大歓声に包み込まれた日本ダービー(G1)以来、約9ヶ月ぶりの出走となった中山記念(G2)。両前脚の骨片除去手術を行ったドゥラメンテは、そのほとんどの時間を、ノーザンファーム早来牧場で過ごしていた。

   「いい状態で送り出せましたが、正直、あと1週か2週あれば、まだベストな状態に近づけたのではとの思いはありました。その意味ではダービーの時よりもドキドキしながらレースを見ていたのは事実です」とは林宏樹調教主任。母のアドマイヤグルーヴにも騎乗していた林調教主任は、この血統の繊細さも誰よりも熟知しており、ドゥラメンテが乗り運動を再開した後から入厩までの期間、正月休みもほとんど取らずにその背中に跨り続けた。

   「調教ペースが上がって来るにつれて、ストレス性の下痢をしたこともありました。それでも入厩を控えた数日前、厩舎から連れ出そうとした時に、前脚を伸ばしながら両前脚を振り降ろすという、独特の歩きを見せるようになりました」（林調教主任）

   この歩き方は、ドゥラメンテの状態がいいときに見せる仕草でもあった。そして中山記念(G2)のパドックでも、状態の良さを証明するかのように、「ドゥラメンテステップ」をしながら周回を重ねて行く。

   「その歩き方だけでなく、プラス18㎏ということを感じさせない見栄えのする馬体もまた、堀厩舎スタッフがこの舞台に最高の状態で臨ませてくれたことが感じられました」（林調教主任）

   9ヶ月ぶりのレースというだけでなく、他にG1馬が2頭出走。そして、同じように成長を遂げてきた同世代の4歳馬たちなど11頭が名を連ねた、この中山記念(G2)。レース当日の中山競馬場には、約3万6千人もの競馬ファンが来場したことからも、その注目度の高さがうかがえる。

   ゲートが開くとドゥラメンテは先頭から4、5番手に位置を定める。牧場での調整期間中、林調教主任は前向きすぎる気性を改善すべく、折り合いに気をつけながら騎乗を続けてきたが、堀厩舎にもバトンタッチされたその調整は、見事な折り合いとなって証明された。

   4コーナーの手前、M・デムーロ騎手のゴーサインに反応したドゥラメンテは、大外から一気に先頭集団を飲み込んでいく。逆手前で走ってしまったばかりに、少々、外に膨らんでしまったのはご愛敬と言えるが、それでも距離ロスはなんのその、復活した姿に大歓声を送るファンに見せつけるかのように、先頭でゴール板を駆け抜けた。

   「あのレース内容にはびっくりしましたし、そして勝った後にはホッとしました。これまでのベストレースと言えますね。このレースを勝つと勝たないとでは、今後のレース選択も違って来ますし、勝ってくれて本当に良かったです」（林調教主任）

   レースから4日後の3月3日、オーナーであるサンデーレーシングからは、次走としてドバイシーマクラシック(G1)を目標に調整を進めて行くことが発表された。今後は世界にその力を認めさせていくドゥラメンテにとっては、願っても無い舞台でもある。3月26日、次は世界がその走りに震撼するのかもしれない。