重賞ウィナーレポート

2016年04月10日 桜花賞 G1

2016年04月10日 阪神競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ジュエラー

プロフィール

生年月日
2013年01月17日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:4戦2勝
総収得賞金
169,101,000円
ヴィクトワールピサ
母 (母父)
バルドウィナ(FR)  by  Pistolet Bleu(IRE)
馬主
青山 洋一
生産者
社台ファーム (千歳)
調教師
藤岡 健一
騎手
M.デムーロ

   まさに激戦となった今年の桜花賞(G1)。ハナ差で第76代の桜花賞馬となったのは、社台ファームの生産馬であるジュエラーだった。

   調教厩舎長の正岡稔氏は、育成厩舎で管理していた頃のジュエラーをこう振り返る。

   「勝ったからというわけではありませんが、全く悪い印象が無い馬でした。思い返しても心配らしい心配が無かった程です。改めて調教日誌を見返してみたのですが、1歳11月の段階では、『Sランク。期待高まる』と表記してあり、年明け1月に、オーナーへお送りした報告書には、『パワー、スタミナ、瞬発力。3拍子揃った馬』と書いてありました。

   とは言っても、ジュエラーを始めとして、ハイレベルなメンバーが揃っていた今年の桜花賞(G1)。事務局の長濱卓也氏は、「馬の出来の良さには自信がありましたが、今年に限って言えば、生まれた世代が悪すぎると思いました」と話す。

   「調子も上向いていたようですし、ローテーションも理想的でした。それでも2歳女王に輝いたメジャーエンブレムを差して、また、チューリップ賞(G3)では先着を許したシンハライトも抑えるなんて、多く見積もっても、100回に1回あるかないかだと思っていました」(長濱氏)

   ローテーションで言うのなら、ここ数年の桜花賞(G1)で多くの勝ち馬を輩出していたのが、ジュエラーのような、前走チューリップ賞(G3)を使ってきた馬。長濱氏はそこにも勝負のあやがあったのではと話す。

   「メジャーエンブレムに騎乗していたルメール騎手は、上位2頭がチューリップ賞(G3)で繰り出した、上がり33秒フラットの末脚を経験してはいなかったので、本番の乗り方に少しは影響するのではとも思っていました。それでも100回に1回と言えるチャンスをこの本番で成し遂げるのですから、ジュエラー自身の勝負強さは勿論のこと、やはりデムーロ騎手の手腕によるところが大きかったのではないのでしょうか」(長濱氏)

   勝負運は厩舎にもあった。今年の春G1レースの幕開けとなった高松宮記念(G1)を勝利したのはビッグアーサー。同じ藤岡厩舎の管理馬でもあり、厩舎の士気も高まった中での桜花賞(G1)となったことも、少なからずは影響していたに違いない。

   「藤岡調教師も戦前には、『今回も楽な競馬にならず、差のないレースになる』とコメントしていましたが、まさに接戦を想定したようなギリギリに仕上げてくださった陣営の読みと手腕も、この僅差を制した一因かもしれません」(長濱氏)

   この桜花賞(G1)勝利は、社台ファームにとって、一昨年の天皇賞・秋(G1)を制した、スピルバーグ以来のG1制覇。それだけにハナ差と言えども大きな勝利となった。

   「今回も入線のタイミングが少しでも違えば、2着だったかもしれません。今回は先着出来たとはいえ、シンハライトとの勝負づけが済んだとは思ってませんし、メジャーエンブレムもオークス(G1)では巻き返してくることでしょう。今後もファンの皆様に喜んでもらえるような舞台に、生産馬たちを出走させていければと思いますし、その際はご声援をよろしくお願いします。この場を借りて応援していただいたファンの方に、厚く御礼申し上げます」そう話した長濱氏は、最後に、「レース後、青山オーナーの男泣きを見て、こちらもグッときました」と話した後、その時のことを思い出したのか、少しだけ目を伏せた。