2011年07月10日 プロキオンS G3
優勝馬:シルクフォーチュン
プロフィール
- 生年月日
- 2006年02月14日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:20戦6勝
- 総収得賞金
- 291,578,000円
- 母 (母父)
- シルクエスペランサ(USA) by Alwuhush(USA)
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- 中地 義次 (新冠)
- 調教師
- 藤沢 則雄
- 騎手
- 藤岡 康太
ダート短距離重賞、プロキオンステークス(G3)は5歳馬シルクフォーチュンが強烈な決め脚を発揮して初重賞制覇を飾った。自身が繰り出した上がり時計は34.9秒。脅威の爆発力でライバルを黙らせた。
本馬の故郷は新冠町の中地義次牧場。繁殖牝馬10頭の家族経営の牧場だ。同牧場の中地義次さんに喜びの声を聞いてみると、「重賞ですから強い馬が揃っていましたし、掲示板に載ってくれれば…という思いで見ていました。後方からの競馬で、残り100mぐらいでテレビに映った時は、応援に力が入りました。藤岡康太騎手がうまく馬群を捌いてくれて、胸のすくような豪脚を引き出してくれました。これまでは故障で長い休養もありましたが、厩舎の皆さん、オーナーの支えのおかげでよく立ち直ってくれましたね。今は本当に大変な時代だけど、牧場を続けていて良かったなと思いました。」と、感慨深げに話してくれた。当日はご家族揃ってテレビ観戦しており、娘さん、お孫さんと共に涙ながらに勝利を見届けたという。
アメリカ産の母シルクエスペランサは日本国内で3勝をマークし、中地さんの牧場にやって来た。現役時代の競走成績や産駒の出来から“狙うはダート”と判断した中地さんは、その実績が光るゴールドアリュールを選び、シルクエスペランサの3番仔としてシルクフォーチュンは誕生した。牧場時代の印象については、「体型が整っていて、大人しくて素直な馬でした。」と、振り返る。HBAセレクションセール・当歳に上場して630万円で落札され、シルクホースクラブの募集馬となった。
シルクフォーチュンがデビューする前、牧場では悲しい別れもあった。母シルクエスペランサは4頭目の仔を受胎した後、腸捻転で亡くなってしまったのだ。「全く兆候がなくて、悪化してからすぐに三石家畜診療センターへ運んだのですが、到着した時には息を引き取っていました。手の施しようがない状態でした。惜しいことをしました。」と、中地さんは肩を落とす。お産も種付けも子育ても手のかからない、優秀な繁殖牝馬だったという。失った命は取り戻せないが、その血を受け継ぐ息子が母の名を世に知らしめている。
十代の頃から馬産の世界に身を置いている中地さん。若い頃に勤めていた十勝育成牧場ではカブラヤオー(皐月賞、日本ダービー優勝)、ミスカブラヤ(エリザベス女王杯優勝)の背にまたがり、現在の牧場の前身であるセントラル・スタッド時代にはシノクロス(京成杯3歳S(G2)優勝)を生産。活躍馬を送り出した経験を生かし、今度は自身が築く牧場から大レースを狙える馬を生み出した。うっすらと見えてきた頂点への道に高ぶる気持ちを隠せない。「こうして重賞を勝つことができて、今まで苦労もあったけど、報われました。シルクフォーチュンに願うことは、これからも無事に走ってきて欲しいということですね。なかなか競馬場までは応援に行けませんが、今度重賞レースに出たら現地まで駆けつけたいです。もしG1を獲ってくれたら、牧場をやめてもいいぐらいの気持ちですよ。」と、中地さんは笑う。半世紀近いホースマン人生の誇りを胸に、G1制覇の夢を追う。