2015年06月07日 安田記念 G1
優勝馬:モーリス
プロフィール
- 生年月日
- 2011年03月02日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:11戦6勝
- 総収得賞金
- 536,246,000円
- 母 (母父)
- メジロフランシス by カーネギー(IRE)
- 馬主
- 吉田 和美
- 生産者
- 戸川牧場 (門別)
- 調教師
- 堀 宣行
- 騎手
- 川田 将雅
歴戦の雄たちが次々に種牡馬入りし、絶対王者不在となった古馬マイル路線。混沌を極める第65回安田記念(G1)は、前走ダービー卿ChT(G3)でレコード勝ちを収めた新星・モーリスが1番人気に推された。
レースは、スタートからダッシュ良く飛び出したミッキーアイルをリアルインパクトが交わしてハナを奪うという意外な展開に。出遅れが懸念されたモーリスは好スタートを決め4番手に付けた。レースは淡々と進み、残り200m、万を持してゴーサインを出すと先頭に立ち、外から襲いかかるヴァンセンヌをクビ差凌ぎ切って破竹の4連勝で新マイル王の座を手にいれた。
モーリスの産まれ故郷は日高町厚賀の戸川牧場。夫婦二人で8頭の繁殖牝馬を飼養する家族経営の牧場から、ニューヒーローが誕生した。
レース当日、戸川洋二さん、晴恵さん夫妻は札幌の高校に通う長女の文乃さんを連れて現地へ応援に駆けつけた。これまで生産馬がG1レースに出走した時は晴恵さんと文乃さんが出かけていたが、今回、周囲の助力もあって全員で応援することができた。洋二さんは「馬を人に頼んで出かけるという概念が全くなく、毎回自分は留守番していました。なにせ新婚旅行すら行かなかったし、家族で飛行機に乗ったのもはじめて。モーリスのお陰でいろいろな経験をさせてもらいました」と照れくさそうに笑った。
競馬場では昨秋のドラフト育成枠で指名され、西武ライオンズに入団した長男、大輔さんも合流して、久しぶりに家族4人が顔を揃えた。
再会を喜ぶ間も無くパドックへ誘導され、芝生の上から生産馬と対面した。「1歳の6月、牧場を離れてから一度も実馬を見ていませんでしたから、テレビで見るより随分身が入って逞しくなったなと思いました。1番人気だよと声をかけられて、信じられない、地に足が着いていないような状態でした。今思い返しても何か夢の中の出来事だったような不思議な感覚でしたね」と振り返る洋二さん。
しかしモーリスはしっかりと地面を掻き込むようなフォームで府中の1600メートルを走り、先頭でゴールを駆け抜けた。家族全員で撮った大舞台での口取り写真は、離れて暮らす家族の絆をより一層強くしたことだろう。
かつてメジロ牧場に勤務していた戸川夫妻。「馬は、愛情を持って接すればいつか色々な形で恩返ししてくれる」という北野豊吉オーナーの言葉を胸に刻み、ここまで生産を続けてきた。“売れる配合”よりも“走る配合”に重きを置いて、産駒の欠点を補うような種馬を模索し続けた。当時新種牡馬で、決して人気種牡馬ではなかったスクリーンヒーローを配合相手に選んだのも“走る配合”を意識してのことだ。
「メジロフランシスの産駒は、途中で競馬を止めてしまったり、今ひとつ勝負根性が欠けていました。スクリーンヒーロー、引いては祖母のダイナアクトレスもゴールまでしっかり伸びる粘り、並ばれたら抜かせない勝負根性が印象的で、この馬ならフランシスの欠点を補ってくれるのではないかと選んだんです。安田記念はその真骨頂といえる走りを見せてくれましたね。北野豊吉会長の言葉と合わせて、一生懸命やって来て良かったとはじめて思えた勝利でした」と感無量の表情。
レース後、地元日高町厚賀軽種馬振興会主催で行われた優勝祝賀会には日頃から苦楽を共にしている生産者仲間が参加し、勝利の美酒に酔いしれた。厚賀地区のG1制覇は2004年の安田記念(G1)を制した浜本牧場産のツルマルボーイ以来となり、祝いの宴は夜更けまで続いた。
また、産駒初G1勝利となった父スクリーンヒーローも現在180頭を超える花嫁を集め、嬉しい悲鳴を上げている。