2011年12月03日 ステイヤーズS G2
優勝馬:マイネルキッツ
プロフィール
- 生年月日
- 2003年03月18日 08歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:42戦8勝
- 総収得賞金
- 557,038,000円
- 母 (母父)
- タカラカンナ by サッカーボーイ
- 馬主
- (株) サラブレッドクラブ・ラフィアン
- 生産者
- ビッグレッドファーム (新冠)
- 調教師
- 国枝 栄
- 騎手
- 三浦 皇成
JRAの平場重賞としては最長距離で行われる中山の名物マラソンレース。第45回目のステイヤーズS(G2)を制したのは、新冠町ビッグレッドファーム(以下BRF)生産のマイネルキッツだった。
道中は中団よりやや後ろのポジション。2周目の3コーナー手前から馬なりで先頭に並びかけた瞬間、牧場でテレビ観戦していた九鬼勝己調教主任(BRF真歌トレーニングパーク)は勝利を確信したという。「先頭に立ったときの手応えが(他の馬とは)違いましたね。あの時点でこれならいける、という感じでした」。
だからだろうか、マイネルキッツが先頭でゴールした後も、九鬼さんはサラリと勝利を受け止めた。それは共にレースを観ていたスタッフたちも同じだったようで、レース後に交わした会話はといえば「良かった、良かった」、「じゃあ仕事するか」といった調子。歓喜に沸いた09年天皇賞(春)(G1)の時とは比べるまでもなく、淡々としていた。だからといって、10年日経賞(G2)以来1年8か月ぶりの勝利が嬉しくなかったわけでは、もちろんない。ただ、G1馬が普通に夏を過ごして、秋緒戦をまずまずの内容で走り、さらに調子を上げていたことを知っていれば、必要以上に驚く結果ではなかったのである。
芝の長距離で走る馬らしく、若駒の頃から「坂路では全く目立たないタイプ」だったというマイネルキッツ。物見が激しいため、調教で先頭を走ることはあまりなく、早い時期からバリバリと動くBRF軍団の中にあっては、比較的地味な存在だった。しかし、そこはやはりBRF育成馬。「さすがにバリバリとまではいかなくても、他の育成場と比べれば間違いなくハードなメニューをこなしていた」(九鬼さん)。
芯からじっくり鍛えられ、2歳春の時点で水準の動きに達していたマイネルキッツは、デビュー2戦目で勝ち上がり。その後はコンスタントに休養を挟みながら、一歩ずつ階段を昇っていった。5歳6月のエプソムカップ(G3)で重賞初挑戦。勝ち切れないまでも大崩れはせず、デビュー29戦目の09年天皇賞(春)(G1)。6歳にしてついにG1の舞台を踏んだのである。
「今でもレース中に物見をしてフワフワするところがありますからね。国枝先生は“だから距離がもつ”とおっしゃいます。だけど時々、あの馬でも引っ掛かる面を見せることがあるんですよ。調子が良すぎるほど良くて、気持ちと体の状態がピタリと合った時、猛烈に行く気を出します」
一見おっとりタイプのマイネルキッツだが、前に一度、「調子が良すぎて」、テンションが上がり、馬運車を降りる際にケガを負ったことがある。そうした経験をふまえて、マイネルキッツに対しては「いつもどおり」がBRF真歌トレーニングパークにおけるテーマ。いつもどおりの休養、いつもどおりの状態で厩舎に送り出せば、レースに行って心身がピタリと合う時がくる。それはそう、ちょうどステイヤーズS(G2)の2周目の3コーナーのように。
「来年9歳になりますが、衰えは感じません。この馬に対してはこれまで一度も引退の2文字がよぎったことがないですから。あと1年、あと1年と調子を崩さずにいけば、10歳というのも見えてくるでしょう。“これからもまた”と、そう思えます」
今年、中山グランドジャンプ(J・G1)で重賞初勝利を挙げた同期のマイネルネオスは、中山大障害(J・G1)を見据える。そして、マイネルキッツは総決算の有馬記念(G1)へ。サラブレッドクラブ・ラフィアンの看板8歳馬は、暮れの中山競馬場で2011年度の走りを締めくくる。