2011年01月30日 根岸S G3
優勝馬:セイクリムズン
プロフィール
- 生年月日
- 2006年03月13日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/青毛
- 戦績
- 国内:23戦8勝
- 総収得賞金
- 571,292,000円
- 父
- エイシンサンディ
- 母 (母父)
- スダリーフ by サウスアトランテイツク(IRE)
- 馬主
- 金田 成基
- 生産者
- 清水スタッド (様似)
- 調教師
- 服部 利之
- 騎手
- 幸 英明
第25回根岸S(G3)は様似町の清水スタッド生産のセイクリムズン(牡5)が中団待機から直線で力強く脚を伸ばして優勝。昨年12月のカペラS(G3)に続く重賞2連勝でフェブラリーS(G1)へ大きく前進した。
仕事の合間に自宅のテレビで観戦していたという清水スタッドの清水孝志さんは「ゴールしたときは手を叩きすぎて、痛くなりましたよ」というほどに喜びを爆発させていた。「ここ2戦が強い内容でしたので楽しみにはしていましたが、以前に顔をあわせたときに負けている馬もいましたし、やっぱり競馬ですからね。ぼくらのような規模の牧場にとって重賞競走は出るだけでも凄いこと。それが昨年と今年と勝ってくれたのですから、先頭でゴールしたときは本当に嬉しかったですよ」と馬の強さに感心したように話してくれた。
そして牧場時代の話になれば「この勝利は本当にたくさんの人のおかげだと、そう思いますね」と神妙な面持ちになった。セイクリムズンが生まれた頃、清水さんは日本軽種馬協会が行なう軽種馬経営構造改革支援事業で補助をうけ、放牧地整備をした。2面しかなかった放牧地を3面にすることによって、常にひとつの放牧地を休ませることができるようになった。そして牧柵に沿うように網を張ることで夜間放牧が可能になった。また、同協会が行なう軽種馬経営高度化指導研修事業に協力するような形で、JRA日高育成牧場の職員など飼養管理指導者から多くのアドバイスをもらったという。
「牧場をやっていると、本当にいろいろなことがあります。理想と現実の狭間に悩むこともありますが、この世代は本当に勉強させられた世代でしたね。その中からセイクリムズンが出てくれて嬉しい。恩返しが出来たような気分です」と感謝の意をあらわした。
「こんな素晴らしい経験をさせてもらえるのですから、サラブレッドの生産は本当に魅力のある仕事だと思います。でも、ぼくらのように資本力も労働力もない牧場は本当に大変。急激なレベルアップについていくだけでも大変です」と言いながらも、そのレベルアップの中で2006年の東京新聞杯(G3)を勝ったフジサイレンスや2007年に福島牝馬S(G3)を勝ったスプリングドリュー、そしてセイクリムズンと結果を残しつつある。
「血統の更新ひとつとっても家族労働の牧場では限界があります。自己所有馬の比率を減らしても、良質牝馬を導入したい」というのは、生産者として偽らざる気持ちだろう。しかし、そんな清水さんのていねいな馬づくりは、2008年のセレクションセール1歳市場においてフジサイレンスの全妹が最高価格で落札されたことでも示されている。「あれは、たまたまですよ。評価いただいたことは嬉しいですけど、間違って高値が付いたと自分では思っています」という言葉にも人柄がにじみ出る。
そして、次走はいよいよフェブラリーS(G1)だ。もし、仮にセイクリムズンが先頭でゴールを駆け抜ければ、様似産馬としては90年のキョウエイタップ(エリザベス女王杯)以来の平地G1となる。その話題になったときには、複雑な表情を浮かべながらも言葉に詰まった。言葉に出来るほど軽いものではない。それがG1レースという重みなのだ。