重賞ウィナーレポート

2016年06月08日 東京ダービー(DW2016)(中央騎手騎乗)

2016年06月08日 大井競馬場 晴 良 ダ 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:バルダッサーレ

プロフィール

生年月日
2013年04月21日 03歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:14戦3勝
総収得賞金
110,355,000円
アンライバルド
母 (母父)
メイルリヒト  by  フジキセキ
馬主
伊達 敏明
生産者
サンシャイン牧場 (門別)
調教師
中道 啓二
騎手
吉原 寛人
  • バルダッサーレが生まれ育ったサンシャイン牧場
    バルダッサーレが生まれ育ったサンシャイン牧場
  • バルダッサーレの叔母にあたるカレンダーガール(15歳)
    バルダッサーレの叔母にあたるカレンダーガール(15歳)
  • 今年生まれたカレンダーガールの当歳馬(牝、父フィガロ)
    今年生まれたカレンダーガールの当歳馬(牝、父フィガロ)
  • 海外での繁殖生活を終え、サンシャイン牧場で功労馬として過ごすプリモディーネ(20歳)
    海外での繁殖生活を終え、サンシャイン牧場で功労馬として過ごすプリモディーネ(20歳)
  • 東京ダービー馬プレティオラスの母ユーロペ
    東京ダービー馬プレティオラスの母ユーロペ
  • サンシャイン牧場の放牧地
    サンシャイン牧場の放牧地
  • サンシャイン牧場の繁殖厩舎
    サンシャイン牧場の繁殖厩舎
  • サンシャイン牧場の看板
    サンシャイン牧場の看板

 南関東の3歳ナンバーワンホースを決める「東京ダービー(大井)」は、ここがJRAからの移籍初戦となったバルダッサーレが7馬身差の圧勝。スタート直後は後方2番手という位置取りだったが、向う正面で徐々にポジションを上げ、3~4コーナーでは押さえられないような手応えで先頭に並びかける。その勢いのまま直線に入ると、後続勢を見る見る間に引き離し、内から追い込んだプレイザゲーム、1番人気馬タービランスらをまったく寄せ付けない内容で、堂々とダービー馬の勲章を手中にした。 

 バルダッサーレの生まれ故郷は、日高町旭町のサンシャイン牧場。日高でも有数のオーナーブリーダーで、1999年の桜花賞馬プリモディーネを筆頭に、長年にわたって数々の活躍馬を送り出してきた名門牧場だ。この東京ダービーも、2007年にアンパサンド(父フィガロ)がフリオーソらを押さえて優勝。また2012年には、共にフィガロ産駒の生産所有馬であるプレティオラスとプーラヴィーダがワンツーを決め、大きな話題となったのも記憶に新しい。バルダッサーレのオーナー・伊達敏明さんと生産者・伊達泰明さんは、愛馬がダービー馬となる瞬間を現地で見届けた。

 「驚くほどの圧勝でしたが、レース中は意外と冷静に見ていました。向う正面でペースが落ち着いた時に少し掛かっているように見えたのですが、そこで吉原騎手がうまく馬群を捌き、馬の行く気に任せてポジションを上げられたのがよかったのでしょうね。この先が楽しみになる内容だったと思います」と勝因を冷静に分析する。

 バルダッサーレの母メイルリヒトは、先述したプーラヴィーダの母カレンダーガールの半妹にあたり、その血統を遡ると先代(故・伊達秀和氏)が海外から輸入したソーダストリームにたどり着く。「プリモディーネもソーダストリームが祖となっているのですが、この牝系からまた活躍馬を出せたことが何よりも嬉しいですね。アンパサンド、プレティオラス、バルダッサーレとそれぞれ違う系統で東京ダービーを制覇することができたことも、オーナーブリーダーとして誇りに思います」と血統背景について詳しく説明してくれた。

 アンライバルドを配合した理由について尋ねると、「サンデーサイレンス3×3や、スペシャル5×5のクロスについてよく聞かれるのですが、実は狙いはそこではなかったんです。配合に関しては経験から導き出した独自の理論がありまして、8代~9代まで遡ってピッタリくる種牡馬を選択するように心掛けているですが、種付料と相談しながらの配合となることもあり、なかなか思い通りにはいかないものですね」と血統の奥深さについて語る。バルダッサーレの1つ下にはマヤノトップガン産駒のレクラドリール(牝)がいて、ホッカイドウ競馬でまもなくデビューを迎える予定だそうだ。

 バルダッサーレが牧場で過ごした時期について語ってくれたのは、同牧場の場長・堀田卓也さん。「とにかく気の強い馬で、同期の中では常に番長でした。1歳の10月から3ヶ月間、日曜日以外は門別競馬場の坂路へ毎日通い、ビッシリと脚腰と心肺機能を鍛えました。坂路でのタイムも良かったので、期待はしていました」と育成期を振り返る。性格も走りも、同期の中では当時からひと際目立つ存在だったようだ。

 美浦の南田美知厩舎に入厩し、2歳6月にデビューしたバルダッサーレ。芝のレースでは結果が出なかったが、3歳3月に初めてダートを使われると、まさしく水を得た魚のように頭角を現し始めた。「当初はユニコーンS(G3)を目標にしていたのですが、賞金的に出走できるかどうか分からない状況だったので、東京ダービーをめざすことにしました。まだ重賞勝ちのなかった中道啓二厩舎(大井)へ移籍したのですが、レースまでの1ヶ月間、プレッシャーのかかる中でよく仕上げてくれたと思います」と、伊達さんは若き調教師に労いの言葉をかける。

 「先代からつないできた血統もそうですが、この馬に関わってきたうちのスタッフ、厩舎スタッフの皆さん、騎手の皆さんなど、どれかひとつ欠けてもダービーのような大きなレースは勝てません。人に恵まれたことも含め、東京ダービーへ駒を進めることができたバルダッサーレの運の強さも感じています」と話す伊達さん。

 「ジャパンダートダービー(Jpn1)は、当初目標にしていたユニコーンS(G3)の上位組も出てきそうなので、バルダッサーレがそれらの相手とどれぐらいの競馬ができるのか、非常に興味深いです。また吉原騎手も、ハッピースプリントでハナ差負けした悔しい思いが残っているので、期するところがあるでしょう。人馬ともに頑張ってもらいたいです」と大一番に向けてエールを送る。サンシャイン牧場にとってもアンパサンドが2着、プレティオラスが6着と涙を呑んできたジャパンダートダービー(Jpn1)。3度目の正直に女神が微笑む瞬間を見られるか、その決戦の舞台が待ち遠しい。