2012年07月26日 ノースクイーンC(GDJ)
優勝馬:ショウリダバンザイ
プロフィール
- 生年月日
- 2007年03月02日 05歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:25戦9勝
- 総収得賞金
- 96,305,000円
- 母 (母父)
- オレンジスペシャル by ジェイドロバリー(USA)
- 馬主
- 林 正夫
- 生産者
- 山口 義彦 (浦河)
- 調教師
- 林 和弘
- 騎手
- 井上 俊彦
グランダム・ジャパン古馬シーズンの第3戦は、門別競馬場1,800mで行われた「ノースクイーンカップ」。戦前から一昨年の三冠馬クラキンコ(牝5歳、北海道・堂山芳則厩舎)と、昨年の道営記念馬ショウリダバンザイ(牝5歳、北海道・林和弘厩舎)の頂上決戦として大きな注目を集めた。クラキンコがハナを切ってペースを作ったレースは、最後の直線で先に抜け出したサクラサクラサクラを、外から豪脚を爆発させたショウリダバンザイがゴール板できっちりとハナ差捕らえ、同レース3連覇という大偉業を成し遂げた。
ショウリダバンザイの生まれ故郷は、浦河町絵笛地区の山口義彦牧場。創業は昭和36年、繁殖牝馬わずか5頭という家族経営の小さな牧場だ。過去の生産馬には兵庫ジュニアグランプリ(G3)で3着に好走したフィールドルーキーや、笠松・金沢で重賞を4勝したシュウタイセイなどがいる。
「妻と娘といっしょにレースを見ていたのですが、最後は際どい勝負になり、思わず大声が出ましたね。今年が一番キツい内容だったように思います。同一重賞3連覇はなかなか達成できない記録ですし、よく頑張ってくれました」とレースを振り返る生産者の山口義彦さん。当日は夕方の仕事を終えてから車で約1時間半かけて家族で門別競馬場へ向かい、パドックにギリギリ間に合ったそうだ。
「厩舎から帰ってすぐ出発したのですが、晩ごはんを食べる時間もなくて…。コンビニでおにぎりを買って行きました(笑)」 と山口さん。家族経営ゆえ牧場を空けるわけにいかず、なかなか生産馬を応援に行く機会にも恵まれないのが現状だが、ショウリダバンザイの3連覇がかかった同レースは居ても立ってもおられず、門別競馬場へ駆けつけたそうだ。そう聞くと、山口さんの声援が愛馬に届いてゴール板でのひと伸びにつながり、ハナ差の勝利へ導いたように思えてくる。
ショウリダバンザイは離乳まで山口さんの牧場で過ごし、その後は新ひだか町のタイヘイ牧場で育ったという。その牧場時代については、「特に目立つタイプではなかったですね。馬同士では強いのですが、人間には素直でした。うるささもなく、扱いやすかったです」と振り返る。本馬の戦績を見ると、井上俊彦、服部茂史、真島大輔、御神本訓史、吉田稔と重賞勝ちに導いた騎手は実に5人。誰が乗っても結果を出せるのは、幼少期から見せていた人間に対する従順な気性が起因しているのかもしれない。
山口さんの牧場では、以前から夏季の夜間放牧に取り組んでおり、ショウリダバンザイもそうして育った1頭。「今はどこの牧場でも夜間放牧をしているので、特に自慢できることでもないのですが…。ただ、昔は夏に体調を崩して肺炎を起こす馬がいましたが、夜間放牧をするようになってからめっきり減ったのは事実です。ショウリダバンザイも、もともと丈夫な血統ということもありますが、タフに走れる馬になってくれて本当に良かったです」と、幼少期の育成方針に確かな成果を感じているようだ。
牧場には現在、ショウリダバンザイの祖母にあたるオレンジジャスミンが現役で繁殖生活を送っている。「オレンジジャスミンは今年18歳になりますが、年齢以上に若いですね。今年はワイルドラッシュの牡馬を生みました」と殊勲の祖母を紹介。母系を遡ると、ヒシアマゾン、アドマイヤムーン、スリープレスナイトといったG1馬の名前がブラックタイプに記される優秀なファミリー。すでに地方競馬のレースだけで8,000万円以上の獲得賞金を稼いでいるショウリダバンザイが、母親となってその枝葉を広げていく未来も楽しみになってくる。
「5歳の今、ちょうど競走馬としてピークを迎えているような気がします。この調子で長く活躍して欲しい気持ちもありますが、繁殖牝馬としても大きな可能性を秘めた馬だと思いますし、引退後は良いお母さんになって欲しいですね」と山口さんの夢も広がる。
「馬産地では牝馬が思うように売れず、原価割れした取引が頻発しています。馬主さんが手頃な価格の牝馬でも夢を描けるように、我々生産者も結果を出していきたいし、主催者には牝馬重賞への取り組みにも継続的に力を入れて欲しいです」と生産者としての素直な胸の内を明かした。
まずは、昨年惜しくも届かなかったグランダム・ジャパン古馬シーズンのチャンピオンへ。その一歩が、小さな競走馬生産牧場の大きな希望へとつながっていくはずである。