2015年10月15日 エーデルワイス賞(中央交流) Jpn3
優勝馬:タイニーダンサー
プロフィール
- 生年月日
- 2013年04月24日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:7戦4勝
- 総収得賞金
- 112,555,000円
- 母 (母父)
- キハク by アサティス(USA)
- 馬主
- (有) グランド牧場
- 生産者
- グランド牧場 (静内)
- 調教師
- 角川 秀樹
- 騎手
- 桑村 真明
『グランダム・ジャパン』2歳シーズンの第2戦「第18回エーデルワイス賞(Jpn3)」は、JRAから挑戦してきた4頭を、地元ホッカイドウ競馬の精鋭11頭が迎え撃つ15頭立てで盃を競われた。レースは単勝オッズ2番人気と地元馬の中で最も支持を集めたタイニーダンサーが直線で鋭い伸び脚を発揮し、「栄冠賞」「フローラルカップ」につづく重賞3勝目で2歳女王の座に輝いた。
タイニーダンサーは、新ひだか町静内のグランド牧場生産馬。2着に逃げ粘ったモダンウーマン、3着に追い込んだJRA所属のディーズプラネットも同牧場の生産馬で、出走した生産馬3頭がダートグレードの大舞台で上位を独占するという快挙を成し遂げた。
「JRAからも実力のある馬が来ていましたので、半信半疑で観ていましたが……」と喜び半分、驚き半分の様子で語ったのは、現地で歓喜の瞬間を見届けたグランド牧場の伊藤佳幸社長。「うちの牧場の生産馬であるハニーパイ&ピッチシフターで決着した2012年以来の地元馬ワンツーで、レース後にはファンの方にも『北海道の馬が勝った!』と言っていただきました。地元の多くの方に喜んでいただけたのではないかと思います」と伊藤社長は笑顔を見せる。
オーナーブリーダーとして、毎年のようにホッカイドウ競馬の2歳重賞戦線に活躍馬を送り出しているグランド牧場。本格的にホッカイドウ競馬へ参戦するようになったきっかけは、今年勇退した井村勝昭さん(元北海道軽種馬振興公社専務理事)に「馬産地競馬を盛り上げるため、ぜひ新馬を道営に入れてほしい」と熱く語られたことだという。「砂が深い門別のコースに合う血統を研究するなど、こちらとしても試行錯誤の連続でした。今回の勝利で、それらの努力がようやく実を結んできたように感じています。井村さんも『JRAに負けない馬づくり』をスローガンに掲げていましたが、レース直後に『調教用坂路コース新設3年目で、ようやく本当の成果が出てきたような気がする』と電話口でとても嬉しそうにおっしゃっていました」と、6~7年前から始めた取り組みに大きな手応えを感じているようだ。
ここまで4戦行われたホッカイドウ競馬の2歳牝馬重賞を、生産馬のタイニーダンサーとモダンウーマンが2つずつ分け合っている。その快進撃について伊藤社長は、「管理してくださっている角川秀樹調教師や厩舎スタッフの皆さんの努力の賜物だと思います。牧場スタッフもひとりひとりが基本を勉強し直し、その成果をみんなで共有することで、少しずつ結果に繋げることができるようになってきました」と分析する。
タイニーダンサーの父サウスヴィグラスは現役時代、「JBCスプリント(G1)」や「根岸ステークス(G3)」を制するなどダートの短距離路線で活躍。2004年に種牡馬入りして以降は、ラブミーチャンやナムラタイタンなど、ダートの強豪馬を数多く送り出してきた。今年もコーリンベリーが「かきつばた記念(Jpn3)」、エーシンサルサが『グランダム・ジャパン2015』古馬シーズンの「兵庫サマークイーン賞」を制するなど地方のダートで20の重賞勝ち星を積み重ねており、現在のところ地方競馬サイアーランキングのトップを走っている(2015年10月20日現在)。
一方の母キハクはアサティス産駒で、1996年の「優駿牝馬(オークス)(G1)」にも駒を進めた活躍馬。繁殖牝馬としても、デビューした14頭の産駒のうち12頭が中央・地方で勝ち上がるなど、長らくグランド牧場の屋台骨を支えてきた。一昨年の『グランダム・ジャパン2013』3歳シーズン「桜花賞(浦和)」を逃げ切ったイチリュウ(父キングヘイロー)を17歳で、そしてタイニーダンサーを20歳で出産。高齢になっても活躍馬を送り出すことができた要因を伊藤社長は、「母馬の気性が年を重ねる毎に落ち着いてきて、それが産駒にも伝わったのではないでしょうか」と話す。
そのイチリュウが生まれ故郷のグランド牧場へ戻り、今年から優秀な母の血を次世代に伝えるべく繁殖生活に入った。現在お腹にはヴィクトワールピサの仔が宿っており、順調にいけば来年の3月中旬頃に出産予定だそうだ。「イチリュウは地方のダートで活躍しましたが、血統面や牧場にいた頃の雰囲気を見ると、芝にも適性があるように思っています。ターフを駆け抜ける産駒の姿も見てみたいです」と伊藤社長も大きな期待を寄せている。
タイニーダンサーも、JRA函館競馬場へ遠征した「函館2歳ステークス(G3)」で差のない4着に健闘した実績があり、芝レースへの可能性も捨てきれない。今後のローテーションはさまざまな選択肢が広がっていそうだが、「次にどこを使うかはわかりませんが、いずれにしても今後長く活躍が見込める馬ですし、まずは無事に次のレースを迎えてほしいです」と愛馬にエールを送っていた。