病なところもあったのですが、ベンテンコゾウは幼少期から肝が据わっていましたね。そして、とても柔軟な身体をしいました。離乳した当初に馬房のません棒を下からくぐり抜けて、母馬の馬房へ忍び込んだこともあったんですよ(笑)」と、微笑ましいエピソードを教えてくれた。
現在、牧場にはベンテンコゾウの半妹にあたる1歳馬(父スマートファルコン)が健やかに育っている。「牝馬としては馬体も大きい方で、良い動きをしています。父は変わりましたが、兄に負けない活躍馬に成長してほしいですね」と妹の未来にも期待を膨らませる。
「まずは無事に7月27日の王冠賞へ駒を進め、ホッカイドウ競馬の三冠を達成してほしいですね。そして岩手へ凱旋し、秋のダービーグランプリで他地区の3歳馬たちと力比べする日を楽しみにしています。将来的には、ベンテンコゾウが交流重賞や中央のレースで走る姿も見てみたいです」と夢を語る土田さん。
七福神の一員として語り継がれる弁天様を連想させる馬名のベンテンコゾウが、今後いくつの福を生産者のもとに運んできてくれるか注目しよう。