重賞ウィナーレポート

2016年04月21日 東京プリンセス賞(GDJ)

2016年04月21日 大井競馬場 雨 稍重 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:リンダリンダ

プロフィール

生年月日
2013年04月22日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:12戦5勝
総収得賞金
84,652,000円
フレンチデピュティ(USA)
母 (母父)
クリムゾンルージュ  by  エンドスウィープ(USA)
馬主
(株) MMC
生産者
ユートピア牧場 (登別)
調教師
荒山 勝徳
騎手
桑村 真明
  • リンダリンダの母クリムゾンルージュ
    リンダリンダの母クリムゾンルージュ
  • リンダリンダの生まれ故郷・ユートピア牧場(登別市)
    リンダリンダの生まれ故郷・ユートピア牧場(登別市)
  • 清水町の小野瀬牧場で生まれたリンダリンダの半弟(牡当歳、父トランセンド)
    清水町の小野瀬牧場で生まれたリンダリンダの半弟(牡当歳、父トランセンド)
  • クリムゾンルージュと生まれて3日後の当歳馬
    クリムゾンルージュと生まれて3日後の当歳馬
  • 姉の活躍により半弟に懸かる期待も大きい
    姉の活躍により半弟に懸かる期待も大きい
  • ユートピア牧場にあるライスシャワーのお墓
    ユートピア牧場にあるライスシャワーのお墓
  • ユートピア牧場の看板
    ユートピア牧場の看板

 『グランダム・ジャパン2016』3歳シーズンの第5戦「東京プリンセス賞(大井)」を、2番人気のリンダリンダが快勝。圧倒的1番人気に推されたモダンウーマンがハナを切ってペースを握ったが、先行集団を見るような位置で脚を溜めていたリンダリンダが最後の直線で外に持ち出し、先に抜け出したスアデラを力強くねじ伏せて先頭でゴールイン。2歳時のイノセントカップ(門別)、サッポロクラシックカップ(門別)につづく重賞3勝目を飾った。

 リンダリンダの生まれ故郷は、登別市のユートピア牧場。1990年代、ミホノブルボンやメジロマックイーンらと幾多の名勝負を演じたライスシャワーのオーナーブリーダーとして名高い名門牧場である。近年は、リンダリンダの全姉ルージュロワイヤルや、今年の北斗盃を制して「三冠ボーナス」の期待が懸るスティールキングなど、ホッカイドウ競馬を舞台に活躍する生産馬が目立っている。

 「前日の北斗盃(門別)を生産馬のスティールキングが勝ち、口取り式で桑村騎手に『明日も頼むね』と言ったんですが、本当に2日連続で桑村騎手と握手を交わすことになり、夢のようでした」と話すのは、ユートピア牧場と大東牧場(千葉)の統括責任者を務める山口正さん。「モダンウーマンに勝てるとすれば、距離が延びるここだと思っていました」と、これまで何度も経験してきた悔しい思いを晴らすような会心の笑顔を見せてくれた。

 悔しい思いといえば、リンダリンダの母クリムゾンルージュもあと一歩のところで重賞に手が届かず、2着、3着を繰り返してきたユートピア牧場の生産馬。この東京プリンセス賞も3着に敗れており、リンダリンダは10年越しに母の雪辱も果たしたことになる。「クリムゾンルージュは、うちの牧場が長年にわたって血統を崩さずにつないできた牝系のなかで、唯一残っているラインの繁殖牝馬なんです。リアルシャダイ、サンデーサイレンス、エンドスウィープと気性の強い種牡馬を重ねてきましたから、産駒の気性的な面を考慮してフレンチデビュティを配合し、生まれてきたのがルージュロワイヤルとリンダリンダでした」と、血統の背景について説明してくれた。ちなみにクリムゾンルージュは今年、父にトランセンドを持つ元気な牡馬を、清水町の小野瀬牧場で出産している。

 リンダリンダの幼少期について伺うと、「生まれた時から立派な体をしており、姉のルージュロワイヤルよりも活発でした」と振り返り、「母のクリムゾンルージュは生まれつき旋回癖のある馬なんです。繁殖入りしたあとも癖は治らず、初めて生んだ仔は母乳を飲もうとして母の後をついてまわり、その旋回癖がうつってしまいました。なんとか旋回癖を仔にうつさないようにと試行錯誤を重ね、出した答えが早い時期からの夜間放牧でした。あまり夜間放牧には適さない土地なのですが、2番仔のルージュロワイヤルの世代から、リスクを覚悟で当歳の夜間放牧を取り入れたんです。その経験を踏まえ、リンダリンダは生まれて間もない頃から夜間放牧を始めました」と説明する。苦渋の策で取り入れた夜間放牧が、結果的に仔馬たちの心身を鍛え、いまの好結果につながっていることは間違いなさそうだ。

 「場長を任されて今年で15年になるのですが、生産馬が南関東の重賞を制したのは今回が初めてなんです。リンダリンダには、母が2着1回、3着2回とあと少し手の届かなかったダートグレード競走を獲れるぐらいに成長してほしいですね。次走は牡馬相手の東京ダービーになるようですが、期待を込めてレースを見守りたいと思います」と目を輝かせる山口さん。

 リンダリンダの牝系を辿っていくと、1952年のダービー馬クリノハナ(大東牧場生産)の名前もある思い入れの深い血統。その血を受け継ぐ牝馬が『グランダム・ジャパン』の舞台で活躍し、また次の世代へと血をつないでいく。日本競馬の歴史と未来を背負って走るリンダリンダに、今後も注目していきたい。