2013年01月27日 根岸S G3
優勝馬:メイショウマシュウ
プロフィール
- 生年月日
- 2008年04月01日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:12戦6勝
- 総収得賞金
- 116,978,000円
- 馬主
- 松本 好雄
- 生産者
- 大島牧場 (荻伏)
- 調教師
- 沖 芳夫
- 騎手
- 藤岡 佑介
フェブラリーS(G1)に向けての前哨戦・根岸S(G3)は5歳牡馬メイショウマシュウが鋭い末脚を発揮し、4角最後方の15番手から突き抜けた。その破壊力は凄まじく、G1馬テスタマッタ、1番人気の上がり馬ガンジスらを容赦なく交わし去った。
本馬の生産は昭和27年創業の大島牧場(浦河町東栄)。1974年の日本ダービー馬・コーネルランサーの故郷で、平成に入ってからは電光石火のスピードを武器としたカルストンライトオ、ダート重賞を3勝したマチカネワラウカド、今年の南関東牝馬クラシック候補のデイジーギャルらを送り出している。現在、繁殖牝馬は14頭。
同牧場の小島郁雄社長にレースの感想を伺うと、「重賞初挑戦でしたし、まずは掲示板に載れればと思って応援していました。後方で脚をためて、よく追い込んできましたね。テレビのアングルの関係で、ゴールした瞬間は勝ったかどうかわかりませんでしたが、スローリプレイを見て確信し、やったなぁという気持ちでした。藤岡佑介騎手、沖芳夫厩舎の皆さんに感謝です。オーナーの松本会長には昔からお世話になっていまして、会長に喜んでもらえたことも嬉しかったです。」と、笑顔で語った。
牧場時代の本馬は、少し体質に弱いところがあったという。“じっくり、マイペースで”という育て方が、幼少期から徹底された。「もともと大人しい気性の馬でしたが、夜間放牧や輸送経験を積み重ね、精神的にたくましくなりました。」と、振り返る。1歳秋からは隣接するシーサイドファームで初期馴致をし、2歳春から愛知ステーブルに移って鍛錬が積まれた。
「今回で12戦目ですから、年齢にしてはあまり数を使っていないんですよね。最初に管理した高橋隆調教師、受け継いだ沖調教師がこの馬の体質を考慮しながら、大事に使ってきたことが重賞制覇につながったと思います。」と、勝因を解き明かす。
本馬の母オオシマパンジー、祖母オオシマダリアは同牧場生産馬。3代母オオシマスズランは先代の小島哲雄社長が所有し、京都4歳特別など7勝を挙げた。オオシマスズランは大島牧場の柱となる繁殖牝馬となり、孫世代からカルストンライトオが飛び出した。ちょうど、そのカルストンライトオと戦っていた馬が、本馬の父であるアドマイヤマックスだ。
「現役時代、カルストンライトオの出走時にアドマイヤマックスを間近で見ていて、スピードがあって良い馬だなぁと思っていました。種牡馬になってから交配を試みて、そのうちの一頭がメイショウマシュウで、もう一頭、ナガラオリオンという生産馬もオープンまで出世して、現役です。」と、紹介する。ちなみに両馬は昨年11月の渡月橋S(1600万下)で対決し、ワン・ツーフィニッシュを決めたこともある。ともにダートの短距離~マイルを得意としていることから、重賞で顔合わせする日も遠くないだろう。
本馬の半弟にあたるワンダーヴィーヴァ(牡3歳、父スタチューオブリバティ)は550kgを超す巨漢馬で、昨年11月の新馬戦を快勝している。2歳には半弟(牡、父スズカマンボ)、1歳には半妹(牝、父プリサイスエンド)がいる。
「ワンダーヴィーヴァは当歳時から大きい馬でしたね。2歳の半弟はメイショウマシュウと体型や気性が似ています。同じ沖厩舎、松本オーナーの勝負服です。1歳の半妹は穏やかな性格で、血統的にはダートでスピードを発揮しそうです。」と、小島社長は紹介する。今年は父メイショウサムソンの半弟・半妹が誕生予定だ。
頼もしい繁殖実績とは対照的に、母オオシマパンジーの現役時代は3戦0勝と、芳しくなかった。生まれながらに爪が弱く、満足に走れなかったことが起因している。それでも、小島社長はその秘めたる能力に、インスピレーションを感じていた。
「デビュー戦の内容が良かったんです。結果は4着でしたけど、後方から鋭く伸びました。このレースから能力を見込んで、繁殖牝馬にしようと判断しました。気性はきつく、放牧地ではボス格ですが、人間に対しては従順です。出産も種付けも問題なく、オオシマの牝系を継承する繁殖牝馬として期待しています。」_小島社長の英断と、一戦の重みを感じるエピソードだ。
牧場の応接間には沢山の口取り写真と、優勝レイが掲げられている。ダービーの口取り写真には、大学生の頃の小島社長の姿。ひと際存在感を放つ白黒写真だ。近くにまた一枚、思い出のシーンが鮮やかに加わる。小島社長は「レース後に故障が判明し、秋まで戦列を離れることになりましたが、これが良い休養になるのではないでしょうか。末脚を身上としているので、東京競馬場のような広いコースは向いていると思います。来年こそはフェブラリーS(G1)に駒を進めて欲しいですね。ナガラオリオンと2頭出しが叶えば最高です。」と、前向き。トントン拍子で重賞を突破し、まだ底を見せていない。夏を越し、進化した姿でパドックに現れる日が楽しみだ。