2010年09月05日 小倉2歳S G3
優勝馬:ブラウンワイルド
プロフィール
- 生年月日
- 2008年06月16日 02歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:3戦2勝
- 総収得賞金
- 46,057,000円
- 母 (母父)
- ブラウンシャイン by ヤマニンゼファー
- 馬主
- キャピタルクラブ
- 生産者
- 田鎖牧場 (新冠)
- 調教師
- 坂口 正則
- 騎手
- 浜中 俊
夏の2歳重賞・小倉2歳ステークス(G3)はブラウンワイルドが優勝。6月16日生まれという遅生まれもなんのその、目を見張る差し脚で颯爽とタイトルをものにした。
本馬の生産は新冠町共栄の田鎖牧場。過去にはサラブレッドチャレンジカップ(G3)、東海菊花賞などを制したダートの強豪ブラウンシャトレーを生産している。昔は牛を飼い、稲作・畑作を営んでいたが、アラブ1頭から軽種馬生産を始め、現在は繁殖牝馬9頭を擁する家族経営の牧場だ。
同牧場の田鎖誠さんはレース当日、北海道から日帰りで小倉競馬場に出かけ、応援馬券を手に愛馬の走りを見守っていた。「3コーナーで先頭の馬からだいぶ差があったので不安がよぎりましたが、よく差し切ってくれました。最後は僅差でしたし、ゴール前は声が出ましたよ。6月生まれの馬が2歳重賞を勝つのですから、びっくりですね。JRAのレースで生産馬が勝つ瞬間に立ち会えたのは初めてのことで、口取りと表彰式は喜びと緊張で、何だかふわふわした気持ちでした。」と、感動の時を伝える。JRA重賞制覇は牧場開業以来初となるメモリアルVだ。
牧場時代の本馬については、「均整のとれた体で、特に欠点を感じない馬でした。素直で大人しく、手がかからなかったことを覚えています。」と、振り返る。牧場では夜間放牧で鍛え、浦河町のカナイシスタッドで育成を施し、デビューに至った。
本馬の母の母マルカートは牧場の出世頭ブラウンシャトレーを生み出した宝馬。大事に守ってきた血統が再び花を咲かせた。母ブラウンシャインはこれまで6頭を出産し、今年はサクラプレジデントの仔を授かっている。
「母馬は現役時代、ダッシュ力が持ち味の馬でした。この母系はスピードがあり、早いピッチ走法が特徴なので、そのあたりは産駒にも受け継がれているのでしょう。繁殖牝馬としてはとても扱いやすく、健康状態も良好です。だいたい1回の種付けで受胎してくれるので、遅生まれでも助かっています。」と、田鎖さんは目を細める。1歳には父ニューイングランドの牝馬がおり、こちらは育成牧場に移動済み。当歳は父ゼンノエルシドの牝馬が牧場ですくすくと育っている。
「今年の当歳は落ち着いていて、肝っ玉のすわった馬ですね。肉づきが良くなってきましたよ。」と、田鎖さん。兄の活躍を受けて妹にも注目が集まることだろう。
かつて牧場では今の2倍の頭数を扱っていたという田鎖さん。時代の変化に合わせて牧場を切り盛りしてきた。故郷の雄ブラウンシャトレーに続く活躍馬生産を目指し、特にエサの選別・与え方は研究したという。地道な努力の成果が歓喜の瞬間を呼び寄せた。安堵の表情で“勝てて良かった”と話す言葉には様々な苦労を乗り越えた重みを感じる。待望の勲章をプレゼントしてくれた本馬の今後については、「ケガせず丈夫に走って欲しいです。」と、願う。
この秋は京王杯2歳S(G2)から朝日杯フューチュリティS(G1)というプランが持ち上がっているそうで、出走となれば田鎖さんも応援に駆け付ける予定だそうだ。牧場初の重賞ウイナーは満2歳になったばかりの若武者。今後の成長ぶりに楽しみは広がる。