2011年01月30日 京都牝馬S G3
優勝馬:ショウリュウムーン
プロフィール
- 生年月日
- 2007年06月07日 04歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:11戦3勝
- 総収得賞金
- 214,116,000円
- 馬主
- 上田 亙
- 生産者
- 高村牧場 (浦河)
- 調教師
- 佐々木 晶三
- 騎手
- 浜中 俊
京都競馬場で行われた牝馬重賞、京都牝馬ステークス(G3)は4歳馬ショウリュウムーンが強烈な決め脚で他馬を一蹴。生まれ故郷の小さな牧場は歓喜に包まれた。
本馬の生産は浦河町の高村牧場。過去には東海ダービーなど、笠松、名古屋で14勝を挙げたサブリナチェリーを生産している。創業は昭和20年。当時は牛やアラブも飼養していた。現在、繁殖牝馬は7頭。
同牧場の高村唯三さんはご家族でテレビ観戦して、レースを見守った。「一年近く勝利から遠ざかっていましたし、今回も強い馬が出ていましたから、入着できれば良いなと思って見ていました。本当によく走ってくれましたね。家族一同、万歳をして喜びました。涙が出ましたよ。」と、感動の胸の内を明かす。
後の3冠牝馬に土をつけたチューリップ賞(G3)から約一年。クラシックでの好走、惨敗、不完全燃焼のレースもあった。オープン入り後は茨の道だったかもしれない。遠ざかっていた3勝目は、2つ目の重賞タイトル。一線級に挑むための立派な証だ。
牧場時代の本馬について、高村さんに伺うと、「初仔で遅生まれの分、細くて小さい馬でした。2月、3月生まれの馬と一緒にいると親子ぐらい違って見えましたね。この馬の場合、2歳秋からグングン成長してきたと思います。」と、振り返る。
牧場では数年前より土地改良を進めていた。丈夫な馬づくりを目指してのものだった。成果は着実に表れた。本馬も2歳11月のデビューから長期休養することなくコンスタントに出走し、遅生まれの初仔というハンデをものともせず、大舞台を走りぬいた。栄光の裏側では地道な土地改良の努力が効いていた。
母ムーンザドリームは現役時代未勝利に終わったが、G1馬を輩出したダンスインザダークの肌で、タケホープにつながる優秀な母系を持つ。高村さんは母について、「大きい馬ですね。時折、我の強いところを見せますが、普段は大人しく、人間に対しても悪さをしません。祖母のミヨシチェリーも大人しい馬でしたからね。」と、紹介する。放牧地で会うと、男馬のような馬っぷりの良さが目についた。今年9歳と若く、有望な繁殖牝馬として牧場の期待は大きい。
ショウリュウムーンの兄弟には2歳に父チーフベアハートの牝馬がおり、現在はチェスナットファームで育成中。JRA関東の厩舎に入厩予定という。1歳には父スウェプトオーヴァーボードの牡馬が牧場で元気に駆け回っている。高村さんは、「2歳は雄大で落ち着いた馬。1歳はバランスの良い馬で、共に順調に成長しています。」と、評する。
ムーンザドリームは今年キングカメハメハを受胎中。昨年、2か月間種付けに通い、受胎したのは6月末という苦難の道のりだった。浦河から半日がかりの種付けを5回以上通ったという。“あきらめずに行って、良かった”と、高村さんは胸をなでおろす。
女王ブエナビスタに肉薄した強豪牝馬を完封し、春のG1へ向けて幸先良いスタートを切ったショウリュウムーン。今春、改めて牝馬戦線の頂上にアタックする。高村さんは、「もう50年近く馬をやっていて、これまで地方の重賞は勝てたけど、中央には縁がないと思っていました。それが、ショウリュウムーンで勝ってくれた。苦しい時に勝ってくれて、希望を与えてくれました。これからも無事に走ってきて欲しいです。将来は牧場に繁殖牝馬として帰ってきて欲しいです。」と、しみじみと語ってくれた。
春の目標はヴィクトリアマイル(G1)。“都合がつけば応援に駆け付けたい”と、高村さんは笑みをこぼす。6月7日の遅生まれであり、彼女の進化はまだ途中だろう。更なるパワーアップで女王の背中も十分近づいてくる。