重賞ウィナーレポート

2010年04月11日 桜花賞 G1

2010年04月11日 阪神競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アパパネ

プロフィール

生年月日
2007年04月20日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:6戦4勝
総収得賞金
558,592,000円
キングカメハメハ
母 (母父)
ソルティビッド(USA)  by  Salt Lake(USA)
馬主
金子真人ホールディングス (株)
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
国枝 栄
騎手
蛯名 正義
 クラシックの1番人気馬としては、初めて送り出した育成馬。この晴れ舞台に姿を見せたアパパネを、ノーザンファーム空港牧場の窪田淳厩舎長は、自宅のTVで見つめていた。

 「せっかくのことですし、普段から頑張ってくれている厩舎の若いスタッフを競馬場に応援へ行かせました。ただ、自宅でゆっくり見ようと思っていたらCSの調子が悪くて、電気屋に部品を買いに行ったりしているうちに、結局出走時間が来てしまいました」と窪田さんは、どこかばつが悪そうに話す。

 窪田さんが管理を任されている厩舎では、4年前の桜花賞馬となったキストゥヘヴンも育成されていた。だが、この時は6番人気での優勝であり、勝利の充実感よりも、驚きの方が大きかった。

 「アパパネは1番人気ということだけでなく、ノーザンファームの生産馬ということにも喜びがありました。また、このレースにはアニメイトバイオも出走させることも出来ましたし、様々な意味で楽しみがあったレースと言えました」

 ゴール直前、前を行くオウケンサクラをアパパネが交わしたとき、窪田さんは滅多にない大声を出していたという。それまでおとなしくTVを見ていた窪田さんのお子さんが、びっくりして泣き出したということからも、その声の大きさが分かってもらえるのではないかと思う。

 「ゴールの瞬間は、ファンの皆さんの期待を裏切らなかったという安堵感もありました。このレースで1番人気に支持してもらえるというのは、大変、光栄なことでありますし、そこまで無事に導いてくれた厩舎関係者の方にも感謝したいですね」

 そして、と窪田さんが感謝したいと付け加えた人物。それは馬作りの師と仰ぐ、ノーザンファーム空港牧場の広瀬春行調教主任と、そして厩舎スタッフたちだった。「この勝利で、改めて広瀬さんに恩返しができたのではないかと思います。また、自分の指示を受け入れてくれて、仕事をしてくれたスタッフたちのがんばりには頭が上がりません」

 アパパネに育成を施した3歳世代から、窪田さんの厩舎では、育成調教の方針を変えた。そこに行き着くまでには、広瀬さんに幾度となく意見を仰いだだけでなく、また厩舎スタッフにも苦労を強いることとなった。「自分が考えていたことを調教で実行するためには、スタッフの技術向上も必要でした。難しいことに取り組んでいるなとは思いましたが、個々のスタッフだけでなく、いつしか厩舎一丸となって意識を高めてくれて、目指していたレベルの仕事を行ってくれるようにもなりました」

 この3歳世代を厩舎へと送り出せたとき、窪田さんに心の中には「悔いのない仕事ができた」との思いが生まれていた。だからこそ、アパパネが最優秀2歳牝馬の称号と、そして3歳最強牝馬となった時には、叫ばずにはいられなかったのだろう。

 とはいえ、窪田さんは自分たちの行ってきた仕事を、これで良しとは全く思ってはいない。「2冠を目指すアパパネだけでなく、アニメイトバイオも巻き返しを期待したいですし、ワイルドラズベリー、アマファソンとオークスに出走できそうな育成馬にも期待しています。その中でもアパパネにはこれからもファンの声援に応えるようなレースを見せて欲しいですね」

 今年の2歳世代は更にレベルアップした調教ができていると話す窪田さん。アパパネを初めとする3歳世代、そしてデビューを待つ2歳世代と、これからも窪田さんに喜びの声を聞く機会は増えそうだ。