2010年12月12日 カペラS G3
優勝馬:セイクリムズン
プロフィール
- 生年月日
- 2006年03月13日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/青毛
- 戦績
- 国内:22戦7勝
- 総収得賞金
- 571,292,000円
- 父
- エイシンサンディ
- 母 (母父)
- スダリーフ by サウスアトランテイツク(IRE)
- 馬主
- 金田 成基
- 生産者
- 清水スタッド (様似)
- 調教師
- 服部 利之
- 騎手
- 幸 英明
中山競馬場で行われたダート短距離重賞、カペラS(G3)は新進気鋭の4歳馬セイクリムズンが力強く伸びて快勝。ダート路線に楽しみな新星が現れた。
本馬の生産は様似町の清水スタッド。過去には2006年の東京新聞杯(G3)を制したフジサイレンス、2007年の福島牝馬S(G3)の勝ち馬スプリングドリューを生産している。繁殖牝馬10頭の牧場だ。
同牧場の清水孝志さんはレースを振り返って、「勝てて嬉しいです。最後の直線では2着馬も脚色が良かったので、ゴール前は応援に力が入りました。重賞レースは誰もが欲しいタイトルだし、勝つには運も必要だと思いますが、この馬には運もあったのでしょう。優秀な素材に出会えたことを幸せに思います。」と、喜びを語った。当日は自宅のテレビで愛馬の姿を追っていた。入ったばかりのスタッフは、清水さんの絶叫ぶりに目が点になっていた、と清水さんは笑う。
本馬の母スダリーフはJRA1勝。激しい気性ゆえ、僅か4戦のみの現役生活となったが、母となってからは初仔マイネルナポレオンがJRA4勝、5番仔セイントリーフが岩手で重賞を勝ち、ラジオたんぱ賞(G3)でも5着に入る活躍。ついに今回、JRA重賞に手が届いた。
セイクリムズンの牧場時代については、「母馬と同じく、元気があってパンチのある馬でした。人の言うことは従いますが、馬同士では強く、ボス的存在でした。」と、思い出す。本馬は庭先取引で売買され、1歳秋まで順調に牧場で過ごした。立派なトモと馬体の雄大さが際立っていたという。
父エイシンサンディは清水さんが目をつけていた種牡馬だった。「サンデーサイレンス産駒にしては幅があるし、少ない産駒数でありながら勝ち上がり率が高いので、注目していました。」と、清水さん。交配時はちょうど産駒エイシンテンダーがチューリップ賞(G3)を勝ち、自信を深めてのチョイスだった。今ではセイクリムズンが現役エイシンサンディ産駒の出世頭だ。
スダリーフは高齢のために繁殖生活を引退したが、牧場では本馬の半姉セイントリーフが繁殖入りしており、有望な産駒を残している。母系をさかのぼるとヤマトナデシコにいきつくファミリーで、その子孫からはビッグレースの勝ち馬が誕生しており、底力ある母系も清水さんは強調した。
優勝の喜びを語ってくれた一方で、清水さんは生産者としての冷静な視点も語った。「昔は重賞を勝つ馬が出ると、“その馬の弟、妹はいるか”と問い合わせが相次いだものでしたが、今はめっきりなくなったと聞きます。高額種牡馬を付けても牝馬だったり、形が悪かったりすると売れませんし、せりでも原価割れの取引が頻発しています。このような経済状況で生産活動を続けていくのは大変なことです。」
感動の余韻をかみしめながらも、シビアな競争に立ち向かっていかなければならない。
なお、同牧場は日本軽種馬協会の軽種馬経営構造改革支援事業で補助をうけ、放牧地整備をした牧場。本馬はその取り組みの中で育った一頭だった。「これまでは夜間放牧ができなかったが、この事業のおかげで踏み切ることができた。育った馬の中から重賞勝ち馬が出てくれて、本当に嬉しい。感謝しています。」と、清水さん。
事業の後押しで思い描く牧場環境を形にした。コンサルタントの助言も参考にしながら、夜間放牧で鍛えた成果がセイクリムズンだ。支援事業のもと、清水さんの“強い馬づくり”への改革は着実に実を結んでいる。