重賞ウィナーレポート

2013年11月09日 ファンタジーS G3

2013年11月09日 京都競馬場 晴 良 芝 1400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ベルカント

プロフィール

生年月日
2011年03月02日 02歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
260,703,000円
サクラバクシンオー
母 (母父)
セレブラール  by  ボストンハーバー(USA)
馬主
(株) ノースヒルズ
生産者
土居 忠吉 (三石)
調教師
角田 晃一
騎手
武 豊
  • 母セレブラール
    母セレブラール
  • デュランダルを受胎している
    デュランダルを受胎している
  • 牧場は三石の富沢地区にある
    牧場は三石の富沢地区にある
  • 牧場事務所の看板
    牧場事務所の看板

 京都競馬場で行われた2歳重賞、ファンタジーS(G3)はベルカントが軽快に逃げ切り、3戦目にして颯爽と重賞タイトルを獲得した。

 本馬の生産は新ひだか町三石の土居忠吉さん。家族経営の牧場で、過去には2007年のダイヤモンドS(Jpn3)3着のアドバンテージや、今年の北九州記念(G3)2着馬ニンジャらを生産している。ファンタジーS(G3)の生産馬出走は一昨年のミラクルピッチ以来のことだった。

 生産者の土居忠吉さんの後継者、土居正芳さんはレース当日、京都競馬場で声援を送っていた。「前走の小倉2歳S(G3)も現地で応援していました。その時は惜しい2着だったので、今回も無事と、上位争いを期待していました。最後の直線は声が出ましたね。スピードに長けた馬なので、距離延長がどうかなと思いましたが、よくこなしてくれました。」と、生産馬による初のJRA重賞制覇の興奮をよみがえらせた。

 ターフビジョンに赤い「確定」の文字が灯る頃、栄えある表彰台に向かう道すがら、正芳さんは本馬の馬主・前田幸治さんと固い握手を交わした。以前、ホースマンとしての一歩を踏み出した正芳さんは、新冠町のノースヒルズに勤めていて、牧場の代表である前田幸治さんとは長い関係を築いている。そうした縁で本馬も誕生し、水色と赤の勝負服でデビューに至った。正芳さんは改めて喜びをかみしめる。「お世話になっているオーナーの馬で、結果を出せて良かったです。」

 今回の本馬の馬体重は468kg。現役時代の母と変わらない馬体重で、重賞Vを果たした。テン良し、中良し、終い良しの競馬で、2歳牝馬ながら優れた身体能力を持つ。幼少期については、「初仔にしては大きく、骨量が十分にありました。やんちゃなところは母譲りでしたけど、人の言うことには従い、手のかからない気性でした。角田調教師からは“しっかりした馬ですね”と、早くから高い評価を受けていました。」と、正芳さんは振り返る。離乳までを同牧場で過ごし、その後は新冠町のノースヒルズ、鳥取県の大山ヒルズで育成が施された。

 ボストンハーバー肌の母セレブラールも同牧場生産馬で、現役時代は芝ダートの短距離で3勝をマークした。本馬を管理する角田晃一調教師も騎手時代に跨っている。5歳秋まで走って繁殖牝馬として里帰りし、初年度から自身の持ち味であるスピードを意識した配合を狙っている。

 「セレブラールは少し気の強い面がありますが、子育てはしっかりしています。馬体は比較的大きい方ですね。健康状態は良好で、現在はデュランダルを受胎しています。」と、正芳さんは紹介する。年齢的には9歳と若く、これからの産駒にも大物が飛び出す可能性十分だ。

 本馬の次走予定は朝日杯フューチュリティS(G1)と報じられている。同牧場生産馬ニンジャが、一昨年に出走したレースだ。後ろから鋭く忍び寄るニンジャとは対照的に、序盤から快調に飛ばし、そのままトップ集団でレースを盛り上げる本馬。戦法の異なる両馬が、将来の大舞台で対決する日もあり得るだろう。正芳さんは、「今後も無事に走ってきて欲しいと思います。無事が一番ですね。次走、G1出走となれば、また現地まで応援に行こうと思います。」と、その動向を熱く、温かく見守る。凱旋門賞(G1)、ジャパンカップ(G1)と、牡馬を打ち負かす強い牝馬が目立つ近年。その壁は果たして厚いのか。常識を打ち破る走りを、本馬も見せてくれるかもしれない。雌雄を決する一戦を前に、胸高鳴る日がめくられていく。