2012年07月08日 プロキオンS G3
優勝馬:トシキャンディ
プロフィール
- 生年月日
- 2006年04月17日 06歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:29戦12勝
- 総収得賞金
- 112,118,000円
- 母 (母父)
- コルチカ(GB) by Machiavellian(USA)
- 馬主
- 上村 叶
- 生産者
- 浦河小林牧場 (浦河)
- 調教師
- 天間 昭一
- 騎手
- 酒井 学
夏のダート短距離重賞、プロキオンS(G3)はトシキャンディが逃げ切り、重賞初挑戦にしてその壁を突き破った。
本馬の生産は浦河町にある浦河小林牧場。繁殖牝馬は20頭で、スタッフ5名が働いている。過去には1990年のマイルCS(G1)を制したパッシングショットをはじめ、ヤングエブロス(1995年根岸S(G3)優勝)、トシザブイ(2002年目黒記念(G2)優勝)などのJRA重賞勝ち馬やトシヴォイス、トシザミカといった交流重賞勝ち馬を生産している。同牧場繁殖スタッフの岡部寛美さんに喜びの声をうかがった。
「直線は声が出ましたね。今回も先手を取る競馬で、最後は早くゴールが来て欲しいという気持ちでいっぱいでした。逃げ切った瞬間は本当に嬉しかったです。」と、スリリングなゴールシーンを思い出し、今一度胸をなでおろす。
可愛らしい名前を持つ一方で、500kgを超す雄大な馬体は牡馬と見まがう。牧場時代も牝馬らしからぬインパクトがあったという。
「馬っぷりが良く、おとこ馬みたいでしたね。馬同士では強いですが、人間にはなついていて、扱いやすいタイプでした。」と、岡部さんは振り返る。同牧場では育成牧場へ入厩する1歳秋まで順調に育ち、3歳1月のデビューに至った。
英国生まれの母コルチカはマキャヴェリアンの肌で、祖母Ivreaは英国G2、G3で好走歴がある。母の現役時代は仏国で3勝し、愛国と英国で3頭の仔を出産後、同牧場が導入した。岡部さんは、「出産も種付けも手がかからないし、子育てもしっかりしていて、繁殖牝馬として優秀です。今年で16歳になりますが、馬体の張りや毛ヅヤは良く、元気いっぱいに過ごしています。来年に向けてはアドマイヤムーンを受胎中です。」と、紹介する。日本での産駒は本馬のほか、シャイニイチカ(牝5歳、父ブライアンズタイム)がJRAで勝利を収めている。
同牧場では今年の1歳馬に本馬の半弟となるステイゴールド産駒が育っていて、こちらも姉に続く重賞制覇を狙っている。「父の血を受け継ぎ、体つきはやや小ぶりで、素軽い動きをしています。高い素質を感じますし、期待の牡馬です。」と、岡部さん。サンデーサイレンス系種牡馬×マキャヴェリアンの組み合わせはヴィクトワールピサ、スウィフトカレント、ヴィルシーナらが好結果を出しており、血統的にも魅力があふれる。
レコードタイムで駆け抜けた速力は、12番人気の低評価を見事にひっくり返した。JRA新馬、未勝利を勝ち切れなかったものの、佐賀競馬でセカンドチャンスを掴み、才能はじっくりと開花。牡馬を負かしての重賞制覇は、本格化したスピードが現役屈指のレベルに達しようとしている証だ。「これからも競馬場で頑張って欲しいですね。パッシングショット以来となるG1制覇を願っています。」と、岡部さんは思いをはせる。
取材終了後、牧場の庭先にあるパッシングショットのお墓が目にとまる。G1で見せた豪脚を知るファンも少なくないはずだ。再びあの快走劇が繰り返されるのではないか。大舞台で先頭を切るトシキャンディを想像しながら、牧場をあとにした。