2012年11月24日 京阪杯 G3
優勝馬:ハクサンムーン
プロフィール
- 生年月日
- 2009年02月14日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:12戦5勝
- 総収得賞金
- 370,109,000円
- 馬主
- 河崎 五市
- 生産者
- 白井牧場 (門別)
- 調教師
- 西園 正都
- 騎手
- 酒井 学
京都競馬場で行われた短距離重賞、京阪杯(G3)は3歳馬ハクサンムーンが逃げ切り勝ち。18頭が1.1秒差にひしめく大接戦を、伸び盛りの速力でねじ伏せた。
本馬の生産は日高町福満の白井牧場。過去には桜の女王・チアズグレイスやフェブラリーS(G1)の覇者グルメフロンティア、同牧場で功労馬生活を送るエモシオン、ミスタートウジンといった活躍馬を生産している。現在、繁殖牝馬は20頭。繁殖・育成スタッフ合わせて約40名が働いている。
同牧場の場長を務める久杉倫紀さんは、「レースはスタッフと一緒に牧場で見ていました。今回も逃げを打ったので、道中はキツい展開にならないで欲しいと願っていました。最後は接戦でしたが、よく踏ん張ってくれましたね。4コーナーを向いてからは、早くゴールが来て欲しいという思いでいっぱいでした。当歳時、セレクトセールで高評価された馬ですし、落札価格に恥じない結果を出せたと思います。」と、喜びを語った。同牧場のJRA重賞制覇は2000年以来で、待ちに待った勝利。直線はスタッフ一同、声援が弾んだという。
本馬は父アドマイヤムーン、母チリエージェ、母の父サクラバクシンオーという血統。母、祖母メガミゲラン、3代母モガミゲラン、4代母ミスゲランは同牧場生産馬で、30年以上向き合ってきたラインだ。祖母はJRA・7勝で北九州記念(G3)3着、母はJRA・5勝でセントウルS(G3)5着という成績を収めたが、重賞勝ちには届かなかった。「代々、重賞勝ちを意識できる馬が続いていたので、念願が叶いました。この血統で勝てたということは大きいですね。」と、久杉さんは胸を熱くさせる。その血にかける信念が見事に実を結んだ。
牧場時代の本馬については、「幅があり、かたちの良い馬でしたね。成長するにつれて、みるみる筋肉が発達していきました。蹄底が薄かったので、そのあたりを十分注意しながら育てました。」と、振り返る。当歳時にセレクトセールに上場し、5,250万円で落札された。そのセールで上場されたアドマイヤムーン産駒では最も高い値となった。
特別戦3勝をマークした母チリエージェは幼少期、種子骨炎のため競走馬生命も危ぶまれた過去がある。競走馬時代から環境の変化に敏感で、現在もストレスに気を付けながら管理しているという。本馬が初仔で、2番仔ベイビーイッツユー(牝2歳、父ダイワメジャー)は今年7月に新馬勝ち。3番仔に父アドマイヤムーンの1歳牝馬、4番仔に父マンハッタンカフェの当歳牡馬が生まれている。実績の配合をもう一度、来春には本馬の全弟・全妹が生まれる予定だ。
「チリエージェの1歳は牝馬ながら体格が良く、同配合のハクサンムーンとは少し違うタイプですね。当歳は父の体型が表れていて、トモは母の父サクラバクシンオーらしく立派です。ハクサンムーン自身が今年10戦を消化しましたし、チリエージェの仔は総じて脚元がしっかりしています。」と、久杉さんは紹介する。同牧場では祖母メガミゲランも健在で、1歳に父ハーツクライの牡馬、当歳に父スペシャルウィークの牝馬がいる。「ともに手先の軽い馬で、順調に育っています。」と、こちらも久杉さんは好感触を掴んでいる。
逃げ馬の宿命か、大雑把に戦績をたどると「勝つ」か「惨敗」というパターンが目立つが、今回は複数の短距離重賞馬、サマースプリントシリーズ・チャンピオンを下しての勝利。夏にはレコードタイムに0.7秒迫る走破時計で6ハロン戦を勝っており、能力の最大値はスプリント界に脅威を与える。久杉さんは、「今後は楽に逃がしてはくれないでしょうし、相手関係も強化されていくと思いますが、頑張って欲しいと思います。来年4歳ですから、まだ伸びしろも期待できるでしょう。G1再挑戦を楽しみにしています。」と、エールを送る。4角先頭ながら最下位に敗れてしまった2歳G1から一年。その逃げ脚は最後まで確かで、力強いものへと進化している。