重賞ウィナーレポート

2010年10月17日 秋華賞 G1

2010年10月17日 京都競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アパパネ

プロフィール

生年月日
2007年04月20日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:9戦6勝
総収得賞金
558,592,000円
キングカメハメハ
母 (母父)
ソルティビッド(USA)  by  Salt Lake(USA)
馬主
金子真人ホールディングス (株)
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
国枝 栄
騎手
蛯名 正義

 秋華賞当日、ノーザンファーム空港牧場の窪田淳厩舎長の姿は京都競馬場にあった。競馬場でアパパネの姿を見るのは、阪神JF(Jpn1)以来、約10か月ぶりのこととなる。

 「三冠牝馬という機会はそうはないこともありましたが、他にも自分の厩舎から送り出した他の2頭にもチャンスがありそうでしたからね」このレース、厩舎からはアパパネを含めて3頭の育成馬が出走していた。他の2頭とはローズS(G2)の優勝馬であるアニメイトバイオ、そのローズS(G2)で2着となったワイルドラズベリーである。

 「この時、三冠牝馬という意識はそれほど持ってはいませんでした。むしろローズSの時もそうでしたが、3頭のいずれかが勝ってくれればいいと思っていました。出来ることなら3頭が1着同着か、もしくは3頭で上位独占してくれないかとも思っていました」(窪田厩舎長)

 しかし、パドックに出てきたアパパネの姿を見て、窪田厩舎長の考えは覆る。アニメイトバイオも、ワイルドラズベリーも、G1に出走するに相応しい仕上がりを見せていた。だが、それ以上にパドックを周回するアパパネの出来は素晴らしかった。

 「びっくりしました。状態がいいと思えるだけではない、他の馬とはちょっと違った雰囲気さえ覚えました」(窪田厩舎長)。窪田厩舎長が驚いたのには他に理由があった。この夏を厩舎で過ごしたアニメイトバイオ、そしてワイルドラズベリーも2歳の頃から想像した通りの長を遂げていた。だが、アパパネは窪田厩舎長の想像を越えるほどの馬となっていたのだ。

 「凄いとしか思えませんでした。この状態ならよっぽどの不利がなければ勝てると思っていました」(窪田厩舎長)。窪田厩舎長のインスピレーションは現実となる。京都の内回りというトリッキーなコースで外を回ってきたアパパネは、距離のロスなどなんのその、力の違いを見せつけるかのように直線で抜け出し、巧みにインコースを付いてきたアニメイトバイオの追撃を振り切った。

 「レースはアパパネだけではなく、アニメイトバイオも、ワイルドラズベリーの位置も見ていました。もうちょっとでワンツースリーフィニッシュがあるのではと思いましたが、ワイルドラズベリーもそれほど差のない競馬を見せてくれたように、力を出し切ってくれたと思います」(窪田厩舎長)

 喧噪と興奮に溢れた競馬場から静かな牧場へと帰ってきた今、改めて史上3頭目となる牝馬三冠制覇を窪田厩舎長に聞いてみた。「こんな素晴らしい経験は、そう出来ることでもないと思います。ただ、それは国枝先生や国枝厩舎のスタッフの皆さんのおかげであり、共に高見を目指してきた牧場スタッフのおかげであり、何よりもアパパネという素晴らしい馬に出会えたことが全てだと思います」

 レース後、蛯名騎手はアパパネに対して「可愛い」という表現を用いたが、窪田厩舎長に「アパパネはどんな馬でしたか?」という質問を向けると、「可愛いと言うより、あとで振り返ると色々な面白いエピソードはあった馬ですね。でも、一度教えたことは覚えてくれる賢い馬でしたよ」と苦笑を浮かべながら振り返る。

 ホースマンとして史上の喜びであるクラシック制覇を3度も味わった窪田厩舎長。だが、この喜びに浸っている印象はまるでなく、むしろ更なる高みを目指す言葉が聞かれた。

 「この秋華賞でも3頭の育成馬を送り出すことができたように、一頭の優れた資質を持った馬だけでなく、育成馬が総じて結果を残してくれるのが理想です。それだけの高い資質を持った馬を任せてもらっているのですから、この結果に満足するのではなく、もっと多くの馬をG1の舞台に送り出したいです」

 窪田厩舎長の次なる目標も牝馬三冠制覇。だが、それはアパパネの時とは少々、その過程が異なっている。「次の三冠制覇は、それぞれが異なる馬で叶えたいです。一頭で一冠を三つ取れたらいいですね」。