重賞ウィナーレポート

2015年05月16日 京王杯スプリングC G2

2015年05月16日 東京競馬場 曇 良 芝 1400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サクラゴスペル

プロフィール

生年月日
2008年04月04日 07歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:29戦9勝
総収得賞金
313,174,000円
サクラプレジデント
母 (母父)
サクラブルース  by  Cure the Blues(USA)
馬主
(株) さくらコマース
生産者
山田牧場 (静内)
調教師
尾関 知人
騎手
戸崎 圭太
  • サクラブルース親仔(牡、父サムライハート)
    サクラブルース親仔(牡、父サムライハート)
  • 「良い仔が産まれました」とスタッフの中島さんは期待している
    「良い仔が産まれました」とスタッフの中島さんは期待している
  • 親子揃って放牧
    親子揃って放牧
  • 同じ放牧地の当歳馬とじゃれ合い元気に育っている
    同じ放牧地の当歳馬とじゃれ合い元気に育っている
  • 山田牧場の放牧地
    山田牧場の放牧地
  • きれいに整備されている場内の厩舎
    きれいに整備されている場内の厩舎

 安田記念(G1)へのステップレースとして注目される第60回京王杯スプリングカップ(G2)は、5番人気のサクラゴスペルが優勝。スローペースのなか、中団でレースを進め、直線で脚を伸ばした本馬がキレ味勝負の接戦を見事制した。前々走のオーシャンステークス(G3)に続いて、重賞3勝目となった。

 サクラゴスペルの産まれ故郷は、静内川の恵みを受けた豊かな土地が広がる新ひだか町御園地区の山田牧場。家族3名と従業員1名の計4名で、7頭の繁殖と当歳・1歳馬を育てている生産牧場だ。代表の山田嘉昭さんは3代目となる。祖父の喜平さんが牧場を開いた当初は、稲作と乳牛の牧場だった。嘉昭さんも小学校の頃は牛を追う手伝いをしていたそうだ。馬の頭数が少しずつ増え、父の喜一郎さんの代で牛から馬へと比重が変化。現在の競走馬の牧場になったと言う。

 今回のレースを自宅のテレビで観戦していた山田さん夫妻。ゴール前で10頭以上が横一線となる混戦に思わず応援に熱が入ったのではないかと思いきや、「極めて冷静でした」と嘉昭さん。動じず、静かに喜びを噛みしめたそうだ。一方、隣で応援していた奥様の浩恵さんは、「嬉しくて涙が出そうになりました。個人牧場でこういう機会はなかなかないことなので、夢みたいです。」と喜びをいっぱいに表した。サクラゴスペルの写真や記事などは大事に保管し応援しているそうだ。

 そんな対照的でいてバランスのとれたお二人の元で、本馬は離乳時期までを過ごしている。「良い体をしていました。ケガや病気もなく順調に育ってくれたので、特別に覚えているエピソードはないです。」と嘉昭さん。

 「普通は強い馬をつくるために夜間放牧をしました…などという話が出てくるのだろうけど、この辺りは鹿が大集団で出てくるから、日中放牧しか怖くてさせられないのです。土壌の肥料だって自給自足の堆肥。特別なことなんて何もしていないですよ。」と嘉昭さんは言う。それでも「朝・夕の手入れ。それだけはしっかりやっています。当歳のうちに、人間に全身どこを触られても大丈夫なように躾ることは大切だと考えています。でも、それもどこの牧場も一緒だと思いますよ」。

 嘉昭さんは、牧場作業を「父に教えてもらったというより、見て覚える感じでした」と話していた。特別ではない当たり前のことを毎日積み重ねる嘉昭さんの実直な姿を、サクラゴスペルも見て育ったのだろう。

 本馬の母サクラブルースを訪ねて放牧地へ行くと、隣には、写真撮影に興味を示しつつも、じっと賢そうに待つとねっこがいた。「サクラブルースは、仔だしが良く、特に牡馬は、がっしりした仔が産まれます」。4月に産まれたサムライハート産駒は、牡馬。自己所有馬になって初となる待望の仔は、しっかりとした体つきをしており、サクラゴスペルの当歳時に似た雰囲気があるそうだ。今から将来が楽しみである。

 次の出走予定は、サクラゴスペル自ら権利をもぎ取った安田記念(G1)。2013年に出走した際には掲示板に載っているうえに、ここのところの走りには、成長を感じさせられる。「普通は『もう7歳』だけど、この馬に対しては『まだ7歳』だと思います。無事に走ってほしい。G1の壁は厚いけど、もし勝てるなら勝ってほしいです」と嘉昭さんは願う。故郷へ福音(ゴスペル)が届きますように。