重賞ウィナーレポート

2016年06月12日 マーメイドS G3

2016年06月12日 阪神競馬場 雨 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:リラヴァティ

プロフィール

生年月日
2011年03月05日 05歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:22戦5勝
総収得賞金
141,794,000円
ゼンノロブロイ
母 (母父)
シンハリーズ(GB)  by  Singspiel(IRE)
馬主
(有) キャロットファーム
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
石坂 正
騎手
松若 風馬

 これでG1馬1頭を含む、3頭の重賞勝ち馬を輩出。現役時に米G1デルマーオークス(G1)勝ちなど優秀な競走成績を収めていることも含め、シンハリーズは名牝と呼ぶに相応しい牝馬と言えるだろう。 

 産駒を手がける育成スタッフにとっても、シンハリーズの産駒は常に高い評価を得ていた。勿論、それはオークス(G1)とチューリップ賞(G3)を制したシンハライト、ラジオNIKKEI杯2歳S(G3)を制したアダムスピークの活躍にも証明されている。リラヴァティの育成を手がけたノーザンファーム空港牧場の伊藤賢厩舎長にとっても、初めてその背中に跨った時から、能力の高さが伝わってきた。

 「やんちゃさこそありましたが、柔らかさ、バネの良さなど、これまで跨ってきた重賞馬たちと同等の能力が感じられました。リラヴァティの父はゼンノロブロイでしたが、ディープインパクト産駒なのでは?と思った程の乗り味の良さがありましたね」

 そのディープインパクト産駒が、レースの中で武器としているのが切れる末脚。伊藤厩舎長はリラヴァティもまた、芝のクラシック戦線において、直線だけで鮮やかに他馬を交わし去っていく競走馬になっていくと信じて疑わなかった。

 しかし、デビューしたリラヴァティは、伊藤厩舎長が想像した姿とは違っていた。デビューした新馬戦こそ、メンバー中最速の脚(3ハロン34秒2)を使ったものの、前を行く馬を捕らえられずにクビ差の2着。実はメンバー中最速の末脚を使ったのは、軽量騎手(49㎏)を配して望んだ3歳500万下と合わせて僅か2戦であり、ほとんどのレースが先行、時には果敢に先手を奪ったことさえあった。

 「この辺は血統なのかな、と素直に受け止めました(笑)。それでも厩舎の皆さんや騎乗してくれた騎手の皆さんがリラヴァティの良さを引き出してくれたからこそ、桜花賞(G1)、秋華賞(G1)とクラシック出走を果たすことができたと思います」

 チューリップ賞(G3)で3着に入り、権利を掴んで望んだ桜花賞(G1)では9着。ローズS(G2)でも3着に入り、秋華賞(G1)に出走すると8着。その秋華賞(G1)まで11戦2勝。その一方で2着1回、3着3回があるように、リラヴァティは安定した成績を残しながらも、勝ちきれないレースが続いていたのも事実であった。

 「それでも2歳時から毎年の様に勝利を重ねてくれたのは、これまで携わってくれた皆さんのおかげだと思います。またそれだけ丈夫にレースを続け、そしてゆっくりながらも成長を続けたリラヴァティも凄い馬だと思います」

 その言葉通りに4歳時には1000万下の四国新聞杯を勝利して、6度目の重賞挑戦となる福島牝馬S(G3)では初めて重賞で連対圏内(2着)に入り、5歳を迎えた今年も、1600万下のパールSを優勝。3歳時のフェアリーS(G3)以降、9度目の重賞挑戦となるマーメイドS(G3)を迎えた。

 このレースのリラヴァティの評価は6番人気。53㎏という軽ハンデながらも、重賞勝ち馬も並ぶ中では順当な評価とも言えたが、伊藤厩舎長はその評価を上回るような結果を信じていた。

 「これまで重賞やG1で強い相手に揉まれてきた経験を生かせるのなら、必ずいいレースができると思っていました。実際に完璧なレースを見せてくれましたね」

 最軽量馬(49㎏)のシャイニーガールが先手を奪う展開を、リラヴァティは自らの持ち味と言える先行力で好位をキープ。4コーナー過ぎには先頭に立ち、他の13頭を引き連れて最後の直線へと向かっていく。

 「先頭に立つのが早いのでは?とも思いましたが、粘り残してくれたところは松若騎手の腕であり、そして凌ぎきった精神力は、やはりこれまでの経験が生きたのでしょう。」

 このレースの後、陣営からはクイーンS(G3)への挑戦を表明。デビューからこれまで、一年間に1勝を積み上げてきたリラヴァティは、5歳の今年、2勝目を重賞制覇で飾り、そして3勝目で重賞連勝を狙うことになった。

 「先日、石坂先生と話す機会がありましたが、相変わらずやんちゃな性格をしているそうです。だからこそ、活力も衰えず、また前で競馬ができるのでしょうね。実は牧場を離れてから一度も実際にレースを見たことが無いのですが、クイーンS(G3)は応援に行けるまたとない機会。目の前で最高の結果を残して欲しいと思います」

 クラブの規定もあり、6歳を迎える来年には引退を迎えるリラヴァティ。しかし、衰えを知らぬ成長力ならば、このクイーンS(G3)も勝利して、引退の前には更なる大きなタイトルを伊藤厩舎長に届けるのかもしれない。