2015年04月27日 留守杯日高賞(GDJ)
優勝馬:ホレミンサイヤ
プロフィール
- 生年月日
- 2012年04月23日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:8戦6勝
- 総収得賞金
- 4,019,000円
- 父
- アドマイヤムーン
- 母 (母父)
- ストーミンウイニー(USA) by Storm Cat(USA)
- 馬主
- 木村 良明
- 生産者
- オリオンファーム (門別)
- 調教師
- 荒巻 透
- 騎手
- 安部 幸夫
『グランダム・ジャパン2015』3歳シーズンの第6戦は、水沢競馬場1600mコースが舞台となる「留守杯日高賞」。北海道から1頭、南関東(川崎)から1頭、東海地区(愛知、笠松)から4頭の遠征馬を、地元(岩手)馬5頭が迎え撃つ11頭立ての一戦となったが、優勝したのは愛知所属のホレミンサイヤ。好スタートからハナを奪って快調に飛ばし、4コーナーでは中団から上がってきた同じ愛知所属ミトノレオとの一騎打ちに。直線入り口のコーナーワークでその差を広げると、ゴール板までしぶとく粘り込んで重賞初制覇。デビューからの戦績を8戦6勝(3着2回)とした。
「レースはインターネット中継で見ていました。4コーナーで並ばれそうになってから、直線でもう一度伸びましたもんね。たいした根性娘だと思います」とレースの感想を話してくれたのは、ホレミンサイヤの生産者・オリオンファームの三浦啓一場長。「ホレミンサイヤは岩手デビューで、IBC岩手放送のアナウンサーさんに命名してもらった馬なんです。岩手弁で『それ、見たことか』といったような意味らしいのですが、まるで僕たちが馬にそう言われているような気がしましたよ(笑)」と満面の笑みを浮かべる。
オリオンファームは2006年、日高町福満に設立された新しい牧場で、今年ちょうど創業10年目を迎える。その間、リリーC(門別)に優勝し、ユングフラウ賞(浦和)でも2着したレイモニや、兵庫若駒賞(園田)など重賞3勝を挙げている現役馬トーコーポセイドンといった活躍馬を生産。現在は約50haの土地に繁殖牝馬19頭を抱え、スタッフ8名で生産から育成までを一貫して行っている。
「ホレミンサイヤは生まれた時から小さな馬でした。母のストーミンウイニーがヒザに怪我を抱えていたので、仔育ては無理そうだと判断し、生まれてすぐに乳母をつけたんです。その影響もあったのか、当歳馬たちの群れには入らず、1頭でいることが多かったですね」と当時を振り返るのは、繁殖主任の加藤義之さん。「母馬がそういう状態だったので、とにかく無事に生まれてほしい、そして無事に育って競走馬になってほしい、と願っていました」と、ホレミンサイヤに対する思いを話してくれた。
「2歳の10月までここで育成を行っていました。これだけ長い期間牧場にいるケースは珍しく、その分、思い入れも深い馬です」と話すのは、育成主任の室徳治さん。隣接する白井牧場の坂路コースを何度も駆け上がり、びっしりと脚腰を鍛えてきたそうだ。「小柄でしたけど、スピードには当時から光るものがありました」と振り返り、ホレミンサイヤが育成されていた角馬場やトラック、坂路コースなどを案内してくれた。厩舎から馬たちが運動するエリアまでは、起伏のある山道を上り下りしながら往復する。それだけでもかなりの運動量になると思うのだが、「自然な筋肉がつき、特に股関節を柔らかくする効果があるような気がしています」と室さんは話す。
母ストーミンウイニーは米国産馬。競走馬としては未出走のまま米国で繁殖生活を送っていたが、キーンランドの繁殖セールで取り引きされ、縁あってオリオンファームで繋養されることになった。その母は、牝馬ながらに1998年のケンタッキーダービーを制したウイニングカラーズ。そして父ストームキャットも、母の父として多くの活躍馬を送り出している米国産の名種牡馬。当然のように大きな期待を背負って日本へ輸入され、スペシャルウィーク、フジキセキ、ダイワメジャーとサンデーサイレンス系種牡馬が配合されていく。そして10番仔の交配相手として選ばれたのが、まだ産駒がデビュー前のアドマイヤムーンだった。「うちに来てから初めての非サンデーサイレンス系だったのですが、アドマイヤムーンは種牡馬としても期待が大きかったですからね。どんな仔が生まれてくるか楽しみにしていました」と三浦場長は話す。
現在、牧場にはホレミンサイヤの姉ウイニフレッド(父スペシャルウィーク)が里帰りし、その優秀な血を次世代へつなぐべく、繁殖生活を送っている。「すごく頭のいい馬ですよ」と加藤さんも話すように、カメラを構えると目線を向けて、おとなしくポーズをとってくれた。今年はストロングリターンを配合したそうだ。また、ホレミンサイヤの2つ上の姉ナトゥーラ(父フジキセキ)はJRAデビューからホッカイドウ競馬へ移籍して6勝を挙げ、1つ上の姉マロンブーケ(父ダイワメジャー)もJRAデビューから大井へ移籍後、南関東で5戦4勝。ともに現役馬として活躍中だ。
そしてホレミンサイヤと同じ年に生まれたオリオンファームの生産馬は、ダイトウキョウが新馬戦でダノンプラチナを退け、3戦目のからまつ賞でショウナンアデラの2着するなど、のちの牡牝2歳チャンピオンと好勝負を披露。リアンドジュエリーもミモザ賞で2勝目を挙げるなど、中央競馬を舞台に躍進をつづけている。「この世代は特に優秀で、全頭勝ち上がりも夢じゃないですよ」と三浦場長。「今年は牧場にとっても10年目の節目ですから、中央の重賞やダートグレードをなんとか獲りたいですね」と今後の目標を掲げる。
「ホレミンサイヤは再び岩手に転厩し、今後は岩手所属馬として戦っていく予定だと聞いています。グランダム・ジャパンシリーズでもポイント上位につけましたので、残りの指定競走にも遠征して頑張ってほしいですね」と愛馬にエールを送る。今後、「ほれ、見んさいや!」という声が岩手からオリオンファームへ何度も届けられることに期待したい。