2012年05月10日 東京プリンセス賞(GDJ)
優勝馬:アスカリーブル
プロフィール
- 生年月日
- 2009年04月14日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:11戦7勝
- 総収得賞金
- 131,345,000円
- 母 (母父)
- ステキナデアイ by ホワイトマズル(GB)
- 馬主
- 坂本 敏浩
- 生産者
- 高山牧場 (門別)
- 調教師
- 川島 正行
- 騎手
- 今野 忠成
グランダム・ジャパン3歳シーズンの第6戦は、南関東牝馬クラシック2冠目となる「東京プリンセス賞」。不良馬場の大井競馬場1800mで行われたレースは、中団から鋭く脚を伸ばしたアスカリーブル(船橋・川島正行厩舎)が、逃げ粘る1番人気エンジェルツイートを楽に交わし、3馬身半の差をつける快勝劇。鞍上の今野忠成騎手は、前日の羽田盃(アートサハラ)に続いて2日連続でのクラシック制覇。アスカリーブルは、2歳9月の「園田プリンセスC」、3歳2月の桜花賞トライアル「ユングフラウ賞」に続き、重賞3勝目をクラシックの舞台で飾った。
優勝したアスカリーブルの生まれ故郷は、北海道日高町の高山牧場。1986年の日経新春杯(G2)を制し、天皇賞(春)(G1)でも3着したフリートホープの生産牧場だ。現役馬では、兵庫競馬所属で今年の新春賞を制したクールフォーマ(セン7歳)などがいる。
「東京プリンセス賞はインターネット中継を見ながら応援していました。素晴らしい仕上がりで大一番へ臨み、強い競馬を見せてくれました。関係者の皆さんの努力の賜物だと思います」と話すのは生産者の高山正登さん。高山牧場には現在7頭の繁殖牝馬がいるのだが、実はこのレースの直前に、そのうちの1頭が難産の影響で命を落としており、乳母の手配などで混乱するなか舞い込んできた朗報だった。
「お祝いの電話も沢山いただきましたが、当時は喜びと悲しみが交錯していました」と高山さんは話す。不思議なことに、生産者にとって辛い出来事があった時、生産馬が勝利で心の傷を癒してくれるということがよくある。高山さんにとって、今回のアスカリーブルの勝利は、まさにそのケースだった。
牧場にいた頃のアスカリーブルの印象は、「扱いやすく、丈夫な馬でしたね。人なつこくて、小学生だった娘がよく可愛がっていました」と振り返る。夜間放牧で十分な運動時間を作り、頑強な馬に育て上げた。しかし、母が未勝利馬という点が敬遠されたのか、上場したせりでは買い手がつかなかった。その母系について高山さんは、「祖母のトリムカットは、千代田牧場さんから購入した馬でした。すでに繁殖実績があり、名馬シーバードが入っている血統も購入の決め手となりました。母ステキナデアイは脚部不安で満足に競走生活を送れませんでしたが、G1馬を出して評価を上げていた父ホワイトマズルの底力に賭け、繁殖牝馬として迎え入れました」と、その経緯を解説する。
アスカリーブルの父もG1未勝利で種牡馬入りしたブラックタキシードだが、チャンストウライ(佐賀記念(Jpn3)優勝)やヤサカファイン(東京盃(Jpn2)2着、北海道スプリントC(Jpn3)2着)など、ダート交流重賞で活躍する産駒が目立ってきており、サンデーサイレンス系の底力を求める地方競馬の調教師から声がかかって、アスカリーブルのデビューへの道は拓けた。
「1歳暮れからは門別の国信厩舎で育成されました。園田デビューなのであまり知られていませんが、デビュー前の馴致、調教をしてくれた国信厩舎の皆さんにも頭が下がります」と感謝を忘れない高山さん。調教を開始した時から能力の片鱗を見せており、大物になる雰囲気を漂わせていたという。
圧巻だった「東京プリンセス賞」の内容を受け、アスカリーブルの次走は6月6日の「東京ダービー」に照準が絞られた。「勝算があるからこその選択だと思います。牡馬を相手にしても好走してくれたら最高ですね」と、昨年も牝馬を東京ダービー馬へと導いた川島正行調教師の手腕に、高山さんも大きな期待を寄せている。
※取材後、アスカリーブルの次走は、6月13日(水)の関東オークス(Jpn2・川崎)へと変更になりました。