2014年06月22日 函館スプリントS G3
優勝馬:ガルボ
プロフィール
- 生年月日
- 2007年05月05日 07歳
- 性別/毛色
- 牡/青毛
- 戦績
- 国内:40戦5勝
- 総収得賞金
- 344,321,000円
- 母 (母父)
- ヤマトダマシイ by ジェネラス(IRE)
- 馬主
- 石川 一義
- 生産者
- 高村 伸一 (様似)
- 調教師
- 清水 英克
- 騎手
- 津村 明秀
サマースプリントシリーズの第1戦「函館スプリントステークス(G3)」は、中団を進んだガルボが、メンバー中、最も重い58キロをものともせず力強く差し切った。2年2か月ぶりに挙げた勝利は、重賞4勝目となった。
ガルボのふるさとは、様似町の高村伸一牧場。現在は5頭の母馬を繁養し、伸一さんと洋子さんの夫婦2人だけで牧場経営を行っている。花壇にはきれいに花が咲き、厩舎内外も整備され、細かなところにまで気配りがされている牧場という印象だ。ガルボは、ここで2歳の1月頃まで過ごしていたという。
伸一さん・洋子さん夫妻は、「その時」を親戚の結婚式会場で迎えた。「今日は結婚式だから」とリアルタイムでレースを見るつもりはなかったが、会場にいた関係者がタブレット端末で見せてくれたという。さすがに大きな声では喜べなかったが、会場にいた軽種馬関係者からお祝いの言葉をたくさんかけて頂いた。
そもそも、「今回ほど、無欲なことはなかった」と同牧場の洋子さんは言う。レースの前は「7歳だし、最高に欲を出して、ファンのためにせめて掲示板に載ってくれたらいいなぁ」という期待だったそうだが、4コーナーをまわって前があいたのを見て「これなら3着あるかも!」と思ったそうだ。そんな生産者の想いを超え、同馬は8番人気という評価ながら見事優勝。ガルボが慶事に花を添え、高村夫妻にとって二重におめでたい日となった。
家に戻るとお祝いの品々が寄せられており、集まってくれた近所の人たちと祝宴をあげた。また、この日は実家を巣立った高村夫妻のお子さんたちも結婚式で集合していたため、皆でお祝いをすることができ嬉しかったそうだ。
語感の良いかわいらしい名前と、レースで懸命に走る同馬にはファンが多い。洋子さんは「一生懸命さが伝わる馬だと言われることが、どんな言葉より嬉しい」と顔をほころばせる。同馬に人生を照らし合わせる人がいて、そういう存在だということが、何より嬉しいそうだ。
生産者であると同時に、町議会議員でもあり、また農業で働く女性を支援する会「馬女ネット」、「きたひとネット」等でも代表を務める高村洋子さんは、「動かなくては始まらないから『頑張って』でしゃばるようにしている」と多方面にわたる自身の活動をふりかえる。その視点が捉えるものは、馬産の歴史の中でこれまで解決してこなかった問題点や女性ならではの発想など、馬産の将来における重要な課題ばかりだ。自分の牧場の話ではなく、軽種馬産業全体が良くなることを常に考えている、強い気持ちの持ち主である。
そんな洋子さんたちが、競走馬を育てる上で大事にしていることは、馬の教育だという。丈夫にする、善悪をつける、人の言うことが聞ける。購買者に喜んでもらうため、「目指すところに近づけるよう、労力を惜しまない」と話す。実際、セレクションセールに上場を予定しているエンパイアメーカー産駒も、コンサイナーに預けることなく、同牧場では全て夫妻が手がけているという。
ガルボという馬名は、イタリア語で「礼儀正しさ・優しさ」を意味する。高村夫妻の背中を見て、その名前そのままに育ったガルボのように、後に続く生産馬も素晴らしい活躍を見せてくれるのではないだろうか。