重賞ウィナーレポート

2013年01月12日 フェアリーS G3

2013年01月12日 中山競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クラウンロゼ

プロフィール

生年月日
2010年03月18日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:2戦2勝
総収得賞金
82,118,000円
ロサード
母 (母父)
ヒシアスカ  by  ヒシアケボノ(USA)
馬主
矢野 恭裕
生産者
カミイスタット (新冠)
調教師
天間 昭一
騎手
三浦 皇成
  • 上井さんご家族
    上井さんご家族
  • 新冠町新栄にあるカミイスタット
    新冠町新栄にあるカミイスタット
  • たくさんのお花やお酒が届けられた
    たくさんのお花やお酒が届けられた
  • 牧場の看板
    牧場の看板

 春に向けての牝馬の戦い・フェアリーS(G3)は1戦1勝の関東馬クラウンロゼが逃げ切り勝ち。直線では2番人気サンブルエミューズに一度交わされるも、しぶとくファイトバックして、栄冠をものにした。

 本馬の生産は新冠町新栄にあるカミイスタット。社長の上井武光さん、夫人の千秋さんと従業員1名の牧場で、繁殖牝馬は16頭。過去には、2008年の福島記念(Jpn3)を制したマンハッタンスカイを生産している。

 「新馬戦が直線の長い東京で先行して押し切り、良い勝ち方でしたからね。重賞初挑戦で人気薄でしたけど、楽しみにしていました。登録頭数の関係で、1勝馬は除外対象でしたので、まずは出走できたことがラッキーでしたね。最後の直線では“差されるかもしれない”と思っていたら盛り返してくれて、絶叫しました。嬉しさと驚きでいっぱいでした。」と、胸中を語るのは上井武光さん。レースはご自宅で観戦していたそうで、確定前から“おめでとう!”の電話が入ってきたそう。余韻に浸るまもなく集牧の時間となり、終わってから携帯を確認すると、何十件もの着信が待っていた。夫人の千秋さんは、「勝利が一番の励みになりますね。」と、しみじみと勝利をかみしめる。夜になってようやく、録画ビデオでゆっくりレースを眺めたという。

 本馬の母ヒシアスカは同牧場生産馬。ヒシアケボノ産駒らしくスピードある大型馬で、現役時代は芝1000m~芝1400mで4勝し、1億円近い賞金を稼いだ。「母馬が1400mまでの馬だったので、(フェアリーS(G3)の)1600mは少し長いかな、と思っていたのですが、距離克服は父ロサードの血でしょうかね。テンの速さは母そっくりです。」と、本馬と両親を重ね合わせる上井武光さん。

 ロサードへの交配意図は、祖父ヒシアケボノ、祖母ヒシカデイーナ、母ヒシアスカと続く大型馬の牝系に、小さくて運動神経の良い馬を付けたかったこと。また、当時、ローズキングダムの活躍が目立っており、バラ一族の底力に賭ける気持ちもあったという。

 「とりわけロサードの掛け合わせについては、新聞の取材もきましたし、他の牧場の方にも聞かれましたが…狙いがうまくいくこともあれば、そうでないこともありますし、配合の運もあったのでしょう。最近、明和に行ってロサードに会ってきました。牧場から一番近くにいる種牡馬の産駒で結果を出せたことも、特別な喜びですね。」と、上井武光さん。当時の種付料にして20万円、種付頭数6頭の中から重賞馬を仕掛けたのだから、馬産地へのインパクトは大きい。

 牧場時代の本馬については、「狙い通り、大きくもなく、小さくもなく、均整のとれた馬でした。性格とか雰囲気は、母馬に似ていたと思います。」と、振り返る。1歳夏まで同牧場で元気に過ごし、庭先取引で現オーナーと結ばれた。1歳秋からはクラウン日高牧場(日高町)、クラウンファーム(大分県)で育成が施され、大分県では海岸のビーチで調教が行われたという。

 無敗で重賞馬となり、今後は一息入れてG1の扉を叩くことになりそうだ。母譲りの逃げ脚に磨きをかけ、桜を背景に17頭を引き連れる姿が思い浮かぶ。上井武光さんもきっと、イメージを描いているだろう。

 「クラシック出走への条件をクリアできたので、この勝利は大きいですね。無事に桜花賞(G1)に出られたら、競馬場まで応援に行きたいと思います。父も母も頑丈なタイプですし、今後もケガなく、息長い競走馬生活を送って欲しいです。」と、希望を託す。晴れ舞台に向けて、その期待は大なり小なり上井さんの胸を騒がせる。雪が一面に広がった放牧地を見ながら、ひと足早い春の話に、花が咲いた。