2014年06月01日 九州ダービー栄城賞(DW2014)
優勝馬:オールラウンド
プロフィール
- 生年月日
- 2011年04月30日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:20戦4勝
- 総収得賞金
- 8,226,000円
- 母 (母父)
- エンジェルルック by メジロマックイーン
- 馬主
- 山田 康文
- 生産者
- 山田 祐三 (新冠)
- 調教師
- 別府 真司
- 騎手
- 田中 純
『ダービーウイーク2014』の開幕を飾ったのは、佐賀競馬場の「九州ダービー栄城賞」。東京競馬場で日本ダービーが行われた直後、その興奮冷めやらぬ中で華々しくゲートが開いた。そして、栄冠のゴールをまっ先に駆け抜けたのは、高知から遠征してきた7番人気のオールラウンド。スタートで大きく出遅れたが落ち着いて後方を進み、4コーナーで勢いをつけてまくり上げ、直線で大外から他馬をごぼう抜きにするという派手なパフォーマンスで“ダービー馬”の称号を手中にした。
オールラウンドの生産者は、新冠町高江の山田祐三さん。1960(昭和35)年に牧場を創業し、1989年のアルゼンチン共和国杯(G2)で2着したローランシンガーや、1999年の京王杯3歳S(G2)で3着したスギノエクセルといった活躍馬を生産。また地方競馬でも、1998年のトゥインクルレディ賞優勝馬クリオネーや、2006年にトゥインクルレディ賞とTCKディスタフを連勝したアウスレーゼなどを送り出している。現在の繁殖牝馬は2頭で、ご夫婦で細々と生産をつづけている牧場だ。
「いやぁ~、感動しましたね。一気の距離延長、初の遠征競馬と不安要素も多い中、素晴らしい末脚を発揮してくれました。東京にいる息子からも連絡が来て、いっしょに喜び合いました。パーソナルラッシュ産駒らしく、距離の融通が利くのでしょう。馬名の通り、まさにオールラウンドな活躍ぶりですね」と愛馬の豪快なレースに感心しきりなのは、生産者の山田祐三さん、みか子さんご夫妻。いくつもの口取り写真が飾られている居間で、取材に応じてくれた。
「丈夫な体質で、当歳時から馬体は良かったですね。1歳になってから気性が強くなり始めて、なかなか言うことを聞いてくれないこともありました。そのあたりは母に似たのだと思います」と、オールラウンドが牧場で過ごした時期を振り返る。病気やケガもなく、健やかに育ったそうだ。
オールラウンドの母エンジェルルックは、かつて新冠町長を務めた岡裕さんの生産馬。縁あって山田さんの牧場で繁殖入りすることになったが、3代母クリアアンバーから流れる実績ある母系に、ノーザンテースト、メジロマックイーンと底力のある血を重ねてきた血統背景を見て、大きな可能性を感じたと山田さんは言う。「母のエンジェルルックは、血統的に繁殖として期待していたのですが、とにかく気性が強い馬で、飼い葉を食べる時なんかは仔を寄せ付けないほどでした。腰に不安があった一方、首を使うとかなりパワーがあって、馬を引く時はいつも神経を使っていましたね」と、苦労したことを明かしてくれた。
地元の競走馬商社である(株)優駿の藤本一真さんからのアドバイスを受け、パーソナルラッシュを交配して4番仔として誕生したのがオールラウンド。山田さんのオーナーブリーディングホースとしてホッカイドウ競馬からデビューしたが、テンションの高さが災いし、レベルの高い門別の2歳戦ではまったく歯が立たなかった。「パドックからカリカリしてしまい、いつもイレ込んでいました。携わった皆さんが何とかしようと頑張ってくれたのですが、残念ながら結果は出ませんでした」と当時を振り返る。
オールラウンドが門別で4戦を終えた2歳夏、山田さんは自己所有継続を諦める決断をする。そして新オーナーの元、オールラウンドは高知競馬へと移籍していった。「新しいオーナーが無事に見つかり、当時はホッとしました。新天地で馬が本来の力を発揮できるようになり、バトンを受け取った別府真司厩舎の手腕には敬服しますね。そして何より、新オーナーに喜んでいただけているのが本当に嬉しいです」と話す山田さん。愛馬を手放した悔しさは消え、今は生産者としてその活躍を心から喜んでいる。
「地方とはいえ、重賞へは出走するだけでも大変なことです。ましてやジャパンダートダービー(Jpn1)に出られるなんて夢のよう。ぜひとも応援に行きたいですね。オーナーやファンの皆さんに、夢を与えるような走りを見せて欲しいです。私たちもオールランドの頑張りを励みにして、生産をつづけていきたいと思います」と愛馬にエールを送る山田ご夫妻。ジャパンダートダービー(Jpn1)では、同じホッカイドウ競馬出身のハッピースプリントと剣を交えることになる。2歳時に未勝利だった馬と、2歳馬の頂点に立った馬が、Jpn1の舞台でダービー馬同士として顔を合わせる。いかにも夢のある話ではないか。