重賞ウィナーレポート

2009年09月05日 札幌2歳S Jpn3

2009年09月05日 札幌競馬場 曇 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サンディエゴシチー

プロフィール

生年月日
2007年04月28日 02歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:3戦3勝
総収得賞金
104,498,000円
マンハッタンカフェ
母 (母父)
ジェニーソング  by  Rahy(USA)
馬主
(株) 友駿ホースクラブ
生産者
アイオイファーム (浦河)
調教師
作田 誠二
騎手
藤岡 佑介
  • 広大な放牧地
    広大な放牧地
  • アイオイファームの山口さんご家族
    アイオイファームの山口さんご家族
  • 札幌2歳Sゴール前
    札幌2歳Sゴール前
  • 花に囲まれたエントランス
    花に囲まれたエントランス
 クラシックへの登竜門「第44回札幌2歳S(Jpn3)」(札幌・芝1800m)を制したのは浦河町のアイオイファーム生産で、3番人気のサンディエゴシチー(牡2歳、父マンハッタンカフェ)だった。札幌競馬場から車で約4時間。浦河町向別にあるアイオイファームを訪ねた。

 手元の資料によればアイオイファームの前身となる浦河山口牧場は昭和1943年創業というから日高でも有数の歴史を誇る牧場だ。創業者は現代表の山口十郎さんの父、音松さん。十郎さんが経営を請け負ったのが1973年頃で、2002年にアイオイファームへと名前を変えた。現在は、約50ヘクタールの土地に11頭の繁殖牝馬と当歳馬、1歳馬を繋養しており、家族、親戚らで馬の世話をしている。

 居間に通され、まず目に飛び込んできたのは、生産馬サンライズジェガーが2着に惜敗した2003年天皇賞(春)(G1)のゴール前写真だった。「2着でしたけど、本当によく頑張ってくれましたから」と山口さんが照れたように笑った。「サンライズジェガーっていう馬は、420キロ台でデビューしたことからも分かるように、見た人すべてが褒めてくれるような馬ではなかったんです。買ってくれた馬主さん、預かってくれた調教師の先生にも感謝したい。そんな中で頑張ってくれたから思い出の1頭なんです」という。

 サンディエゴシチーも牧場時代は決して目立つ馬ではなかったという。「マンハッタンカフェの仔ですから期待はしていましたが、正直言って、まったく記憶がないんです。逆にいえばケガや病気をすることなく順調だったともいえますが、目立つ馬ではなかったです」と山口さん。それでも「長く付き合っていただいている馬主さん(友駿ホースクラブ)に引き取ってもらい、こうして結果を出してくれたことが嬉しい。少しは恩返しができたかな」と喜んでいる。

 山口さんの馬づくりは個性的だ。「より自然に近い形で」という思いから夜間放牧は行っていない。「太陽の光を思う存分に浴びることができるのは牧場にいるときくらいだから」と理由を説明する。そして、必要以上に太らせることも、絞り込むこともせずに「厩舎に行ってから成長できるように、その“のびしろ”の部分だけを大切にしている」という。424キロでデビューしたサンライズジェガーは480キロ台にまで成長し、サンディエゴシチーも新馬戦から2か月後のクローバー賞をプラス24キロで勝利して周囲をあっといわせた。

 愛馬の晴れ舞台、札幌2歳S(Jpn3)は、札幌競馬場で見た。スタンド上階にある馬主席ではなく、たくさんの家族や親戚とともにファンと同じ目線でゴール前に陣取った。3コーナーすぎで下がったときは心中穏やかではなかったというが、直線、早めに先頭にたった愛馬は後続に影をも踏ませずに先頭でゴールへと飛び込んだ。そのレースぶりは、まるでたった1頭だけ古馬が混じっているかのように落ち着いたものだった。

 「これで、来年が楽しみになったね」と笑顔。父親から牧場を引き継いで約35年。サンライズジェガーの天皇賞(春)(G1)2着、ジャガーメイルの香港ヴァーズ(G1)3着はあるが、G1勝ちはまだない。「死ぬまでに1度は勝ってみたい」という山口さんだが、過去、1800mに距離が変更されてから不敗で同レースを制したのはジャングルポケット、サクラプレジデント、アドマイヤムーン、ロジユニヴァースの4頭。しっかりと手応えをつかんだに違いない。