重賞ウィナーレポート

2014年11月03日 JBCLクラシック(中央交流) Jpn1

2014年11月03日 盛岡競馬場 曇 重 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サンビスタ

プロフィール

生年月日
2009年03月18日 05歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:18戦7勝
総収得賞金
376,257,000円
スズカマンボ
母 (母父)
ホワイトカーニバル  by  ミシル(USA)
馬主
(株) ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン
生産者
グランド牧場 (静内)
調教師
角居 勝彦
騎手
岩田 康誠
  • サンビスタの母ホワイトカーニバル
    サンビスタの母ホワイトカーニバル
  • スズカマンボの仔を受胎している
    スズカマンボの仔を受胎している
  • 牧場の厩舎、北海道・岩手に複数拠点を構える
    牧場の厩舎、北海道・岩手に複数拠点を構える
  • 勝利を祝福する垂れ幕(JR静内駅)
    勝利を祝福する垂れ幕(JR静内駅)

 オーロパーク・盛岡競馬場を開催地として行われた2014年地方競馬の祭典「JBC」。チャンピオンを決めるトリプルカードの先陣を切って組まれたJBCレディスクラシック(Jpn1)は、JRAのサンビスタが好位追走から鋭く抜け出し、1番人気ワイルドフラッパーを直線半ばでとらえ、最後はトロワボヌールの追撃を振り切って先頭ゴールを果たした。

 本馬の生産は新ひだか町静内のグランド牧場。1927年設立の牧場で、北海道と岩手県に複数の拠点を構える。過去には本馬の父で天皇賞馬のスズカマンボをはじめ、ダートを中心に6億円近い賞金を獲得したプリエミネンス、NARグランプリ・年度代表馬に輝いたラブミーチャンらを生産している。

 ダート牝馬チャンピオンになった瞬間を、同牧場の伊藤佳幸社長は現地で見届けていた。「優勝できて嬉しいです。前哨戦でワイルドフラッパーに敗れていましたから、その借りを返す走りを見せてくれましたね。仕掛けのタイミングが良く、岩田康誠騎手の好騎乗だったと思います。ただ、Jpn1でもあり、ゴールするまでは油断できないと思って見ていました。一戦ごとに力をつけていますし、コースレコードの走破時計からも、強い内容だったと思います。馬主の会員の皆さんも大変喜んでいました。」と、感想を語ってくれた。同レースには生産馬で地方ダート重賞を7勝しているピッチシフターも出走しており、こちらは掲示板まであと少しの7着に敗れたが、地方所属馬では上位の着順で駆け抜けた。

 同じ頃、故郷静内では、父を繋養するアロースタッド主任の本間一幸さんが、父のそばで歓喜の瞬間を見届けていた。「今回の勝利でスズカマンボの種牡馬価値が上がりますね。昨年のメイショウマンボに続き、今年はサンビスタも頑張ってくれて、芝・ダートでG1(Jpn1)馬が出たことは大きいです。サンビスタは父同様、成長力に長けた馬ですね。」と、父仔2代による大レース制覇に胸を高鳴らせた。

 本馬は父スズカマンボ、母ホワイトカーニバル、母の父ミシルという血統の5歳馬。4代母と3代母は不出走だが、祖母イエローブルームは同牧場所有馬として走り、4歳時に報知杯4歳牝馬特別(G2)で2着。母は2歳時にエーデルワイス賞(G3)2着、フェアリーS(G3)を制し、クラシックに駒を進めた。

 2009年3月18日、母の4番仔として生まれ、牧場時代は牝馬ながら雄大だったという。ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン(一口馬主クラブ)の募集馬となり、募集価格は1,470万円だった。同クラブの渋谷高弘さんは、「馬格のある大きなタイプで、牧場でじっくり乗り込んでいましたね。角居勝彦厩舎に入厩が決まってからは、角居調教師が牧場の方にサンビスタや若駒の育成について、色々とアドバイスをされていたことを思い出します。募集を始めてから徐々に口数は埋まり、最終的にはほぼ満口になりました。」と、振り返る。今回のレースには盛岡競馬場に30名以上の会員が応援に駆けつけており、抽選で一部の方は栄えある口取りに入ることが叶った。

 母ホワイトカーニバルは現在も繁殖生活を続けており、1歳に本馬の全弟(父スズカマンボ)がいて、お腹の中には再びスズカマンボの仔がいる。放牧地で対面すると、誘導馬のように真っ白な姿で、母の父でイタリア2000ギニー(G1)馬のミシルを彷彿とさせる。スタッフによると人間に対して従順で、14歳となる馬体は若々しく、来春に向けて健康状態は良好だという。同牧場ではすでに後継牝馬として2番仔のホワイトクルーザーが繁殖入りしており、2頭の仔を出産している。また、本馬の叔母スズカブルームも子作りに励み、4番仔スマートアヴァロン(牡2歳、父サウスヴィグラス)は今年JRA新馬勝ちを収めている。

 同郷の馬による配合でJpn1制覇というのは、容易に成し遂げられることではないだろう。グランド牧場血統の結晶、集大成というべき本馬の走りは、直に携わった馬やこだわりの血統からチャンスを狙う牧場・馬主へ、刺激を与える結果だったに違いない。また、クラブ馬の攻勢が著しい近年、決して高値ではない募集価格馬からサンビスタが現れたことは、全国あまたのクラブ馬主に夢を与える実例となる。

 次走予定のチャンピオンズC(G1)を勝てば、ジャパンカップダート(G1)の名称時代から数えて初の牝馬制覇の快挙となる。かつて生産馬プリエミネンスが第1回~第3回に出走し、4着、5着、4着と勝利まであと少しに迫った。あれから12年、伊藤社長は再び期待感を募らせている。

 「チャンピオンズC(G1)はもっとメンバーが強くなりますから、試金石となるレースですね。プリエミネンスぐらい上位を目指して、走ってくれたらと思っています。牧場としましては後継牝馬も揃っているので、この血統からまた活躍馬を出していきたいです。」