東京競馬場で行われた2歳重賞、京王杯2歳ステークス(G2)はハナを奪ったセカンドテーブルが直線でも突き放し、長い直線を逃げ切って重賞勝ちを収めた。

　本馬の生産は日高町豊田の川島良一さんの牧場。昭和44年創業の牧場で、繁殖牝馬6頭がいる。家族経営の牧場で今年から良一さんの息子・正広さんが後継している。過去には生産馬エーピーグリードがオープンのディセンバーSを制し、エプソムカップ(G3)3着の実績を残しているが、今回の勝利で牧場初となるJRA重賞制覇を飾った。

　レース当日、川島良一さんは家族3人で自宅のテレビの前にいた。人気はなかったものの、重賞制覇の夢を乗せて先頭をひた走る本馬へ祈りは膨らんでいた。

　「逃げる戦法だったので、いつつかまるか不安を感じながら見ていました。残り200mを過ぎても差が縮まらなかったので、勝利を予感しました。1着でゴールした時は本当に信じられない気持ちで、立ち上がって喜びました。」と、感想を伝えてくれた。良一さんは「いつかは」という思いはありながら、重賞タイトルまで手が届かずにいた。牧場は正広さんが継ぐ一方、ご自身の名で手がける生産馬は来年デビュー馬が最後。栄えある優勝馬生産者として名を刻んだことは誇らしかった。

　父トワイニング、母モカサンデー、母の父サンデーサイレンスという血統の本馬は、母の8番仔として同牧場で誕生した。交配は正広さんが考え、父トワイニング×母の父サンデーサイレンスの好相性を狙ってのものだった。1歳春からは毎日引き運動に取り組み、地道に競走馬としての基礎を築いた。牧場時代については、「気性の強い馬で、オン・オフがハッキリしていましたね。馬の群れでは一番上で、兄姉と比べても上回る素質を感じました。引き運動では首の使い方が良かったことを覚えています。1歳時に高い牧柵を飛び越えたことがあり、すぐに処置して擦り傷程度で済みました。その時は脚が腫れることもなくて、頑丈な馬だなと思いました。」と、正広さんは振り返る。

　庭先取引で山上和良オーナーと縁が結ばれ、1歳10月までを同牧場で過ごした。その後は浦河町のMAXトレーニングファームで更なる育成が施された。正広さんは何度か訪れ、馬の成長を見守っていた。正広さんは、「騎乗していた中脇さんは能力の片りんを感じていたようで、芝適性があり、走る馬だとおっしゃっていました。当初はダートを意識して配合していたので、意外だなと思いました。ここまで成長したのは、中脇さんのおかげでもあると思います。」と、感謝している。

　母モカサンデーは今年15歳で、2番仔から同牧場で繁殖生活を送っている。本馬の半弟となる1歳(父エーシンフォワード)はオータムセール上場馬となり、栗本博晴さんが410万4,000円(税込)で落札。同じく半弟となる当歳(父シニスターミニスター)は来年のセレクションセール上場を目標に置いている。正広さんは、「母は子育てが上手で、丈夫な馬ですね。サンデーサイレンス直仔で、クリミナルタイプの血も引く馬ですが、そのわりに気性は大人しいです。近年は受胎率が上がり、毎年出産しています。現在はメイショウボーラーの仔を受胎しています。1歳はセカンドテーブルより一回り大きく、動きは良いです。当歳はバランスのとれた体型で、気性は強いですね。ともに将来を楽しみにしています。」と、紹介する。

　夏の小倉で鮮やかな新馬勝ちを決めてから3戦目にして重賞制覇。暮れから来年に向けての大一番へ、力強く道を切り開いた。良一さんは今後について、「ケガせず無事に走ってきて欲しいと思います。G1出走となれば牧場生産馬として初めてのことになります。出走できれば、チャンスを作ってくれると期待しています。」と、笑顔を見せる。自在性、意外性のある馬として、本番では怖い存在となりそうだ。G2勝ちの賞金を加算して、頂上アタックへの席は確保済み。弾むようなスピードに磨きをかけて、最高の舞台に駆け上がる日が待ち遠しい。