2012年04月30日 留守杯日高賞
優勝馬:ミスシナノ
プロフィール
- 生年月日
- 2009年04月21日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:12戦3勝
- 総収得賞金
- 7,168,000円
- 母 (母父)
- メジロカンナ by メジロライアン
- 馬主
- 小林 勝
- 生産者
- ハクツ牧場 (新冠)
- 調教師
- 高月 賢一
- 騎手
- 佐藤 博紀
グランダム・ジャパン3歳シーズンの第4戦は、水沢競馬場で行われた「留守杯日高賞(1600m)」。地元岩手の馬6頭に加え、南関東競馬から3頭、笠松競馬からも3頭が遠征し、計12頭によって杯が競われた。1番人気はホッカイドウ競馬出身、園田競馬を経て今春に水沢へ転厩してきたサブリナラッシュ(父ワイルドラッシュ)。2番人気はこちらもホッカイドウ競馬出身で大井競馬へ移籍したDr.コパさんの所有馬ラブミーアゴー(父ロージズインメイ)だったが、優勝したのは川崎競馬から遠征で臨んできた3番人気のミスシナノ(父サウスヴィグラス)。逃げるセントウイナーを道中3番手で終始マークし、直線ではマッチレースに持ち込んでゴール前できっちり1/2馬身競り落とし、見事に重賞初制覇を成し遂げた。
ミスシナノの生まれ故郷は、北海道新冠町のハクツ牧場。過去にはカブトヤマ記念(G3)、福島記念(G3)、鳴尾記念(G3)と重賞3勝を挙げたウインブレイズ、南関東の重賞・東京記念を制したウエノマルクンなどの活躍馬を生産してきた。現在は繁殖牝馬10頭を抱え、ご主人の村田紀次さん、奥様の万記さん夫婦2人で牧場を切り盛りしている。
レースはご夫婦そろってインターネット中継で見ていたそうだ。奥様の万記さんは、ミスシナノの応援馬券を購入して声援を送っていたという。「地方のレースといえども、重賞となると勝つのは大変なことですからね。よく勝ってくれました。最後は“交わしてくれ!”と祈るような気持ちでしたよ」と歓喜の瞬間を思い出す。
ミスシナノはオーナー探しに苦労した牝馬。せりに上場するも買い手がつかず、幼駒時代は村田さんの頭を悩ませた。「スタイルの良い馬でしたが、せりでは牝馬というだけで過小評価されてしまって。小柄だったことも敬遠された原因なのでしょうけど…」知り合いの馬主さん、調教師さんに写真を送ってPRに努めた村田さん。それに目をとめてくれたのが、同じサウスヴィグラス産駒のスパロービートで重賞勝ちを決めて間もない川崎の高月賢一調教師だった。なんとか競走馬としての道が拓けたミスシナノは、7月の川崎新馬戦でデビュー。2戦目には初勝利を挙げ、3歳になってからは地元重賞のクラウンCに出走できるまでの成長を見せていた。
ミスシナノの母メジロカンナは、現役時代に中央で1勝を挙げた繁殖牝馬。これまでに10頭の産駒を誕生させており、5番仔のマアーラウ(牡6歳、父ニューイングランド)は岩手競馬で現役馬として活躍中。ミスシナノの全兄に当たる7番仔のコスモケンジ(牡4歳、父サウスヴィグラス)も、中央のダートで3勝して準オープンまでクラスを上げている。
「母馬はメジロ牧場から購入した繁殖牝馬で、父メジロライアンに似た雄大さが長所です。サウスヴィグラスを配合して産まれてきた6番仔の出来が素晴らしく、買い手もすぐに決まりましてね。それからは毎年サウスヴィグラスを交配しています」と村田さんは種牡馬サウスヴィグラスを高く評価する。数年前から始めた昼夜放牧の効果もあって、ミスシナノの全弟も丈夫な馬に育っているそうだ。
「生産馬が勝つ喜びは自分たちだけが得られる特別なものですし、今回の勝利も本当に嬉しいです。これからも無事に走ってきて欲しいですね」と愛馬の走りを温かく見守る村田さん。「牝馬やダート馬を生産しても夢が持てるように、グランダム・ジャパンの活性化を期待しています。シリーズが定着してくれば、せりでの牝馬の評価も変わってくるでしょう」と生産者としての願いを込める。ミスシナノには、なかなか買い手がつかなかった牝馬が頂点へと上り詰めるシンデレラストーリーを完成させ、馬産地に元気を与える存在となってほしい。