2010年06月13日 エプソムC G3
優勝馬:セイウンワンダー
プロフィール
- 生年月日
- 2006年04月30日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/青毛
- 戦績
- 国内:12戦4勝
- 総収得賞金
- 231,685,000円
- 母 (母父)
- セイウンクノイチ by サンデーサイレンス(USA)
- 馬主
- 大谷 高雄
- 生産者
- 筒井 征文 (三石)
- 調教師
- 領家 政蔵
- 騎手
- 福永 祐一
春の東京開催を締めくくるエプソムカップ(G3)。クラシックには一歩届かなかった2歳王者のセイウンワンダーがシルポート、キャプテンベガとの争いを制して1分46秒1で優勝。復活の狼煙をあげるレースになった。
同馬を生産した新ひだか町三石の筒井征文さん(67)は「私は元々競馬場へはほとんど行かないのですが、当日は孫たちの運動会でした。運動会を終えたあとみんなでテレビ観戦しました。昨年は悔しい思いをたくさんしてきたので、今回もダメかと思いましたが、最後は良く伸びてくれましたね。よい休日になりましたよ」とほっとしたような表情を見せた。ぶっきらぼうな物言いだったが、テーブルのそばにはセイウンワンダーの優勝を報じる新聞が置いてあった。
筒井さんの牧場は、今から約50年前に軽種馬生産をスタートさせた。「最初は1頭のアラブからでした。それまで父親(明春さん)は米を作っていましたが、家族の進めもあって馬を始めました」と歴史を振り返る。「多いときで7~8頭の繁殖牝馬を置いていたこともありましたが、あまり良いことはなかったですね」という。現在、子供たちは別の道を歩み、夫婦二人で4頭の繁殖牝馬をけい養している。
「こんな山奥の牧場には(注・筒井さんの牧場は海岸線の国道から約20分奥に入る)、誰も買いに来てくれないからね」と冗談交じりに言うものの、セイウンワンダーの活躍後は馬主や仲介者、調教師が頻繁に訪れるようになったという。注目の明け1歳馬はファスリエフを父に持つ牝馬で、セレクションセールに上場予定だ。「色んな人が来てくれるけど、自分では値段も分からないし、セイウンワンダーと同じように、市場に出そうと思っています。妹もコンサイナーに預けています。牝馬ですけど馬格もあって、最近は気の強さが出てきたと聞いています」と頼もしそうだ。
「今までも、生産馬の多くは市場で売却してきました。セイウンワンダーもそうです。自分なりに良い馬だったと思っていましたが、まさかこんなに走るとは」とは嬉しそうだ。それまでアラブでは重賞を勝っている(78年のシュンエイ記念=ゴッドガリトー)がサラブレッドで中央競馬の重賞を勝ったのはセイウンワンダーが初めてだった。「3つも勝ってくれて、これ以上の喜びはありません」と満足そうだ。
「歴史だけは、もう三石では古い牧場になりました。後継者もいないし、いつまで出来るかな」と言いながらも繁殖牝馬の入れ替えは熱心だ。「セイウンワンダーの母セイウンクノイチは繁殖セールで購入しました。サンデーサイレンスの仔ですけど、性格はおとなしく、扱い易い馬です。今年は、最初は違う種牡馬を配合していたのですが、受胎しなかったので、もう一度グラスワンダーを配合しましたよ」。受胎の有無は、現在、鑑定待ちの状態だそうだ。
そんな筒井さんが心痛めているのは、軽種馬生産の仲間が一人、二人と減っていくこと。筒井さんの牧場へ向かう道すがら、朝日杯フューチュリティS(Jpn1)優勝時には馬がいたはずの牧場に牛がいた。「寂しいものだね」とぽつり。そういう筒井さんも和牛の生産をスタートしている。「馬なら、一番上に近い年齢だけど、牛なら年長者がたくさんいる」と冗談交じりにいうが、軽種馬生産界が置かれている状況が垣間見える。
「私は物事には執着しない性格だけど、セイウンワンダーに携わっている人たちのためにも頑張って欲しいね。私は今年生まれた馬や、まだ残っている馬をどうやって売ろうか、そして来年のお産が無事に済むか。そんなことで頭が一杯ですよ」と1年半前と同じ答えが返ってきた。