2014年10月05日 スプリンターズS G1
優勝馬:スノードラゴン
プロフィール
- 生年月日
- 2008年04月06日 06歳
- 性別/毛色
- 牡/芦毛
- 戦績
- 国内:35戦8勝
- 総収得賞金
- 387,803,000円
- 馬主
- 岡田 牧雄
- 生産者
- イワミ牧場 (新冠)
- 調教師
- 高木 登
- 騎手
- 大野 拓弥
12年ぶりに新潟競馬場で施行された短距離決戦・スプリンターズステークス(G1)はスノードラゴンが後方待機から豪快に伸び、初G1制覇を果たした。
本馬の生産は新冠町明和のイワミ牧場。約50年前から家族経営で営んでいる牧場で、繁殖牝馬は9頭いる。現在は3代目の岩見昌弘さんが後継者となり、近年は分場を築いて育成も進めている。過去には兵庫ダービー馬カラテチョップや、フェアリーS(G3)4着のカメリアローズらを生産しているが、JRA重賞勝ちは今回が初めてだった。
レース翌日にHBAオータムセールが控えていたため、牧場の皆さんはご自宅でその走りを見守っていた。G1ファンファーレが鳴り、レースはスタート。それから68.8秒後、真っ先に飛び込んできた馬は、まぎれもなくこの牧場で育ったスノードラゴンの真っ白な姿だった。
「まだ生産馬で重賞勝ちがなかったので、今回いきなりG1で驚いています。春の高松宮記念(G1)で2着に頑張りましたし、あまり人気はありませんでしたが、掲示板ぐらいにはと期待していました。大外枠を引きましたが、馬群でゴチャつくよりは良いかなとプラスに考えていました。ゲートを出てからすごく良い走りをしていたので、道中はもしかしたらと思っていました。直線はさすがに声が出ましたね(苦笑)。何を言っているのかわからないぐらいでした。内からも強い馬が伸びていたので、最後はどうかなと思いましたが、よく交わしてくれました。翌日、せり会場で多くの方から祝福を受け、実感がわいたところです。この馬に携わった全ての皆さんのおかげだと思います。」と、岩見昌弘さんはしみじみと心境を語ってくれた。レースが終わると小竹国昭新冠町長や近隣の牧場関係者が駆けつけ、万歳で勝利の喜びを分かち合った。
本馬は2008年、母マイネカプリースの3番仔として誕生した。アドマイヤコジーンとの配合は、岩見さんが母のスピードを更に伸ばすことを考えたことが理由だった。生まれた仔馬は父に似た芦毛で、昼夜放牧をしながら1歳秋まで順調に育ったという。牧場時代については、「筋肉量が豊富な馬でしたね。当歳からわりと白くて、毛色や体型は父のイメージでした。また、少し我の強い面があり、そうした特徴は母の遺伝でした。写真を撮る際に苦労したことを覚えています。」と、振り返る。
桜花賞(G1)5着の実績を持つ母マイネカプリースは現役時代3勝。岩見さんが高校卒業後、マイネカプリースが過ごしたビッグレッドファームで7年間修行を積んでいた縁もあり、同牧場で繁殖生活を送ることになった。母系をさかのぼるとサッカーボーイやステイゴールド、タマモホットプレイらが繁栄するロイヤルサッシュの血統にたどる。本馬の他にも2番仔オルレアンノオトメがJRAで3勝、6番仔ライトオブホープ(現役)もJRAで勝利をあげている。
今年16歳となる母自身も健在で、1歳は父ストーミングホームの牡馬、当歳は父アイルハヴアナザーの牝馬が生まれている。春は再びアイルハヴアナザーを交配し、受胎しているという。岩見さんは、「マイネカプリースは普段大人しくて従順な馬ですが、時折気に入らないことがあると反抗するので注意しています。現在は離乳を終えて、来年の出産に備えています。当歳の仔は母似で、スピードがありそうです。また、娘のアルマネーレーイス(牝5歳、父ジャングルポケット)が牧場に里帰りして、後継牝馬になっています。」と、紹介する。G1馬のファミリーとして、今後は半弟・半妹たちの動向も注目を集めていくだろう。
6歳秋、35戦目で掴んだ栄光。春のG1では2着、そして秋のG1で1着。国内No.1スプリンターの座にふさわしい実績を築き上げた。次走予定は香港国際スプリント(G1)とのことで、彼の存在は世界のホースマンにも知れ渡ろうとしている。
「今後も無事に走って欲しいと思います。香港に出走となれば、家族の誰かが応援に行くことになるでしょう。パスポートをとらないといけませんね(笑)。実家に帰ってきて最初の年に生まれたのがスノードラゴンでした。2着、3着も多かったのですが、ついにG1を勝ってくれました。近走は本当にレベルの高い馬たちと戦っているので、時々本当に生産馬かなと思うほどです。自分の想像を超えた馬ですね。今回の結果は色々な人や馬の出会いのおかげだと思います。特に、ビッグレッドファームでは沢山のことを学ばせていただき、本当に感謝しています。強い馬づくりのほかにも、施設を作るための重機や土木関連のこと、接客…色々学びました。騎乗スタッフとして、一流の競走馬の背中を体感できたことも大きかったです。実家に帰ってからは一貫した生産・育成を目指して、分場づくりに協力してくれた家族にも感謝しています。またスノードラゴンのように、丈夫で長く活躍できる馬を送り出していきたいです。」