2012年12月09日 カペラS G3
優勝馬:シルクフォーチュン
プロフィール
- 生年月日
- 2006年02月14日 06歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:30戦8勝
- 総収得賞金
- 291,578,000円
- 母 (母父)
- シルクエスペランサ(USA) by Alwuhush(USA)
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- 中地 義次 (新冠)
- 調教師
- 藤沢 則雄
- 騎手
- 横山 典弘
現役屈指のキレ味を魅せた。ダート短距離路線の重賞、カペラステークス(G3)はシルクフォーチュンの追い込みショー。まるで矢が放たれるように、直線だけでライバルを抜き去り、重賞3勝目のゴールを決めた。
本馬の生産者は新冠町明和の中地義次さん。過去には川崎の重賞・ローレル賞2着のレギュラーサヤカや、盛岡の重賞・ジュニアグランプリ3着のシーグランディを生産している。現在、繁殖牝馬は13頭。
「1200mの速い流れが合うのでしょうね。序盤から掛からずに行けましたし、4コーナーで上がっていけた時に勝利を予感しました。初騎乗の横山典弘騎手とも息が合っているようで、最高の結果を引き出してくれましたね。安心して見ていられるレースでした。」と、振り返るのは、育ての親である中地義次さん。当日は自宅のテレビで声援を送っていた。「今年はいろいろ大変なことがあって…シルクフォーチュンがいなかったら、最悪な年だったかもしれません。馬に助けてもらいました。」と、しみじみと勝利をかみしめる。
父ゴールドアリュール、母シルクエスペランサという血統の本馬は、2006年のバレンタインデー生まれ。祖母は米国芝G3・2着の実績があり、母の半弟にデイリー杯2歳S(G2)の覇者シルクブラボーがいる。牧場時代の本馬像は、「バランスが良くて、素直な馬。人間の指示にしっかり従ってくれる。」
当歳時、HBAセレクションセールに上場され、630万円(税込)で取引された。今年のHBAセールのカタログには、市場取引馬の活躍馬として、シルクフォーチュンがカラー写真で紹介されている。現在、2億5,000万円近い賞金を獲得し、バイヤーの夢を膨らませている。
デビューは2歳夏で、2歳12月に未勝利を脱出。3歳春に故障し、長期休養を余儀なくされたが、4歳5月から4連勝でオープン入り。5歳夏、3度目の重賞挑戦となったプロキオンS(G3)を制し、迎えた大一番・マイルCS南部杯(Jpn1)では勝ち馬を0.1秒差まで追い詰めて、3着。翌年、根岸S(G3)で2つ目の重賞を奪取し、2度目のG1挑戦となったフェブラリーS(G1)では、勝ち馬から0.3秒差の2着。大一番を現地で見ていた中地さんは、馬の頑張りを労いながらも、悔しさを味わった。
「おかげさまで、南部杯(Jpn1)とフェブラリーS(G1)、かしわ記念(Jpn1)と3回、日帰りで応援に行けました。朝早く出かけて、空港の売店で新聞を買って、“あんまり印はないな”と思いながらも、心の中では“勝てるんじゃないか”と信じて競馬場に向かうんです。北海道から一日の大半を移動に費やして、レースは僅か1分半ぐらい。本当にあっという間です。負けるとやっぱり悔しいし、帰りの飛行機に乗る頃は疲れ果てて、無心になっています。それでも家に着く頃には“また仕事を頑張ろう”と、気持ちを前に向かせています。」(中地さん)
研ぎ澄まされた武器は、頂点まで突き抜けられるか。過去と未来、牧場と競馬場、興奮のるつぼを中地さんが行ったり来たりする。再びG1に出走できたなら、仕事や家の都合次第で応援に駆けつける予定でいる。
「G1制覇、種牡馬の道、シルクフォーチュンには大きな期待を抱きますが…まずは怪我をしないように、今後も無事に走ってきて欲しいです。」胸の高鳴りを抑えるように、一線級との争いを案じる。
新冠町の生産馬がG1レースを勝つと、町中で最もにぎやかな場所にある「レ・コード館」の外壁に、優勝を祝して優勝馬と生産者のたれ幕がかかる。国道沿いにあり、車で走っていてもわかるほど目立つ、大きなたれ幕だ。取材終わりに中地さんは、「たれ幕かけたいね。」と、口から出た。本音をはぐらかすように、笑いをまじえながら。今はそう、レインボーダリアのたれ幕がかかっている。そう言えば中地さん、この馬がG1を勝てば、北海道市場にもたれ幕がかかるかもしれませんね。