2016年03月27日 高松宮記念 G1
優勝馬:ビッグアーサー
プロフィール
- 生年月日
- 2011年03月18日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:11戦7勝
- 総収得賞金
- 299,811,000円
- 母 (母父)
- シヤボナ(USA) by Kingmambo(USA)
- 馬主
- 中辻 明
- 生産者
- バンブー牧場 (荻伏)
- 調教師
- 藤岡 健一
- 騎手
- 福永 祐一
春のスプリント決戦、高松宮記念(G1)はビッグアーサーが快勝。G1初挑戦ながら堂々1番人気に応え、レコードタイムでゴール板を駆け抜けた。
本馬の生産は浦河町のバンブー牧場。昭和41年創業の牧場で、古くからオーナーブリーダーとして数々の実績馬を送り出し、主な生産馬には1982年の日本ダービー馬バンブーアトラス、その子で菊花賞(G1)を制したバンブービギン、短距離とマイルのG1を制したバンブーメモリー、秋華賞(G1)で波乱を演出したティコティコタック、JBCスプリント(Jpn1)の覇者で、イーストスタッドで種牡馬生活を送っているバンブーエールらがいる。現在、繁殖牝馬は16頭、スタッフは5名働いている。
レース当日、同牧場の竹田辰紀社長は現地、中京競馬場へ観戦に出向き、栄えある表彰台に立った。浦河では竹田社長のご家族、牧場スタッフがレースを見守り、確定後まもなく地元の池田拓町長や、ひだか東農業協同組合の谷川利昭組合長、近隣の軽種馬生産者が駆けつけ、万歳で喜びを分かち合った。あちこちからお祝いが届けられる最中、社長夫人の睦子さんを報道記者が囲むと、「涙が出るぐらい、嬉しい勝利でした」と、感慨深いコメントが返る。そのそばで長男・慈元君と次男・気竜君は、「勝てると思って応援していた」と、元気に満ちあふれた声を響かせた。
本馬は父サクラバクシンオー、母シヤボナ、母の父キングマンボという血統で、4代母に仏オークス馬ルスクース、3代母に米国G1馬ルロアという優秀なファミリー出身。母シヤボナは同牧場が(株)ジェイエスの仲介で英国タタソールズの繁殖セールで購入し、本馬は第2子となる。当歳時、セレクトセールへ上場するも主取りとなったが、1歳時にセレクションセールへ上場し、中辻明オーナーと縁が結ばれた。落札価格は当時の平均価格とほぼ近い1,102万5,000円だった。
牧場時代の本馬について、かつてティコティコタックやバンブーエールを手がけてきた同牧場のベテラン、泉山由人場長は、「手のかからない、扱いやすい馬でしたね。気性の激しい母馬とは対照的に、大人しいぐらいでした。当歳の頃は小柄で、ひ弱な面がありましたが、1歳明けてから馬が良くなってきました」と、振り返る。1歳春には夜間放牧し、再びのセール上場へ中期育成を進めた。後期育成は浦河町の吉澤ステーブルで鍛錬が積まれ、栗東の藤岡健一厩舎・入厩へと至った。
今年11歳となる母シヤボナは健在で、ダイワメジャーの子を宿している。2歳には父バンブーエールの牝馬がいて、こちらは「アルマクロア」という馬名でデビューを予定している。こちらについては、「母に似て気性の強いタイプ。父の長所を受け継ぎ、ダート適性は高いでしょう。ビッグアーサー同様、楽しみにしています」と、牧場から巣立ったG1馬の父・兄に続けと期待は膨らむ。
レースから数日後、浦河町の役場や農協には、本馬の勝利を祝う垂れ幕やポスターが掲げられた。上半期のG1シリーズが始まり、町としても幸先良い。同じ浦河町産馬のホッコータルマエ、ストレイトガールのように、本馬もまだまだG1タイトルを狙える器だろう。泉山場長は、「オープン入りしてから重賞で敗れていましたが、能力はG1でも通用する馬だと期待していました。このレースは以前、高松宮杯(G2)だった時にバンブーメモリーで勝ったレースで、縁を感じますね。サクラバクシンオー産駒で奥手だと思いますし、バンブーメモリーを超えるような馬になって欲しいです」と、更なる歩みへ思いを馳せる。
僅か一年で下級条件馬の身から短距離界のトップに達し、その勢いは故郷が誇る名馬の域へ。牧場創業50年の節目にもたらした大きな勲章は、名門の看板により一層輝きを与えている。