重賞ウィナーレポート

2006年04月16日 皐月賞 G1

2006年04月16日 中山競馬場 曇 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:メイショウサムソン

プロフィール

生年月日
2003年03月07日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:10戦5勝
総収得賞金
1,065,949,000円
馬主
松本 好雄
生産者
林 孝輝 (浦河)
調教師
瀬戸口 勉
騎手
石橋 守
  • 母と弟を囲んで~林孝輝社長、美鈴夫人とスタッフの後藤さん
    母と弟を囲んで~林孝輝社長、美鈴夫人とスタッフの後藤さん
  • 母マイヴィヴィアンと半弟(父シンボリクリスエス)
    母マイヴィヴィアンと半弟(父シンボリクリスエス)
 その瞬間、応援する場所は違っていても、家族の思いはひとつでした。愛馬のクラシックレース優勝を競馬場のスタンドで迎えた林孝輝さんは「腰が抜けるかと思った」という言葉で喜びを表現し、「(クラシック競走に)勝つということは違う世界のことだと思っていました」という妻の美鈴さんは鳴り止まぬ電話とお祝いに駆け付ける人たちの対応に追われることで、生産馬の快挙を実感していました。そして、牧場の創生者である祖父の林喜久治さんは「よかった、よかった」と顔をクシャクシャにしていたそうです。
 家族みんなの喜び。しかし林社長は「勝てたのは、自分たちの力だけではありません。有形無形で力を貸してくれた仲間に感謝しています」と言います。

 浦河を中心とした生産者グループに参加することで松本オーナーと知り合い、そして瀬戸口調教師と知り合いました。家族労働ですから、容易には牧場を離れられないことを知る仲間からは「競馬に応援に行って来い。種付があるなら、自分たちが代わりに仕事をしておくから」と励まされたそうです。
 「もちろん、レースになればみなライバルです。でも、それ以外のところでは支え、支えられる本当によい仲間たちなんです」と、誇らしげに語ります。
 並ばれようとすると、根性をむき出しにして走るメイショウサムソンは、そういった日高の生産者グループの“思い”が詰まっているからなのかもしれません。
 
 母のマイヴィヴィアンは、美鈴さんの親戚にあたる牧場からオペラハウス(のちのメイショウサムソン)を受胎した状態で林さんの牧場にやってきました。「ちょうどあの年は事故で仔馬3頭、繁殖牝馬1頭を失いました。長く牧場をやってきましたけど、あんなことはない。生き物を扱うゆえに仕方のないことだと頭では理解はしましたが、正直、かなり落ち込みましたね」。そのときに物心ともに林さんを支えたのが競馬場に送り出した生産馬の活躍でした。「おかしな話かもしれませんが、自分たちの馬の活躍に励まされました。生産者賞もありがたかったですし、馬の活躍に勇気付けられ、頑張ろうって思いましたね」と振りかえります。
 「大手とは資本力が違いますからね。でも、自分たちでできることは手を抜かずにやっていきたい。私たちのような牧場はその積み重ねしかないんです」と、そのどん底から這いあがる努力を惜しまなかったことが、今回の快挙へとつながりました。
 
 さぁ、次はダービーの大舞台です。「あの馬に携わったすべての人のためにも、このまま順調に駒を進めてくれることを祈るばかりです」とエールを送っています。