2014年06月04日 東京ダービー(DW2014)
優勝馬:ハッピースプリント
プロフィール
- 生年月日
- 2011年03月06日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:10戦8勝
- 総収得賞金
- 272,325,000円
- 父
- アッミラーレ
- 母 (母父)
- マーゴーン(USA) by Dayjur(USA)
- 馬主
- (有) 辻牧場
- 生産者
- 辻 牧場 (浦河)
- 調教師
- 森下 淳平
- 騎手
- 吉原 寛人
『ダービーウイーク2014』の第4戦は、南関東クラシック第2弾でもある大一番「東京ダービー」。戦前からファン、関係者の視線は、昨年のNARグランプリ年度代表馬であり、一冠目の羽田盃も危なげないレース運びで制したハッピースプリントへ集中的に注がれていた。その重圧に臆することなく、好位追走から他馬を敢然と突き放したハッピースプリント。まさに“次元の違う”という言葉がピッタリとはまるような完勝劇だった。
ハッピースプリントの生まれ故郷は、浦河町の辻牧場。1910(明治43)年創業という歴史ある牧場で、活躍馬の名前を挙げるときりがないほど。1962年の菊花賞馬ヒロキミ、1966年の皐月賞馬ニホンピローエース、1971年の菊花賞馬ニホンピロムーテー、1977年の桜花賞馬インターグロリアなど、昭和の時代のクラシックホースを多数生産。平成に入ってからも、マルチマックス、インターライナー、アドマイヤホープ、アドマイヤフジ、ヒラボクロイヤル、アドマイヤコスモス、ヒラボクキングなど、途切れることなく重賞馬を送り出しつづけている。そして今年の日本ダービー(G1)にも、アドマイヤデウス、スズカデヴィアスと2頭の生産馬が出走。それぞれ7着、9着と中央のダービー制覇には手が届かなかったが、ハッピースプリントが3日後、しっかりと辻牧場へダービーの勲章を届けてくれた。
「ダービーで単勝1.1倍って、ディープインパクトのようでしたね。よくその期待に応えてくれました。先頭でゴールした時は、本当に嬉しかったです。東京ダービーに向けて良い状態に仕上げてくれた森下淳平厩舎の頑張りと、今年からコンビを組んでいる吉原寛人騎手の好騎乗が光りました」と愛馬&スタッフを讃えるのは、ハッピースプリントの生産者であり、オーナーでもある辻牧場の辻助さん。門別でのデビュー戦から熱心に競馬場へ足を運び、その成長を見守りつづけてきた。
「馬格に恵まれ、幼少期から基礎体力に富んだ馬でした。気性も扱いやすかったです」と、ハッピースプリントが牧場で過ごした時期を振り返る辻さん。母マーゴーンの11番仔として生まれてきたが、スタッフも「これまでの兄姉とは違う」と早くから手応えを感じていたそうだ。以前、同牧場の辻芳明さんも、「マーゴーンはもともと期待していた繁殖牝馬で、トップクラスの種牡馬を交配してきました。思うような結果を出せずにいましたが、ようやく大物を出せましたね」と話していたように、BCディスタフ(G1)の勝ち馬ダンススマートリーや、牡馬相手にダート一線級で活躍した牝馬ラヴェリータなどがいる優秀な牝系出身のマーゴーンには、ブライアンズタイム、タニノギムレット、シンボリクリスエス、ネオユニヴァースといった実績ある種牡馬が配合されてきた。しかし、ようやく誕生した大物は、それまで目立った種牡馬成績を残せていなかったアッミラーレの産駒だというのだから、血統は奥が深い。
2004年にスタッドインしたアッミラーレは、今年で種牡馬生活11年目。これまで20頭~50頭の間を行ったり来たりしていた年間の種付数は、今年一気に100頭を超えてきそうだ。また、強い馬づくりを目指して新たに坂路調教コースを作ったホッカイドウ競馬の関係者も、早速その効果が実証されたと意気が上がっている。それもこれも、すべてハッピースプリントの活躍がもたらした効果といえるだろう。
あちこちの牧場へ取材にまわってジャパンダートダービー(Jpn1)の話題になると、「ハッピースプリントは強い!」と皆が口を揃えて答える。マスコミもファンも関係者も、その先にさらに大きな夢を見たくなるほどの逸材だが、辻さんは「これだけの結果を出す馬を生産できて、光栄に思っています。牧場で働くスタッフにとっては、これ以上ない励みです。今後もとにかく無事に走ってきて欲しいです」と謙虚に話し、その表情からは「まずは目の前の一戦を大切に」という空気がひしひしと感じられる。トーシンブリザード以来13年ぶり、史上8頭目の南関東クラシック三冠馬へ。マグニフィカ以来4年ぶり、史上5頭目の地方所属馬ジャパンダートダービー(Jpn1)制覇へ。ハッピースプリントがさらにステップアップするための舞台は、すべて整った。