重賞ウィナーレポート

2009年10月18日 秋華賞 G1

2009年10月18日 京都競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:レッドディザイア

プロフィール

生年月日
2006年04月19日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:6戦3勝
総収得賞金
328,116,000円
マンハッタンカフェ
母 (母父)
グレイトサンライズ(GB)  by  Caerleon(USA)
馬主
(株) 東京ホースレーシング
生産者
社台ファーム (千歳)
調教師
松永 幹夫
騎手
四位 洋文
 リーディングブリーダーをひた走る社台ファームであるが、この秋華賞(G1)が今年初めてのG1制覇。この意外な事実に驚きを感じている方も多いことだろう。

 「やはりG1レースでの勝利は嬉しいですし、スタッフの一人として励みにもなります。ただ、これまで通りに一頭でも多く走らせて、一頭でも多くレースを勝たせたいという気持ちには牧場全体で代わりはありません」とは社台ファーム事務局の長浜卓也氏。こうした姿勢が、様々な条件から勝ち馬を生み出す原動力ともなっているのだろう。

 デビュー前から来年のクラシック候補として、様々な2歳馬が競馬雑誌をにぎわす社台ファームではあるが、昨年の春にレッドディザイアの姿が誌面に出たという記憶はない。

 「2歳時の春先に外傷を負ってしまい、しばらくは運動をさせることができませんでした。この時期のレッドディザイアには辛い思いをさせてしまったと今でも負い目を感じています」と長浜氏。しかし3歳のメイクデビューで勝利をあげると、続くエルフィンSも優勝。シンデレラストーリーを歩き出したかに見えたレッドディザイアの前に立ちはだかったのが、2度に渡ってG1の戴冠を阻んだブエナビスタだった。

 オークス(Jpn1)の後で調整のために社台ファームへと戻ってきたレッドディザイアだが、同じくオークス(Jpn1)の後で戻ってきた同期の牝馬には疲れが見えていたものの、レッドディザイアは疲れを見せることなく、戻ってきてすぐに予定していた調教メニューをこなしはじめた。

 「3歳になってからの成長面よりも、こうした回復力や体力にこの馬は凄いかもと思うようになりました。管理をされている松永(幹夫)調教師も足繁く調教を見に来てくださっていた中、フレッシュな状態で厩舎に戻すことができたと思います」と長浜氏。

 その頃、ブエナビスタが秋華賞で牝馬三冠を狙うことが発表され、三度、G1の舞台で対決することとなる。しかし、そのニュースを聞いた厩舎スタッフからは、「この状態ならいい競馬をしてくれるはず」と好走を期待する声が聞こえるようになっていたという。

 レースはオークス(Jpn1)と同じように、レッドディザイアが先行し、その後ろからブエナビスタが進んでいく流れ。勝負所の第4コーナーでレッドディザイアが抜け出すと、一時、ブエナビスタとは3馬身ほどの差が開く。しかし、ゴール板の前で猛追してくるブエナビスタ。スローモーションでも判別し辛い僅差となったが、長浜氏はなんとか凌ぎきったと思えた。

 「前に出てから二枚腰を使ってくれましたし、最後の最後まで交わされないという勝負根性も見せてくれました。きっとそれは厩舎スタッフや四位騎手の気持ち、そしてファンの皆さんの声援が力を与えてくれたのではと思います」

 次はエリザベス女王杯(G1)への出走が目されるレッドディザイア。関係者からは「次もブエナビスタと闘いたい」というコメントも伝えられているが、長浜氏も「また2頭が一緒に走るレースを見たいですね」と競馬ファンの一人としての心理をのぞかせる。

 「レッドディザイアがデビューしてからの活躍や、このG1勝利は迷惑をかけてしまった我々に対して馬から「気にするな」と言ってもらえたような気がします。それだけにこの勝利に勘違いすることなく、気を引き締めて仕事をしていきたいと思っています」

 その長浜氏の言葉に、改めて社台ファームがリーディングブリーダーであることの真意が読み取れたような気がした。