2015年05月31日 九州ダービー栄城賞(DW2015)
優勝馬:キングプライド
プロフィール
- 生年月日
- 2012年02月27日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:16戦7勝
- 総収得賞金
- 42,841,000円
- 母 (母父)
- アイディアルクイン by アスワン
- 馬主
- 深川 一清
- 生産者
- 長谷部牧場 (門別)
- 調教師
- 土井 道隆
- 騎手
- 鮫島 克也
節目となる10回目を迎えた『ダービーウイーク2015』の幕開けは、佐賀競馬場が舞台の「九州ダービー栄城賞」。昨年に引きつづき日本ダービー(G1)の当日に行われ、圧倒的人気を背負ってレースの主導権を握ったキングプライドが2分10秒2のタイムで優勝。鞍上の鮫島克也騎手にとっては2012年のエスワンプリンス以来3年ぶり4度目、土井道隆調教師は2011年のコスモノーズアートにつづく2度目のダービー制覇となった。
キングプライドの故郷は、日高町豊郷の長谷部牧場。現在の代表・長谷部秋道さんの父、茂さんが1955年前後に創業した牧場だ。約60年におよぶ歴史の中で、2004年の東京2歳優駿牝馬を制したアサティスジョオー、2009年の九州ジュニアチャンピオン優勝馬ネオアサティス、2011年の九州ジュニアグランプリを勝ったガルホームなどの活躍馬を送り出してきた。アサティスジョオーは現役引退後に里帰りして長谷部牧場で繁殖生活を送っており、3番仔として産んだパッショネイトラン(牡3歳、美浦・尾形和幸厩舎、父ヴァーミリアン)がJRAで2勝を挙げる活躍をみせている。
「30年ほど前、父親が若くして病気で亡くなったとき、牧場を継ごうかどうか悩みましたが、つづけてきてよかったです。当時から現在にいたるまで、いろんな方に助けていただきました。今回ダービーを獲れたのも、多くの方々のおかげだと思います」と感謝の言葉を口にする長谷部さん。レースは電話実況で聞いていたそうだ。「人気になっているらしいと聞いていましたし、期待していました。ところがレースの途中で名前を呼ばれなくなったので、どうしたんだろう?と少し心配になっていたんです。あとでインターネットの録画を見たら、その理由がわかりました」と笑う。勝負どころから後続を引き離したキングプライドの名前はゴール前まで呼ばれず、2着争いを伝える実況になっていたのだ。
牧場時代のキングプライドについては、「兄のネオアサティスとガルホームが重賞に勝ち、デロースも九州ジュニアチャンピオン2着と活躍していましたから、生まれる前から期待の大きな馬でした。母のアイディアルクインは気の強い馬ですが、キングプライドは扱いが楽でしたね。体型的には父親のサウスヴィグラスに似たタイプで、あまり背は高くなかったですが幅があって力強い馬でした」と振り返る。
2歳8月にデビューしたキングプライドだが、初勝利を挙げるまでには5戦を要し、2勝目は10戦目、3歳になってからのことだった。「兄たちは2歳戦から活躍してくれたのに、キングプライドはなかなか勝てなかった。あとで聞いたら夏バテしていたのに加えて、脚元もまだ固まっていなかったそうです。パンとしたら強くなってくれた。馬主さんに長く楽しんでもらえそうで嬉しいです」と白い歯をこぼす。
現在は約7ヘクタールの土地で、繁殖牝馬3頭を管理する長谷部牧場。放牧地面積からはもう少し頭数を増やしても良さそうだが、「家族だけの牧場ですし、頭数を増やしても手がかけられない。今くらいの頭数がちょうど良いです」と“少数精鋭”の経営方針を貫く。生産牧場としてやるべきことをきっちりとこなし、次のステップへ渡したいと長谷部さんは話す。キングプライドの母のアイディアルクインは20歳になったが、今年も父カネヒキリの牡馬を無事に出産。パッショネイトランの母アサティスジョオーは13歳になり、今年は父サウスヴィグラスの仔を産んでいて、少ない生産頭数ながら楽しみは広がっているようだ。
「せっかくダービーのタイトルをとれたのですから、長い競走生活を送ってほしいと願っています」とキングプライドにエールを送る長谷部さん。遠く離れた九州の地で頑張る愛馬の姿を、北の大地で生産者は見つめつづけている。