重賞ウィナーレポート

2010年08月08日 函館2歳S G3

2010年08月08日 函館競馬場 晴 良 芝 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:マジカルポケット

プロフィール

生年月日
2008年04月03日 02歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:2戦2勝
総収得賞金
49,475,000円
ジャングルポケット
母 (母父)
アズワー(USA)  by  Danzig(USA)
馬主
榊原 源一郎
生産者
森永牧場 (門別)
調教師
領家 政蔵
騎手
安藤 勝己
  • 母アズワー
    母アズワー
  • 母アズワーはアドマイヤムーンを受胎
    母アズワーはアドマイヤムーンを受胎
  • アズワーと今年生まれた当歳
    アズワーと今年生まれた当歳
  • アズワー2010(牝、父アドマイヤムーン)
    アズワー2010(牝、父アドマイヤムーン)

 第42回函館2歳S(G3)は2番人気のマジカルポケットが、直線前が開くとメンバー中最速の上がりで力強く伸び、早めに先頭に立った1番人気マイネショコラーデをゴール寸前ハナ差かわして2歳世代初の重賞ウイナーに輝いた。 

 同馬を生産したのは日高町にある森永牧場。森永秀美さん、薫さんご夫婦と秀美さんの母と3人で7頭の繁殖牝馬を繋養する家族経営の牧場だ。 

 レース当日は夜間放牧をしている馬たちを集牧してから家族で函館競馬場へ向かった。「馬主さんの家族と一緒に1コーナー手前から観戦していました。直線で伸びて来たときは声が出ましたけど、正直負けたと思ったんですよ。惜しかった、あんないい脚を使ったのに悔しい、なんて話をしていたら確定のランプが点いて。1着のところにうちの馬の馬番が出ているのを見て慌ててウイナーズサークルへ降りて行ったんです」と秀美さん。喜びに浸る間もなくとんぼ返りで馬たちの待つ牧場へ戻り、慌ただしくも嬉しい1日となった。 

 森永牧場は昭和30年代前半に創業。当時はアラブの生産が主流だったが、平成元年に2代目となる秀美さんが跡を継ぐ際にサラブレッドの導入を進めた。毎年のように海外のせりに出向き、基礎となる繁殖牝馬を求めていた1998年、レキシントンのセールでマジカルポケットの母、アズワーと出逢った。 

 「驚くようなブラックタイプの繁殖がたくさん上場されていましたが、小規模牧場が出せる金額なんて決まってますからね。身の丈に合った金額で、そこそこの血統の馬を探していたんです。アズワーは思ったより安価で落札できたので、ハンマーが落ちた時は思わずガッツポーズが出ました」。 

 Smart Strikeを受胎し、日本にやって来たアズワーは4番仔にオープン馬コウユーキズナ(5勝)を送り出すなど、秀美さんの願い通り基礎繁殖となっていった。牧場の宝となったアズワーに、ジャングルポケットを交配して誕生したのがマジカルポケットだった。 

 「アズワーはとても賢く、マイペースなので子馬が自立するのが早いんです。生後3~4日でも平気で離れてしまうくらい。マジカルポケットも早い時期から母と離れて走り回ってましたね」と秀美さんは当時を振り返る。順調に成長していたため当歳時の記憶はあまりないそうだが、年が明けると小さなトラブルが発生する。1歳になり体重が増えてくると挫石をおこすようになった。 

 森永牧場は川沿いに位置し、03年の台風10号では放牧地が水没する被害に遭った。今はすっかり元通りになったように見えるが、「流されて来た小石が放牧地に入り込んで、取っても取っても未だに出てくるんです。他の1歳馬には影響なかったんですが、マジカルポケットは元々爪が薄いせいか挫石になってしまう。自分でも注意深くなって、無駄に走ることはなくなりました」と、被害から7年経った現在も被災地に深い傷跡を残している。 

 逆境を乗り越えた牧場に重賞をプレゼントしてくれたマジカルポケット。最後に、秀美さんは「これからどんどん相手も強くなるし、田舎のガキ大将がエリート相手にどこまでやれるか楽しみにしています。最後まで、1頭でも多くの馬を抜かせるように一生懸命走って欲しいです」とエールを送った。