2016年04月10日 ル・プランタン賞(GDJ)
優勝馬:ドンプリムローズ
プロフィール
- 生年月日
- 2013年02月20日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:10戦6勝
- 総収得賞金
- 21,527,000円
- 父
- ゴールドヘイロー
- 母 (母父)
- ヴィジョンサクラ by ウイニングチケット
- 馬主
- 光安 了
- 生産者
- 米田牧場 (三石)
- 調教師
- 真島 元徳
- 騎手
- 真島 正徳
佐賀競馬場で行われた『グランダム・ジャパン2016』3歳シーズンの第3戦「第15回ル・プランタン賞」を、単勝1番人気に支持されたドンプリムローズが優勝。本馬場入場の際に放馬するアクシデントがあったものの、いざゲートが開くと道中は2~3番手の外を余裕十分の手応えで追走し、3コーナー過ぎで早くも先頭に。直線では兵庫からの遠征勢2騎による追撃を抑え込んだ。同馬は北海道から佐賀へ移籍後、7戦6勝、2着1回とほぼパーフェクトな成績を収めている。
「マイナス体重で出てきた影響がどれほどのものか少し不安はありましたが、いざレースに入るとまったく心配なく見ていられました」とレースの感想を話すのは、ドンプリムローズの生産者・米田牧場(新ひだか町三石)の米田剛文(よしふみ)代表。繁殖牝馬14頭を抱える生産牧場を、奥様の静江さんと2人で切り盛りしている。
レース当日は自宅にいて、スマートフォンでライブ中継を観戦していたそうだ。これが同馬にとって4つ目の重賞タイトルとなったが、「やはり生産馬が勝利する瞬間は、日ごろの苦労がひとつ報われた感じがしますね」と目を細める。
ドンプリムローズの幼少期について、「とにかく大きな仔が生まれたなと思いました」とご夫妻は振り返る。その後も特に大きなアクシデントはなく、健康優良児としてすくすくと成長した同馬は、同い年の仔馬たちの集団ではボスとして振る舞っていた一方で、人に対してはおとなしく従順な面を持っていたという。
実は、同馬が生産された年から米田牧場では新たな試みが行われていた。「この世代から、冬の間も夜間放牧を行うことにしたんです。1月から3月の間も、よほどの吹雪にならない限り、できるだけ放牧地に出していました」と話し、「通年の夜間放牧もそうですが、常に新しいものを取り入れていくよう心がけています」と、強い馬づくりへの意気込みを語ってくれた。それらの新たな試みがドンプリムローズの心身を鍛え、今の活躍に繋がっていることは想像に難くない。
他の牧場の例に漏れず、米田牧場も現在出産シーズンの真っ只中。昨年受胎した9頭のうち、これまで5頭がお産を済ませているが(2016年4月19日現在)、2月に生まれた仔のなかに、一度見たら忘れられないほど大きく特徴的な流星を携えたとねっ仔がいる。父クロフネ、母イザベルドスメーン(その父スペシャルウィーク)の牝馬。母の母は1993年のセントウルS(G3)を制したエリザベスローズで、繁殖としてもフサイチゼノン、アグネスゴールド、リミットレスビッドなど、多くの重賞勝ち馬を輩出した名牝だ。その良血を受け継ぐ当歳馬に、米田さんも大きな期待を懸けている。「この時期の当歳馬らしく、とにかくヤンチャで元気一杯といった感じです。体型的にもきれいに整った馬ですね。これから馬主さんや調教師さんとの良縁に恵まれ、活躍してくれることを期待しています」と母仔へいとおしげな視線を送りながら、仔馬の未来へ思いを寄せていた。
牧場を経営する傍ら、日高の牧場を走り回る装蹄師という顔も持つ米田さん。そんな「おやじの背中」を目の当たりにした影響か、長男の守大(もりひろ)さんも装蹄の道を志し、現在は笠松競馬場で修業を積んでいるそうだ。「まさか馬の仕事に興味があるとは思っていなかったので、最初に『装蹄師になりたい』と聞いたときはびっくりしました。厳しい世界ですが、本人も苦労を買って出る覚悟があるものと信じていますので、暖かい目で見守ってやりたいですね」と、父親としての顔を覗かせる。
今から50年ほど前、先代が牧場を開設する際に輸入した基礎牝馬ファーデイスタンスの血を引く馬のなかで、現在唯一残っている牝馬がドンプリムローズだという。「無事にひとつでも多くのレースを走って、次世代へ血を繋げてほしいですね」と今後の期待を語る米田さん。人から人、馬から馬へと受け継がれていくドラマの新たな担い手となるべく、ドンプリムローズの益々の活躍が期待される。