重賞ウィナーレポート

2013年03月24日 マーチS G3

2013年03月24日 中山競馬場 曇 良 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:グランドシチー

プロフィール

生年月日
2007年04月19日 06歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:24戦8勝
総収得賞金
266,082,000円
キングカメハメハ
母 (母父)
レディクラシック  by  ブライアンズタイム(USA)
馬主
(株) 友駿ホースクラブ
生産者
幌村牧場 (三石)
調教師
相沢 郁
騎手
津村 明秀
  • 母レディクラシックと祐司さんご夫妻
    母レディクラシックと祐司さんご夫妻
  • 当歳は父ゴールドアリュールの牝馬
    当歳は父ゴールドアリュールの牝馬
  • 幌村牧場のみなさん(左から2代目定一さん、キクエさん、祐司さん、ひとみさん)
    幌村牧場のみなさん(左から2代目定一さん、キクエさん、祐司さん、ひとみさん)
  • 玄関にはラジオ日本賞優勝時のレイが飾られていた
    玄関にはラジオ日本賞優勝時のレイが飾られていた
  • 牧場看板
    牧場看板

 第20回マーチS(G3)は、ハンデ戦らしい、最後まで息をのむ展開だった。直線抜け出し、後続との差をグングン広げるバーディバーディの勝利かと思いきや、外から2番人気のグランドシチーが一完歩ごとに差を詰め、ゴール寸前で捉えて重賞初勝利を飾った。

 グランドシチーを生産したのは、新ひだか町三石の幌村牧場。初代幌村春太郎さんが牧場を開いてから56年という長い歴史を持つ。現在は3代目の祐司さんとひとみ夫人が中心となり、9頭の繁殖牝馬を繋養している。

 中央競馬の重賞制覇は1974年、函館3歳Sを勝ったホシバージまで遡らなくてはならず、グランドシチーの活躍は牧場に大きな喜びをもたらしている。「お産時期でもありますし、レースは家で見ていました」と言う祐司さん。「とにかくハラハラドキドキでしたよ。直線で2着の馬にだいぶ離されてましたからね。届くか届かないかでハラハラ、写真判定の間はもう祈るような気持ちでした。普段競馬を見ていて写真判定になっても、大抵どっちの馬が有利かわかるものですが、生産馬になると冷静な判断ができないものですね」と笑った。

 余韻に浸る間もなく次々にかかってくる祝福の電話対応、祝勝会の準備に追われ、慌ただしくも心地よい時間が過ぎて行った。当日は同町内生産のロードカナロアが高松宮記念(G1)を優勝し、町が最高に盛り上がった1日だった。「祝勝会では近隣の牧場仲間と深夜まで飲み明かし、レースから日が経っても毎日のようにお客さんが祝福に訪れてくれます。重賞を勝つって、本当に嬉しいことですよね」と祐司さんは満面の笑みを浮かべた。

 グランドシチーの母、レディクラシックは祐司さんが牧場に足を運び、一目で気に入って導入した期待の繁殖牝馬だった。

 「最初は友人に付き添って見学に行っただけで、繁殖を買うつもりはなかったんです。そこで馬格も良く、品のある雰囲気に一目惚れしてしまって…即決でした」こうしてシンボリルドルフをお腹に宿したレディクラシックは幌村牧場の一員となった。そして、連続して牡馬を出産したレディクラシックにキングカメハメハを配合する。「男腹と踏んでブライアンズタイム×ミスタープロスペクター系のニックスを狙いました。体格は標準で、目立つタイプではなかったけど良い感じの当歳だったと記憶しています。丁度この馬が生まれる前年から親子での夜間放牧を始めたんですが、へこたれることなく丈夫に成長していきました」と振り返った。

 グランドシチーが1歳秋を迎え、牧場から育成牧場へ旅立つ頃、夜間放牧の結果が出始めていた。1歳年上の生産馬、オオトリオウジャが新馬戦、500万下の特別レースを連勝、他の馬たちも続々とデビューしていた。「結果的にどの馬も1勝以上を挙げ、上のクラスまで勝ち上がる馬も出て来ました。1世代目がこの結果でしたから、当然次のグランドシチーたちの世代にも期待しました。なかなか上手くは行かないけれど、重賞勝ち馬が出せたのでやって良かったと思います」。

 これまで4度重賞に挑戦し、届きそうで届かなかった勝利の栄冠。トップハンデを背負いながらも直線で見せたあの末脚は、ダート界の新星誕生に相応しい強烈な印象を与えた。

 「友駿ホースクラブさんとは20年来お付き合いさせてもらってるので、このような形で結果が残せて本当に嬉しい。これからも皆さんの期待に応えられるよう、頑張って欲しいですね」と祐司さんは故郷からエールを送った。