重賞ウィナーレポート

2013年12月21日 R-NIKKEI杯2歳S G3

2013年12月21日 阪神競馬場 曇 稍重 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ワンアンドオンリー

プロフィール

生年月日
2011年02月23日 02歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:6戦2勝
総収得賞金
372,681,000円
ハーツクライ
母 (母父)
ヴァーチュ  by  タイキシャトル(USA)
馬主
(株) ノースヒルズ
生産者
株式会社 ノースヒルズ (新冠)
調教師
橋口 弘次郎
騎手
C.ルメール
  • 広々とした牧場の放牧地
    広々とした牧場の放牧地
  • 牧場の厩舎
    牧場の厩舎
  • 新冠町美宇地区に牧場を構える
    新冠町美宇地区に牧場を構える

 クラシックへつながる登竜門、ラジオNIKKEI杯2歳S(G3)はワンアンドオンリーが直線で鋭く抜け出し、重賞初制覇を飾った。

 本馬の生産は新冠町のノースヒルズ。昨年は生産馬キズナが日本ダービー(G1)と、仏国・ニエル賞(G2)を制したのをはじめ、古馬クラレント、ヒットザターゲット、ブライトラインが重賞勝ちを上積みし、育成馬アースソニック、ベルカントが重賞馬の仲間入りを果たした。2011年生まれの本馬の勝利により、同牧場は8世代連続の生産馬重賞Vを記録した。

 「評判馬や良血馬が揃っていた中、優勝することができて嬉しいです。人気こそありませんでしたが、重賞初挑戦の前走は勝ち馬から0.4秒差でしたし、上位争いできるのではと期待していました。レースは中団でしっかり折り合いがつき、最内枠から外に持ち出しての差し切り。内容的にも立派だったと思います。」と、喜びを語ってくれたのは、同牧場ゼネラルマネージャーの福田洋志さん。同レースは生産馬サブジェクト、育成馬メガスターダムでも勝利しており、とりわけ相性が良い。キズナも前年の同レースをステップにしており、出世コースに再び生産馬が名乗りを上げた。

 クラシックホースのノーリーズン、シンザン記念(G3)勝ち馬グレイトジャーニーと同じファミリーの本馬は、父ハーツクライ、母ヴァーチュという血統。1歳秋まで同牧場で過ごし、その後は同牧場グループの大山ヒルズ(鳥取県)で育成過程を経た。福田さんは、「母馬の体型や脚元の特徴を考慮し、ハーツクライを交配しました。病気やケガもなく、当歳時から順調に育ち、早期デビューにつながりました。スラッとした馬体からは、芝の中長距離が向きそうな印象を持っていました。賢い馬で、メンタル面もしっかり。橋口弘次郎調教師は当歳時から高く評価してくださり、ハーツクライとよく似ているとおっしゃっていました。」と、幼少期を振り返る。

 同牧場・繁殖スタッフの新家毅さんは離乳後~1歳秋まで携わっていた一人。間近で接していた感触から、将来の活躍を期待していた。「日々の集放牧時に、この馬はちょっと違うなと感じたことが多々ありました。人間をよく信頼していて、行きたがったり、集中力を欠いたりせず、いつも従順に歩いていました。引き手綱を握っていて心地良かったのを覚えています。」と、当時の記憶をたどる。新家さんの言葉を裏付けるように、長年、同牧場で栄養コンサルティングをしているスティーブ・ジャクソンさんも、生産馬チェックの中で本馬の歩きの良さを強調する記述を残していた。

 鮮やかな差し切りは東の大舞台でも繰り出されるか。混沌としている2014年・牡馬クラシック世代において、主役の座も十分狙える逸材だろう。あの決め手がどれほど進化するか、多くの競馬ファンが楽しみにしている。

 「今年のクラシックが楽しみになりました。昨年のキズナに続き、牧場ゆかりの血統からG1レースに出走できる馬が現れてくれて嬉しいです。祖母、母と手がけているので、思い入れも募ります。父ハーツクライ、近親ノーリーズンの血統から、距離はある程度持つと思います。」と、福田さんは展望する。レース後、C.ルメール騎手からは「来年のクラシック、ダービー(G1)などを勝てる力のある馬」というコメントが伝えられ、レーティングは前年の勝ち馬と同じ109がついた。世代の頂点を目指し、その足取りはますます頼もしい。一つの牧場が毎年のように大物を出すことは難しいことだけれども、次のランナーは確かに走り始めた。